Brexitは終わりの始まりか(週報2016年6月第四週)

まさかの英国EU離脱です。

Brexitは終わりの始まりか(週報2016年6月第四週)

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値   高値   安値   終値

ドル円   104.63  106.17   99.00  102.24
ユーロ円   118.73  120.93  109.30   113.50
ユーロドル  1.1347  1.1421   1.0912   1.1102
日経平均  15839.06 16263.87 14864.01 14952.02

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

6月20日(月)

週明けの早朝市場は英国発リスクオフの巻き返しから、ドル円、ユーロドルともにギャップアップしてのスタートとなりました。しかしドル円は、高値104.85レベルと金曜高値をわずかに上回ったものの105円台では売りが見えたことからその後は膠着。海外市場に移りポンドが5月末以来の高値となる一方、ユーロポンドの売りからユーロは対ドル、対円で下落。ドル円もユーロ円の売りに引っ張られて、一時103.79レベルと東京高値から1円以上の下落となりました。ユーロ円も東京市場では119円台での推移でしたが、117円台前半へと大きく反落しました。

6月21日(火)

英国国民投票への懸念後退の中、ポンドは引き続き強い地合い。その流れから東京市場ではユーロドルも堅調な動きを示す展開が続いていましたが、ドル円は寄り付き直後の株価が弱かったことから一時103.58レベルと安値に迫る動きを見せました。その後は急速に値を戻すことになりますが、NY市場ではイエレン議長の議会証言で7月利上げの可能性も残す一方でドラギECB総裁は追加緩和の可能性を示唆し、ユーロドルが急速に値を崩す展開となりました。ドル円はユーロドルのドルの動きに追随し、引け間際には105円台乗せ、その後やや押してのクローズとなりました。

6月22日(水)

ドル円は前日NY市場で105円台に乗せたものの、ドル売りオーダーとぶつかり滞空時間が短かったこともあって、東京市場では売りが先行し104円台半ばへと押し、その後は104円台半ばを中心とした狭い値幅での取引に終始しました。ユーロドルは引き続き底堅いポンドの動きも手伝ってじり高の展開、NY市場前場には前日高値圏に近い水準まで買われる動きとなったものの引けにかけて失速、英国国民投票を前に積極的には仕掛けにくい流れとなりました。NY市場ではIMF専務理事によるドル過大評価発言も聞かれましたが、ドル円で若干のドル売りが見られた程度で材料とはされませんでした。

6月23日(木)

東京市場では英国国民投票を控えての様子見が続いていましたが、欧州市場に入ると残留の可能性が高いと見る参加者がポンド買いで動き、それにつられユーロも上昇しました。ドル円もリスクオンということでドル買い円売りに動きましたが、イベント前のストップオーダーも引っ掛けて106円台乗せ。その後NY市場ではユーロは上げる前の水準に押した後に買い戻されてのクローズ。ドル円は高値圏での推移を続けました。

6月24日(金)

当日まで誰もが予想しなかった英国のEU離脱が現実のものとなってしまいました。開票直後の世論調査では残留支持優勢というヘッドラインからポンド買いの動きとなり、ポンドは一時1.50の大台乗せ、ポンド円も160円の大台乗せと楽観ムードだったのですが、一部の地区で離脱優勢となったあたりから明らかに様子がおかしくなり、徐々に離脱支持がリードする展開へと転じました。東京前場の内にドル円はリスク回避から99.00レベルへと暴落、東京市場での値動きとしては過去最大の下げ幅となりました。昼過ぎには離脱が決定的となり、ポンドは対ドルで1.3227レベル、対円で133.23レベルへとそれぞれ暴落、その後はあまりに急激な動きから大きく戻す流れとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月27日(月)
**:** スペイン再選挙大勢判明
07:45 NZ5月貿易収支
22:45 米国6月MarkItサービス業PMI速報値
23:30 米国6月ダラス連銀製造業活動指数
26:30 中国人民銀行総裁講演

6月28日(火)
15:45 フランス6月消費者信頼感指数
21:30 米国1〜3月期GDP確報値
22:00 米国4月ケースシラー住宅価格指数
23:00 米国6月消費者信頼感指数
23:00 米国6月リッチモンド連銀製造業指数
**:** EU首脳会議

6月29日(水)
08:00 パウエルFRB理事講演
15:00 ドイツ7月GFK消費者信頼感
18:00 ユーロ圏6月消費者信頼感確報値
21:00 ドイツ6月CPI速報値
21:30 米国5月個人所得・消費支出
22:30 イエレンFRB議長、ドラギECB総裁、英中銀総裁、討論会参加
23:00 米国5月中古住宅販売保留件数指数
23:30 米国週間原油在庫発表

6月30日(木)
08:05 英国6月GFK消費者信頼感
10:00 NZ6月ANZ企業信頼感
16:55 ドイツ6月失業率
17:30 英国1〜3月期GDP確報値
18:00 ユーロ圏6月CPI速報値
18:30 南ア5月PPI
21:00 南ア5月貿易収支
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国6月シカゴ購買部協会景気指数
26:30 セントルイス連銀総裁講演

7月1日(金)
**:** 香港市場休場
08:30 本邦5月CPI、6月東京区部CPI
08:30 本邦5月失業率、有効求人倍率
08:50 本邦6月日銀短観
10:00 中国6月製造業・非製造業PMI
10:45 中国6月MarkIt製造業PMI
16:50 フランス6月製造業PMI確報値
16:55 ドイツ6月製造業PMI確報値
17:00 ユーロ圏6月製造業PMI確報値
17:30 英国6月製造業PMI
18:00 ユーロ圏5月失業率
22:45 米国6月MarkIt製造業PMI確報値
23:00 米国6月ISM製造業景況指数
23:00 米国5月建設支出

7月2日(日)
 **:** 豪州総選挙

今週の週間見通し

予想外の英国EU離脱、ロンドンフィルターの英情報に限界

まさかの英国EU離脱です。一時期の離脱派優位の世論調査は正しかったと言えますが、投票終了後の世論調査にしても、一貫して残留優位としていたブックメーカーにしても、全くあてにならない結果となりました。

しかし、今回のことでひとつ大きな教訓があります。FXを取引する個人投資家にしても金融機関のエコノミストにしても、離脱のリスクを分析していましたが、ほぼ残留で見ていたことは間違いありません。それは何故なのか?それは、我々の耳に届く分析結果にはロンドン・フィルターがかかっていたからです。

金融機関のシティも、マスコミの支局も多くの拠点はロンドンにあり、普段接している人達ロンドン市民の意見のバイアスがかかっていることが考えられます。投票後でさえロンドンだけEUに残留したいといった声が出ているくらいで、ロンドンに関しては残留が多数派でしたが、ロンドン以外のイングランドは離脱支持が目立ちました。英国の国民投票結果を色分けした地図を見ても、イングランドとウェールズは離脱一色に染まっていました。

やはりロンドンからの声だけでなく、地方の声をもっと聞いている分析を読んでいれば、ここまでの楽観には結びつかなかったかもしれません。ジム・ロジャースではありませんが、旅行でも兼ねて英国を一周するくらいのつもりで情報を集めないと同じような過ちを繰り返す恐れがあります。今後こうした大イベントがある時には、情報ソースの選択が重要であることを改めて感じた金曜日でした。

さて、本題です。

英国のEU離脱ですが、国民投票では決まったものの実際の離脱に至るまでは長い時間がかかります。早くて2年、遅いと2020年と言われていますが、不透明な状況を少しでも短くしたいEUとしては早期の離脱交渉とEU結束のため英国には厳しい態度で臨むものと考えらえます。

昨日のスペイン総選挙こそ、思ったほど急伸左派の伸びは見られませんでしたが、来年には、ドイツ、フランス、オランダで総選挙が控えていて、特にオランダとフランスでは離脱の勢いが強まっています。英国経済の弱体化はもちろんのこと、EU経済への影響と長引く不透明さを考えると、今回の英国の動きはタイトルに書いた通りで「終わりの始まり」となるリスクがあり、世界同時不況の扉を開いてしまった可能性があります。

ネットでは伊勢志摩サミットにおける安倍首相のリーマンショック級発言が予言者かと言われる始末ですが、当たって欲しくないものでした。これで米国の利上げはほぼ無し、ということになってしまったと考えらえますし、主要中銀による流動性供給や状況によっては為替介入といった動きが出たとしても、当面はポンド安、ユーロ安は当然として、他にも景気後退懸念から世界同時株安、為替市場ではリスクオフによる円高と日本経済にとっても良いことは何一つ無いということになります。

夏に向けまだまだ大きな動きが来ると考えられる中、長期的には長期ポジションテイカーの売りとぶつかり、どこかの段階で再び新安値を取りに行くという展開が予想されますが、今週のドル円見通しだけに関しては、いったん金曜の99.00レベルで安値を付けたと考えて良いと思われます。

今週は100.00レベルをサポート、103.50レベルをレジスタンス

2月に内閣府が発表した全輸出産業採算レート103.20をあっさりと下抜けたことから、当面は103円台では売りオーダーが出やすく、仮に103円台よりも円安に動いても105円は遠いという流れにあります。いっぽうであまりに速い動きの中ではあったものの100円の大台を割り込んだことから100円近くでは買いも出て来るでしょう。そうしたことをトータルして考えると、今週は100.00レベルをサポートに、103.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておこうと思います。

            ドル円(日足)チャート

            ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

ディスクレーマー

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る