来週の為替相場見通し:『株安を受けたリスク回避ムードと米追加緩和観測がドル円の重石』(9/5朝)

週末にかけては、米主要株価指数の急落(リスク回避の円買い)を受けて値を崩し、結局106.26前後での越週となっております。

来週の為替相場見通し:『株安を受けたリスク回避ムードと米追加緩和観測がドル円の重石』(9/5朝)

株安を受けたリスク回避ムードと米追加緩和観測がドル円の重石

〇ドル円安部首相辞任の円高から持ち直し106.57をつけるも週末にかけての株安で106.26で越週
〇ユーロドルは2年4か月ぶり高値1.2012をつけた後1.1781まで急落、1.1839に小戻しして越週
〇ドル円106円台半ばをトップに伸び悩み、また、一目均衡表の「雲」下限が垂れ下がり上値重い
〇株安背景のリスク回避ムードも重し
〇ユーロドルもリスク回避のドル買い、当局けん制でユーロ下落予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):104.50ー107.00、(EURUSD):1.1625−1.1875

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初105.36で寄り付いた後、@先週末金曜日の安倍首相の辞意表明(本邦の政局不透明感→アベノミクス終了の思惑→株安・円高)を受けた失望売りを背景に、週明け早々に安値105.29まで下落しました。しかし、先週末金曜日に記録した安値105.19をバックに下げ渋ると、@株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り)や、A自民総裁選において菅義偉官房長官の優勢が報じられたこと(市場では菅氏が次期首相になれば、アベノミクス継続との見方が根強い→金融緩和継続観測→円売り)、B米8月ISM製造業景況指数(結果56.0、予想54.8、前回54.2、約2年ぶり高水準)の良好な結果、C対欧州通貨でのドル買い圧力(ドルショートの巻き戻し→ドル全面高)、

Dテクニカル的な地合いの強さ(一目均衡表雲下限を一時的に突破)、E良好な米新規失業保険申請件数(結果88.1万件、予想95.0万件)が支援材料となり、9/3にかけて、高値106.57(約1週間ぶり高値)まで上昇しました。もっとも、週末にかけては、米主要株価指数の急落(リスク回避の円買い)を受けて値を崩し、結局106.26前後での越週となっております(米雇用統計が強かったことで106円割れは免れた格好)。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1899で寄り付いた後、@前週のジャクソンホール(パウエルFRB議長講演→追加緩和期待)後のドル売りの流れや、A欧米株の堅調推移(リスク選好のドル売り)、BシュナーベルECB理事による「経済が予想通りに展開した場合は政策を修正する必要性なし」との発言(追加緩和観測後退→ユーロ買い)、C月末ロンドンフィキシングに絡むドル売り及びユーロクロス買い、D短期筋のロスカット(節目1.20をバックにショートを積み増していた向きによるストップバイ)が支援材料となり、翌9/1に、約2年4ヵ月ぶり高値となる1.2012まで急伸しました。

しかし、1.20突破に伴う達成感から利食い売りが優勢となると、E良好な米経済指標(米8月ISM製造業景況指数など)を受けたドル買い圧力や、F俄かロングのロスカット(1.20台で定着できなかったことを嫌気した見切り売り→過去最高水準に膨らむユーロロングの解消)、Gドイツ7月小売売上高(結果▲0.9%、予想0.5%)およびユーロ圏7月小売売上高(結果0.4%、予想1.9%)の冴えない結果、H英国の合意なき離脱リスクの再燃(欧州連合離脱を巡る英国・欧州間の交渉難航)リスク、IレーンECB専務理事によるユーロ高牽制発言が重石となり、週末にかけて、安値1.1781まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、結局1.1839近辺での越週となっております。

来週の見通し(9/7−9/11)

<ドル円相場>
ドル円は、8/28に記録した安値105.19をボトムに反発に転じると、9/3にかけて一時106.57まで上昇しました(この間、一目均衡表基準線や転換線、ボリンジャーミッドバンドの上抜けに成功)。しかし、2日間連続(9/3高値106.57、9/4高値106.50)で106円半ばをトップに伸び悩んだこと(上髭を残したこと)や、一目均衡表雲下限が垂れ下がってきていること等を踏まえると、来週はテクニカル的にみて、やや上値の重い展開が見込まれます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策余力の違い(日本側は安倍晋三首相辞意表明を経てアベノミクス終了の思惑が広がる一方、米国側はジャクソンホールを経て大規模量的緩和の長期化期待。9/15ー9/16に予定されているFOMCに向けた追加緩和期待もドル売り要因)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念、C世界的な貿易戦争拡大リスク、D日米の政局不透明感(9/14の自民党総裁選及び、11/3の米大統領選への警戒感)、E朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、F新型コロナウイルスの感染再拡大懸念、G日本経済の先行き不透明感(本邦の景気先行き不透明感→デフレ懸念→円の実質金利上昇→円高)、H株安を背景としたリスク回避ムードの再燃リスク(実体経済と株式相場の乖離)など、ドル円相場の下落を想起させる不安材料が山積みの状態です。

以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。欧米株(米主要株価指数の調整が来週以降も続くか否か)及び商品市況の動向や、新型コロナウイルス及び米中対立激化に関するヘッドライン、米主要経済指標の結果(米8月生産者物価指数、米8月消費者物価指数など)、日米政治の続報を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(米株安を背景としたリスク回避ムードと、9/15ー9/16に予定されているFOMCに向けた追加緩和観測がドル円の重石)。

来週の予想レンジ(USDJPY):104.50ー107.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、9/1に記録した約2年4ヵ月ぶり高値1.2012をトップに反落に転じると、週末にかけて1.1781まで下落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドを下抜けするなど、テクニカル的に見て、上値の重さを印象付けるチャート形状となりつつあります(心理的節目1.20突破後の滞空時間が極めて短かったことで短期筋による利食い売りと見切り売りを誘発)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、A米中対立激化懸念(米中による報復措置の応酬→世界経済の不安定化リスク)、B世界的な貿易戦争再開リスク(米大統領選挙への不確実性が増しつつあり、トランプ米政権による強硬外交がユーロ圏に波及する恐れ)、C朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、D新型コロナ第2波リスク(ユーロ圏における新型コロナ感染者数の拡大懸念)、EECBによる追加緩和観測、FIMM通貨先物市場における投機筋の高水準のユーロロング(上値余地は限定的)、G英国とEUにおける自由貿易協定(FTA)の交渉難航リスク、HECB当局者によるユーロ高牽制姿勢など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状況です。

以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、下落リスクが警戒されます。欧米株及び欧米の長期金利の動向(欧米株が急落した場合、リスク回避再燃を通じて円高・ドル高がもたらされる可能性あり)や、米中対立激化を巡るヘッドライン、ユーロ圏の要人発言(ラガルド総裁の記者会見の他、ドイツ連銀バイトマン総裁講演、フランス中銀ビルロワドガロー総裁講演、レーンECB専務理事講演)、9/10に予定されているECB理事会(金融政策の現状維持が見込まれるものの、ラガルド総裁の記者会見でユーロ高牽制発言が見られる可能性あり)を睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(リスク回避のドル買い・円買いを背景にユーロドルは上値の重い展開が継続。ECB当局者によるユーロ高牽制姿勢もユーロの重石)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1625−1.1875


注:ポイント要約は編集部

株安を受けたリスク回避ムードと米追加緩和観測がドル円の重石

ドル円日足

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