8月28日夜安値からの持ち直し続く、8月13日からのボックス型持ち合いの範囲
〇ドル円雇用統計改善に106.49まで上昇するも週高値更新には至らず106円台序盤で越週
〇雇用統計、失業率8.4%に大幅改善、NFPコロナでの減少の半分まで回復
〇米株式市場は雇用統計改善後も反発は一時的、続落して越週、一方で米債券も売られ長期金利は上昇傾向
〇ドル円105円割れを回避しつつ107円前後が上値抵抗となるボックス型持ち合いを形成している印象
〇米10年債利回りがボックス離脱の重要な鍵、0.79%より上で円安、0.5%割れでは円高加速の可能性
〇105.97を上回るうちは上昇余地あり、106.54を超えるところからは106.97及び107を試す流れ
〇105.97割れから続落に入る場合9/3夜と9/4夜の高値をダブルトップとした下落期入り、105円試しか
【概況】
ドル円は8月28日夜に安倍首相辞任報道による手仕舞い売りから105.17円まで急落したが、8月19日午前安値105.08円割れを回避してその後は持ち直しの上昇に入った。8月31日夜に106.08円まで戻したのは前日の急落に対する反動だったが、9月1日夜からはドル安を先導してきたユーロドルが下落に転じる中でドル高感がぶり返したことに後押しされて持ち直しの上昇を継続し、9月3日夜には106.54円まで戻り高値を切り上げてきた。
9月4日は早朝に105.97円までいったん反落したものの106円割れを押し目買いされ確りし、9月4日夜の米雇用統計で失業率が予想を超える改善となったことによるドル買いで106.49円まで上昇して3日夜高値に迫ったが、高値更新には至らずに深夜以降はドル高一服により5日未明には106.14円まで下落し、106円台序盤で週を終えた。
【米失業率は大幅に改善するも、コロナショック失業の半数改善に留まる】
米労働省が9月4日夜に発表した8月の米雇用統計では、失業率が8.4%となり7月の10.2%から大幅に改善した。非農業部門就業者数は137万1000人増となり市場予想の140万人に若干は届かなかったものの7月の173.4万人に続き改善傾向を示した。
新型コロナウイルス感染急拡大により3月と4月には雇用者数が合わせて2200万人の記録的減少となったが、5月から8月までの4か月間で合わせて1060万人増となりコロナショックによる失業の凡そ半数を回復したことになる。失業率も4月に14.7%という戦後最悪記録をつけたが、8月は5か月振りに10%を下回った。
雇用統計発表から景気回復への期待が強まって為替市場ではドル買いが進んだが、週明けの9月7日は米国市場がレーバーデーで休場となるためにポジション調整が入り、9月1日夜から続いたドル買いが一巡して深夜以降はユーロやポンド等が反発、ドル円も3日夜高値超えには至らないでやや失速した。
米国株式市場ではNYダウが前日比159.42ドル安と下落、ナスダック総合指数は144.96ポイント安と続落した。NYダウは9月4日に前日比454.84ドル高と上昇して2月12日のコロナショック前に付けた史上最高値に迫る水準となったが、9月3日は高値警戒感から急落商状に陥って一時は千ドルを超える下げ幅となりながら前日比807.77ドル安と大幅下落した。9月4日も雇用統計発表後に一時的に買われたものの早々に失速して一時は600ドルを超える下落幅となった。終盤は買い戻されて下げ幅を削ったものの史上最高値に迫ったことでの高所恐怖症が出てきている印象だ。NYダウに大きく先行して史上最高値を更新してきたナスダックも9月3日に598.34ポイント安(約5%安)の急落から続落に終わっているため、アフターコロナ復興期待による株高にもかなりの高値警戒感が出てきている印象だ。
米国株式市場が反落する中で、本来なら買われてもよい米長期国債は米雇用統計改善から売られて米10年債利回りは前日比0.08%上昇の0.72%、30年債利回りは0.11%上昇の1.47%となった。
8月中旬の大量国債入札が続いたところでは米長期債利回りが需給緩和感により10年債利回りはピーク時に0.79%まで上昇したが、その後は低下傾向に入って9月3日には一時0.60%まで低下していた。9月4日の10年債利回り上昇は直前3日分の低下を解消する反騰だったが、これが一時的なものに留まるのか、8月28日の0.79%を超える上昇へ進むきっかけとなるのか、為替市場への影響も大きいために週明けの展開が注目される。
【8月13日からのボックス型持ち合い】
ドル円は7月31日に104.17円の安値を付けてから反騰した。その反騰ぶりは昨年8月26日底からの上昇に近い印象で当初は推移した。今年7月31日安値から8月13日高値への上昇幅は2.88円で、昨年8月26日底からの上昇期における最初のピークとなった昨年9月18日高値まで上昇幅4.02円と比較すれば小さい。しかし今年8月13日高値から8月19日安値までの下げ幅は1.97円であり、昨年9月18日高値から10月3日安値への下落幅1.97円と同値である。現状はボックス型持ち合いだが、8月19日安値割れを回避するうちは昨年10月3日安値を押し目として上昇基調を継続した時に近いような上昇再開へ向かう可能性もあるところだ。
ドル円は7月31日安値104.17円から8月13日高値107.05円まで上昇した後は、8月28日高値で106.94円まで上昇したものの8月13日高値超えには至らず、8月28日夜安値105.17円では8月19日安値105.08円を割り込まずに持ち直しており、105円割れを回避しつつ107円前後が上値抵抗となるボックス型持ち合いを形成している印象だ。このボックス型持ち合いの中心値は106円にあり、8月28日夜からの上昇で中心値を若干超えるところまで戻しているところだ。
今後の展開は、このボックス型持ち合いを上下いずれかへ抜けるのかということで決まってくるのだろうと思われ、抜けるまではボックス型持ち合いのレンジ上下限では逆張的な展開になるのだろうと思われる。このため106円台を維持するかわずかに割り込んでも早々に回復するうちは107円前後のボックス上限を試すとみるが、106円割れを切り返せなくなって105.50円も割り込む場合はボックス下限へ向かい、さらにボックスから転落するような展開へ向かう可能性が考えられる。
上下、いずれかへ抜けてゆくのか、重要なファクターとしては米10年債利回り動向であり、米10年債利回りが8月28日高値0.79%を超える場合は円安ドル高へ、8月28日安値0.60%を割り込むところからは円高ドル安のバイアスがかかり、8月6日安値0.50%を割り込むところからは円高ドル安がかなり加速する展開に入るのではないかと思われる。
【当面のポイント】
8月28日夜安値105.17円からは、9月1日安値105.56円、9月4日未明安値105.97円と安値を切り上げてきた。戻り高値も8月31日夜高値106.08円、9月3日夜高値106.54円と切り上げてきたが、9月4日夜高値は106.49円にとどまった。安値切り上げパターンを維持して戻り高値切り上げへ進めるか、高値切り上げが続かずに9月4日未明安値を割り込んで安値切り上げパターンが崩れるのか、当面はいずれへ進むのかにより方向性が決まってくるのだろうと思われる。
(1)当初、9月3日夜高値106.54円を上値抵抗線、9月4日未明安値105.97円を下値支持線とする。
(2)105.97円を上回るうちは上昇余地ありとし、9月3日夜高値106.54円を超えるところからは8月28日昼高値106.97円及び107円を試す流れへ向かうとみる。8月13日以降のボックス型持ち合いを踏まえ、ボックス型持ち合いを上放れるような強力な強気材料が見られないうちは107円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、材料を伴ってボックス型持ち合いを上放れる場合は107.50円前後へ上値目途が切り上がると考える。
(3)9月4日未明安値105.97円割れから続落に入る場合は9月3日夜と4日夜の両高値をダブルトップとした下落期入りとみて、8月28日安値105.17円及び8月19日午前安値105.08円による105円台序盤のボックス型持ち合い支持線を試す流れへ進むと考える。その場合は105円台中盤からいったん戻しても106円手前が抵抗となりその後の下落で105円台序盤へ向かうイメージで考える。強烈なドル安材料ないし円高材料が見られないうちはボックス型持ち合いの下限を試した後はもう一度戻りを試しに入るのだろうと考える。(了)<6日17:10執筆>
注:ポイント要約は編集部
【当面の主な予定】
9/7(月)
休場 米国、カナダ(レーバーデー)、ブラジル(独立記念日)
未 定 (中) 8月 貿易収支・米ドル (7月 623.3億ドル、予想 497.0億ドル)
未 定 (中) 8月 貿易収支・人民元 (7月 4422.3億元、予想 3860.0億元)
08:50 (日) 8月 外貨準備高 (7月 1兆4025億ドル)
14:00 (日) 7月 景気先行指数(CI)・速報値 (6月 84.4、予想 84.9)
14:00 (日) 7月 景気一致指数(CI)・速報値 (6月 76.6、予想 77.2)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 8.9%、予想 4.5%)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -11.7%、予想 -7.3%)
9/8(火)
08:30 (日) 7月 全世帯消費支出 前年同月比 (6月 -1.2%、予想 -3.7%)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調前 (6月 1675億円、予想 1兆8860億円)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調済 (6月 1兆492億円、予想 1兆4447億円)
08:50 (日) 7月 貿易収支・国際収支ベース (6月 -773億円、予想 1722億円)
08:50 (日) 4-6月期GDP改定値 前期比 (速報 -7.8%、予想 -8.1%)
08:50 (日) 4-6月期GDP改定値 年率換算 (速報 -27.8%、予想 -28.5%)
10:30 (豪) 8月 NAB企業景況感指数 (7月 0)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー現状判断DI (7月 41.1、予想 40.9)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー先行判断DI (7月 36.0、予想 39.0)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 156億ユーロ、予想 160億ユーロ)
15:00 (独) 7月 経常収支 (6月 224億ユーロ、予想 173億ユーロ)
18:00 (欧) 4-6月期GDP確定値 前期比 (速報 -12.1%、予想 -12.1%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP確定値 前年同期比 (速報 -15.0%、予想 -15.0%)
18:30 (南) 4-6月期GDP 前期比年率 (1−3月期 -2.0%、予想 -47.2%)
18:30 (南) 4-6月期GDP 前年同期比 (1−3月期 -0.1%、予想 -16.5%)
28:00 (米) 7月 消費者信用残高 前月比 (6月 89.5億ドル、予想 128.0億ドル)
9/9(水)
07:45 (NZ) 4-6月期製造業売上高 前期比 (1−3月期 0.0%)
08:50 (日) 8月 マネーストックM2 前年同月比 (7月 7.9%、予想 8.1%)
09:30 (豪) 9月 ウエストパック消費者信頼感指数 (7月 79.5)
10:00 (NZ) 9月 NBNZ企業信頼感 (8月 -42.4)
10:30 (中) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 -2.4%、予想 -1.9%)
10:30 (中) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 2.7%、予想 2.4%)
9/10(木)
08:50 (日) 7月 機械受注 前月比 (6月 -7.6%、予想 2.0%)
08:50 (日) 7月 機械受注 前年同月比 (6月 -22.5%、予想 -18.2%)
20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、定例記者会見
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 -0.4%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前月比 (7月 0.5%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前年同月比 (7月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 88.1万件、予想 83.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1325.4万人)
23:00 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 -1.4%、予想 -0.1%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 8.8%)
9/11(金)
08:50 (日) 8月 企業物価指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.2%)
08:50 (日) 8月 企業物価指数 前年同月比 (7月 -0.9%、予想 -0.5%)
08:50 (日) 7-9月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (4−6月期 -47.6)
08:50 (日) 7-9月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (4−6月期 -52.3)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.1%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 8.7%、予想 6.8%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前月比 (6月 9.3%、予想 4.2%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前年同月比 (6月 -12.5%、予想 -8.7%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・物品 (6月 -51.16億ポンド、予想 -67.00億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支・合計 (6月 53.36億ポンド、予想 30.50億ポンド)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.0%、予想 1.2%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 1.6%、予想 1.6%)
27:00 (米) 8月 月次財政収支 (7月 -630億ドル)
オーダー/ポジション状況
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