ドル円 安値も戻りも見て上値が重たい調整局面継続(週報8月第2週)

短期的にはいったんドルの安値を見たといえそうです。

ドル円 安値も戻りも見て上値が重たい調整局面継続(週報8月第2週)

ドル円 安値も戻りも見て上値が重たい調整局面継続

〇ドル円105円台半ばは買い、106円台は売りで踊り場形成
〇米感染拡大、まとまらぬ議会の補助金、財政赤字、米中関係悪化いずれもドル売り材料
〇105.00レベルをサポートに、106.40レベルをレジスタンスとする流れを予想

今週の週間見通し

先週のドル円は前週末に104円台前半から106円乗せという動きの中で、ユーロとともにドル安の流れを見ていた向きの多くがポジションを切らされてのスタートを切りましたが、106円台では実需も含めたドル売りも出てくるいっぽうで、いったん安値を見たと考える参加者は105円台前半では買いたい様子でドル安の流れの中でいったん踊り場を形成した週となりました。

これまではドル建て金やビットコインドルといった為替以外でのドル売りが目立っていたところに米国と欧州との状況を比較して為替市場ではユーロ買いがリードする形でドル円でもドル安という流れになっていましたが、背景としては米国内の新型コロナ感染者数が増加する中で、失業給付金が失効しても議会で話がまとまらないことを嫌気してのドル売りという面が強かったかと思います。

というのも3月の非常事態宣言によって大統領には今回のような給付金を拠出する権限が与えられたと考えられますし、来週には民主党、共和党ともに全国大会を控えていることを考えると双方とも自分たちが主張する方向に寄せたということもできると考えるのではないかということがあります。また新型コロナ対策で当初は早期に終息することを期待してかなりの金額の財政投入をしていることから連邦政府の財政赤字は巨額なものとなっています。先月13日に発表された6月の財政赤字は8641億ドルと過去最高で、ほぼ昨年の年間赤字に匹敵している等、むやみにバラマキを続けることも難しくなってきています。

こうした一連の動きが、今後の個人消費低迷を招き米国経済回復を遅らせる面と、財政赤字拡大の面とどちらにしてもドル売りにつながりやすい状況をまねいています。

また香港国家安全法以降は米中間の対立激化が収まる様子はありませんが、ティックトックとウィーチャットの米国内での利用禁止を前提とした大統領令に署名したことは中国の反発を招く要因となりますし、本日は米国厚生長官と台湾総統との会談があり、このことも中国は間違いなく非難してくるはずです。

最近の米国の動きはあえて中国を挑発させる動きをしていて、それに対して中国が間違った動きをしてくることを期待しているような感じですが、大統領選で劣勢となっているトランプ大統領は何か大技を繰り出そうとしているように思えます。ただ、米中対立はドル売り材料となるでしょうから、次に中国がどのような動きをしてくるのかは重要です。

テクニカルにも見てみましょう。

先週書いた通りですが、6月高値109.85を起点に6月安値106.08までの下げと、その後の7月高値108.17への戻しを3点とした逆N波動(ピンク)の下げからフィボナッチ・エクスパンションの100%エクスパンション(均衡表の値幅観測でN値と同じ)となる104.39(ピンクのターゲット)を達成したことで短期的にはいったんドルの安値を見たといえそうです。

そうなると、戻りのターゲットを考えておく必要がありますが、これも先週示した逆N波動の戻し高値となった7月高値(108.17)と7月安値(104.19)のフィボナッチ・リトレースメント61.8%戻し、106.65(青のターゲット)であることに変わりません。今後ドル売りが再開するようであれば、既に先週高値106.47が戻り高値となったということにもなるでしょう。個人的には戻り高値も見たという考え方に傾いています。

そると次の下げのターゲットは7月安値と先週高値の押しを考えることとなります。すると61.8%押しが105.06(赤のターゲット)となっていて、105円は当面のサポートと考えてよさそうです。今週はドル売り材料への反応が強まるリスクを考えながら、105.00レベルをサポートに、106.40レベルをレジスタンスとする流れを見ておきたいと思います。

ドル円(日足)チャート

ドル円 安値も戻りも見て上値が重たい調整局面継続

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

8月10日(月)
**:** 東京、シンガポール、南ア市場休場
10:00 NZ8月企業信頼感
10:30 中国7月CPI・PPI
11:00 米厚生長官台湾総統会談
16:00 トルコ5月失業率

8月11日(火)
08:01 英国7月小売売上高
08:50 本邦6月貿易収支(国際収支)
10:30 豪州7月企業景況感
15:00 英国7月失業率
18:00 ドイツ8月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏8月ZEW景況感
18:30 南ア4〜6月期失業率
20:00 南ア6月製造業生産
21:30 米国7月PPI
25:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)

8月12日(水)
09:30 豪州8月消費者信頼感
10:30 豪州4〜6月期賃金コスト
11:00 NZ中銀政策金利発表
15:00 英国4〜6月期GDP速報値
15:00 英国6月貿易収支、鉱工業生産
18:00 ユーロ圏6月鉱工業生産
18:30 南ア7月企業信頼感
20:00 南ア6月小売売上高
21:30 米国7月CPI
23:00 (ボストン連銀総裁講演)
23:30 週間原油在庫統計
24:00 ダラス連銀総裁講演
28:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)

8月13日(木)
08:01 英国7月住宅価格
10:30 豪州7月失業率
15:00 ドイツ7月CPI
18:30 南ア6月鉱工業生産
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国7月輸入物価
27:00 メキシコ中銀政策金利発表

8月14日(金)
08:30 豪中銀総裁議会証言
11:00 中国7月鉱工業生産、小売売上高
15:45 フランス7月CPI
16:00 トルコ6月鉱工業生産、経常収支
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP改定値
18:00 ユーロ圏6月貿易収支

21:30 米国7月小売売上高
21:30 米国4〜6月期単位労働コスト速報値
22:15 米国7月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国8月ミシガン大消費者信頼感速報値
23:00 米国6月企業在庫

前週の主要レート(週間レンジ)

ドル円 安値も戻りも見て上値が重たい調整局面継続 2枚目の画像

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月3日(月)
週明けのドル円は前週末に週間安値からほぼ週初の高値圏に戻すという大きな動きを引きずってのスタートとなり、東京前場には106.43レベルまで続伸することとなりました。しかし106円台での戻り売りも根強く、欧州市場では105.58レベルまで下押しする場面も見られましたが、ユーロドルの売りが続いたことからドル円も上昇、NY市場では106.47レベルまで水準を切り上げた後、引けにかけては106円を割り込む動きとなりました。

8月4日(火)
ドル円は前週金曜NY市場での大幅上昇と週明け月曜の続伸の動きからドルを売っていた短期筋はほぼ切らされた状況となり、インターバンク勢も方向感がはっきりしない中で動きが鈍い状態が続きました。しかし106円台前半では前日に続いて実需のドル売りも出てきて。NY市場以降はユーロドル買い戻しの動きも手伝って105.64レベルへと押し安値圏での引けとなりました。

8月5日(水)
ドル円は東京市では107.50レベルに買いが見られ底堅い動きを続けていました。しかしユーロドルでユーロ買い・ドル売りが続く中、欧州市場に入りユーロの動きに引っ張られる形でドル円も下落、弱いADP全国雇用者数の数字も重なって一時105.32レベルまで水準を下げました。しかし105円台前半での買いもしつこく、引けにかけては再び下げ始める前の水準へと戻しました。

8月6日(木)
ドル円は翌日の米国雇用統計を前にして動意なし、105.50を中心に上下20銭のもみあいとなり全く方向感が出ないままの一日で終わりました。

8月7日(金)
ドル円はNY市場までは底堅いものの前日に続いて静かな動きを続けました。NY市場に入り発表された米国雇用統計は失業率、NFPとも予想よりも強く、その結果を受け106.06レベルまで買い戻しは入ったものの、106円台では相変わらず上値が重く、引けにかけてはやや押しての週末クローズとなりました。

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