下値リスクくすぶるも、目先ドルは底堅そう(3/2夕)

週明け2日の東京市場で、ドルは堅調裡。未明となる時間外取引では円高が進行、107円割れワンタッチをしたものの、東京時間はおおむねドルが堅調推移となった。

週末は、新型コロナウイルスについて、韓国やイタリア、イランにおける感染者激増が報じられ話題に。そうしたなか、米国は「韓国とイタリアの一部地域を渡航中止引き上げ」と対外的には強固な姿勢をうかがわせた反面、金融市場に対しては米ＮＥＣ委員長が「市場の反応は行き過ぎ。過剰反応すべきでない」と冷静さを求めるコメントを発していた。
週明け月曜日のドル/円は、未明の時間外取引で薄商いのなか一時107円割れをワンタッチ。先週末のＮＹクローズ108円前後から1円以上もドル安・円高で実質的にオープンした。これは、週末に発表された中国経済指標、製造業ＰＭＩなどが予想以上の悪化となったことが嫌気されていたという。
しかし、そののちはむしろドル買い・円売りが優勢。東京時間7時ごろに推移していた107.40円レベルを起点としても、最大で1円程度のドル上昇が観測されていたようだ。なお、途中で「北朝鮮が2発の飛翔体を発射」と伝えられたが、影響は限定的。ドルは日中高値108.35-40円を示現後、16時時点では小緩んだ108.20-25円で推移、欧米時間を迎えている。

一方、材料的に注視されていたものは、依然として「新型コロナウイルス」について。
落ち着いてきた中国本土と対照的に、それ以外の地域の感染拡大はいまだ止まらず。とくに、前述した韓国とイタリア、イラン3ヵ国の罹患者の増え方が危機的状況として取り沙汰されていた。そのため、韓国外交部の発表によると、入国全面禁止を含め現在までに80ヵ国が「韓国に入国制限を掛けている」のだという。
そうしたなか新型ウイルスを受けた経済ダメージや、対応策などについての発言や報道も少なくない。先週末にはパウエルＦＲＢ議長が「3月利下げ」を示唆する発言を行ったことに続き、トランプ米大統領が「市場の動揺抑制がＦＲＢの仕事」などと指摘し利下げ圧力を改めて掛けたことが確認されている。また、日本も黒田日銀総裁が「潤沢な資金供給に動く」などと異例ともいえる談話を発表した。

先週末のＦＲＢ議長発言に続く、日銀総裁談話もあり、日経平均株価は6日ぶりに反発。また時間外で取引されているＮＹダウ先物も堅調で、それらが先で記したような東京時間のドル買い戻しの原動力になっていたことは間違いない。下値基盤は依然として脆弱ながら、ＮＹダウ（現物）でいえば、2月12日の史上最高値から早くも15％を超える下げをたどっている。いわゆる第一波は終了あるいは終了間近であるのかもしれず、短期的にはさらなる戻り歩調も。仮に、そうだとすれば、ドル/円もいま一段の上値をうかがう展開となりそうだ。

材料的に見た場合、「米貿易問題」や「北朝鮮情勢」、「英国情勢」、「イラン情勢」、「新型コロナウイルス」、「米大統領選」など、注目要因は山積みという状況だ。そうしたなか、もっとも注意を要するのはいまだ「新型コロナウイルス」絡みの話題。ただ、日米が金融面での対応策を示しただけでなく、仏経財相から「Ｇ7財務相、今週中に協調に向け協議を行う」とした期待を抱かせる発言も聞かれていた。また、本日は英国で新型肺炎対策閣議が実施される見込みとされ、こちらにも一応要注意。

テクニカルに見た場合、滞空時間は短く、かつイレギュラー的な動きながら、早朝に一時107円割れワンタッチ。ドルの下値不安は依然として残る。
ただ、その後は108台までドルが反発しており、目先の下落リスクはかなり軽減されている。108.40円レベルに位置する移動平均の200日線を超えれば、さらなるドルの戻りもありそうだ。

本日は、2月の製造業ＰＭＩ確報や同ＩＳＭ製造業景況指数などの米経済指標が発表される予定となっている。とくに後者の数字には要注意で、好数字となれば好感され、ドルがさらに上値をトライする原動力となるかもしれない。
また、本日は英国など欧州情勢にも要注意。先で取り上げた「英国で新型肺炎対策閣議実施」に加え、ＥＵが離脱した英国との通商交渉開始となる。ポンドの動きが波乱含みとなる可能性も。

そんな本日欧米時間のドル/円予想レンジは、107.70-109.00円。ドル高・円安方向は、東京高値でもあり200日線も位置する108.40円レベルの攻防をまずは注視。超えれば109円レベル、さらには109円後半などがターゲットに。
対するドル安・円高方向は、押し目買いのビッドが並び始めた108円前後が目先サポート。割り込むようだと、早朝時間外で示現した107円レベルが薄らとだが再び視界内に。