ドル円、新型肺炎を受けたリスク警戒ムードvs世界的な金融緩和期待で乱高下
海外時間の為替概況
2日(月)の海外市場でドル円は乱高下。@新型コロナウィルスの感染拡大を受けたグローバルなリスク警戒ムード(アジア圏のみならず世界的なウィルス蔓延が世界経済を想像以上に冷やすとの警戒感)を背景に、週明けウェリントンタイムでは、窓を開けて急落しました(始値107.32、安値107.25、先週末終値108.08)。しかし、急激に下げ過ぎた反動からショートカバーが強まると、A黒田日銀総裁による談話(潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針)や、B世界的な金融緩和期待の高まり、Cルメール仏財務相による「G7は今週電話会談を行う予定」との発言、D上記を受けた株価の持ち直しが支援材料となり、欧州時間朝方には、一時108.58まで反発しました。
もっとも、EOECD(経済協力開発機構)による世界経済見通しの下方修正や、F欧米株の反落、G米長期金利の急低下、H米・ISM製造業景況指数(結果50.1、予想50.5)の冴えない結果が重石となると、米国時間にかけて再び反落(一時107.40まで急落)。本稿執筆時点(日本時間4時20分現在)では108.00近辺で推移するなど、値動きの荒い1日となりました(最終的には国際通貨基金と世界銀行による共同声明「新型コロナウィルスの影響を受けた国や地域に対して支援する用意」等の報道を受けて、グローバルな景気下支え期待→米主要株価指数急伸→円売りの流れとなりました)。
昨日のユーロドル相場は急上昇。米利下げ観測の高まりを受けた米長期金利の急低下や、ユーロ圏製造業PMI(結果48.0、予想47.8)の良好な結果、米経済指標(ISM製造業景況指数など)の不冴な結果、ユーロキャリートレードの巻き戻し(ショートカバー)が支援材料となり、米国時間には、1/7以来、約2ヶ月ぶり高値となる1.1184まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間4時30分現在)では、1.1165付近で推移しております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、先週木曜日(2/20)に記録した約10ヶ月ぶり高値112.21をトップに反落に転じると、昨日(3/2)は一時107.25まで急落しました。この間、一目均衡表雲転換線や基準線、一目均衡表雲上限や下限、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転及び、強い下落トレンド入りを示唆するバンドウォークが発生するなど、テクニカル的に見て「地合いの弱さ」を印象付けるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違いや(利下げ余地の大きな米国と、追加緩和手段に乏しい日本)、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中貿易摩擦の再燃リスク、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウィルスの感染拡大リスク(米株安→米長期金利低下→ドル売りと、米株安→リスク回避ムード→円買いの2つの波及経路)、E英合意なき離脱の再燃リスク、F米大統領選挙の先行き不透明感など、ドル売り・円買いを想起させる懸念材料は引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。世界的な金融緩和期待を背景に、足元持ち直す動きが見られるものの、新型コロナウィルスの感染拡大を受けた世界経済への悪影響は深刻であり、一巡後の反落が警戒されます。当方では引き続き、「米景気減速懸念→米利下げ観測再燃→米長期金利低下→ドル売り」の経路と、「世界的な株安→リスク回避の円買い」の双方の経路で、ドル円が一段と押し下げられる展開をメインシナリオとして予想いたします。尚、本日は、アジア時間に発表されるRBA(オーストラリア準備銀行)が利下げに踏み切るか否かに注目が集まります。一方、米大統領選のメインイベントである「スーパーチューズデー」の投票締め切りは明日日本時間9時以降となる予定であり、本日の相場には特段影響が出ないと考えられます。
本日の予想レンジ:107.50ー108.50
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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