不安要因くすぶるが、ドルは110円トライも
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円は、ドルが堅調裡。ザラ場ベースでは一時下値を試す展開も見られたが、そののち切り返すと、週末にはドル一段高の展開に。
年明けに発覚した「米国によるイラン軍司令官の殺害」をめぐる両国の関係悪化が改めて話題に。たとえば、「イランの米大使館付近にロケット弾が撃ち込まれた」との報道もあり、報復ではないかとの思惑を呼んでいた。
そうした状況下、取引が始まったドル/円は、前週末のNYクローズからややドル安・円高の107.85円レベルで寄り付く。その後、年末・年始の大型連休明けを受けた本邦勢による需給要因、仲値不足観測などを受け、108.60円台まで一時値を上げたものの、再びドル売り押され1円程度の下落。「中東リスク」を嫌気し、週間安値107.65円を示現するなど「行って来い」となった。
しかし、「中東リスク」が思いのほか短期で終息するとドルは週末にかけて急反発。109.69円まで2円以上も上昇し、週末NYもそのまま109円半ばのドル高値圏で取引を終え、越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「中東リスク(米・イラン情勢)」について。
先でも指摘したように「米国によるイラン軍司令官の殺害」をめぐり、様々な発言や報道が飛び交い思惑を呼ぶ。なかでも、トランプ大統領が「イランが報復した場合、同国重要施設を含む52ヵ所を短時間で攻撃する」と強く警告するなか、「イランが米軍駐留のイラク基地に攻撃を開始した」ことで、情勢は一時緊迫した。為替市場においてもドル安要因に。しかし、トランプ氏は実施した演説で「軍事力を行使したくはない」などと述べ、イランへの報復攻撃に否定的な考えを示したことが緊張緩和観測に繋がり、対円などでのドル急反発の原動力となっていた。
それに対し、テヘラン近郊で8日にウクライナの旅客機が墜落した原因について、複数の米政府高官が「イランによる偶発的な撃墜の可能性がもっとも高い」との見方を示し物議を醸すなか、紆余曲折を経たのち、イラン側が非を全面的に認めている。これで幕引きとなるのか、動静に注目だ。
<< 今週の見通し >>
年末・年始は商いが薄くなるためか、昨年の「フラッシュクラッシュ」と比べるまでもないが、今年もなかなか荒い値動きをたどっていた。実際、109.70円レベルから107.65円まで2円下落したものの、そののちほぼ100%戻し、109.69円まで戻すというレンジの大きな「行って来い」を記録している。今週は、先週末の流れを継ぎ上値トライ、いよいよ110円突破に向けた動きがあるのか否かが注視されそうだ。超えれば112.40円、昨年の年間ドル高値が中期的なターゲットに。
材料的に見た場合、「米貿易問題」や「米金融政策」、「ウクライナ疑惑」のほか「北朝鮮情勢」や「英国情勢」、「イラン情勢」など気掛かりな案件は少なくない。そのいずれも要注意だが、とくにとなると「イラン情勢(中東リスク)」と「米中情勢」か。後者については、15日とされる「第1段階の通商合意署名」がもっとも注視されているものの、それ以外でも半ば予想されていたこととは言え、台湾総統選で蔡総統が再選を果たし、それについて中国外務省が日米英からの祝意に「『ひとつの中国』原則に反するやり方で、強烈な不満と断固とした反対を表明する」などと反発するコメントを発表している。新たな火種として注意する必要があるかもしれない。
テクニカルに見た場合、ドルは先週末に109.69円まで値を上げ、昨年12月からのレンジ上限超えをうかがう展開となっている。レンジ上限は、少なく見積もっても4-5回はチャレンジし、抜けられなかったため、かなり強い抵抗と目されるが、抜ければいよいよ110円台乗せが現実のものとして意識されそうだ。
対するサポートは、109円前後に位置する移動平均の25日線。また、108.60-70円には同200日線が位置している。
一方、材料的に見た場合、1月のNY連銀景況指数や同ミシガン大消費者信頼感指数速報値といった重要な米経済指標、しかも1月分という最新データの発表が相次ぐ。先週末に発表された12月の米雇用統計は事前予想にとどかない内容で、期待外れの結果に終わっているだけに、悪い内容の指標が続くようだと再びドル売りに傾斜する展開も否定出来ないだろう。
また、それとともに米通貨当局者の講演が相次ぐうえ、シティグループをはじめとする米大手企業の決算発票がはじまるだけに、そちらの内容にも要注意だ。
そんな今週のドル/円予想レンジは、108.50-110.50円。ドル高・円安については、109.70円レベルをめぐる攻防にまずは注視。かなり強い抵抗と考えられるが、抜ければいよいよ110円台乗せも。
対するドル安・円高方向は、109円前後に位置する移動平均の25日線が最初のサポート。底堅いイメージだが、ポジション的にはやや傾き始めているだけに、下げ始めると意外に早いといった声も少なくない。(了)
ドル円時間足
オーダー/ポジション状況
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