地政学的リスク後退で反発するも109.70の壁が立ちはだかる
今週のレビュー(1/6−1/10)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初108.00で寄り付いた後、@米国によるイラン革命防衛隊・ソレイマニ司令官殺害を受けた地政学的リスクの高まり(中東情勢の緊迫化)や、Aイランによる米国への報復開始報道が重石となり、週央にかけては、約3ヶ月ぶり安値となる107.64まで急落しました。しかし、同水準で下げ渋ると、その後はショートカバー主導で急反発。B米・12月ADP雇用統計(結果20.2万人、予想16.0万人)の良好な結果や、Cトランプ米大統領による「軍事行使を望まない」との発言(演説の中で平和的解決の可能性を滲ませたことから地政学的リスクが後退)、Dリスク選好ムードを背景とした米主要株価指数の急伸(史上最高値更新)と米長期金利の上昇、E中国の劉鶴副首相が米中第1段階合意の署名を目的に来週13日から15日に訪米すると発表したこと等が支援材料となり、週末にかけては、昨年12/26以来、約2週間ぶり高値となる109.69まで急伸しました。もっとも、注目された米・12月非農業部門雇用者数(結果14.5万人、予想16.4万人)が市場予想を下回ると、伸び悩む展開に。本稿執筆時点(日本時間4時45分現在)では、109.53近辺で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1168で寄り付いた後、@ドイツ・11月小売売上高(結果2.8%、予想1.0%)や、Aドイツ・12月サービス業PMI(結果52.9、予想52.0)、Bユーロ圏・12月サービス業PMI(結果52.8、予想52.4)が軒並み市場予想を上回ったことを材料に、週明け海外時間に、高値1.1208まで上昇しました。しかし、同水準で伸び悩むと、Cトランプ米大統領による「軍事行使を望まない」との発言(演説の中で平和的解決の可能性を滲ませたことから地政学的リスクが後退)を受けたリスク回避ムードの後退(米主要株価指数の急伸+米長期金利の上昇+ドル買い)や、Dドイツ・11月製造業受注(結果▲6.5%、予想▲4.7%)の冴えない結果、E米・12月ADP雇用統計の良好な結果が重石となり、週末にかけては、12/27以来、約2週間ぶり安値となる1.1086まで反落しました。もっとも、米雇用統計が市場予想を下回ると下げ渋り、本稿執筆時点(日本時間4時45分現在)では、1.1120近辺で推移しております。
来週の見通し(1/13−1/17)
<ドル円相場>
ドル円は、1/8に記録した安値107.64をボトムに反発に転じると、1/10には高値109.69まで急伸しました(2日間で2円05銭の上昇)。この間、主要レジスタンスポイントである200日移動平均線や、一目均衡表転換線、一目均衡表基準線、一目均衡表雲上限、ボリンジャーミッドバンドを全て突破するなど、テクニカル的に見て、「地合いの強さ」を意識させるチャート形状となりつつあります(年末・年始の下げ幅の全値戻しを達成)。但し、ここから先の続伸は容易では無いと考えられます。背景には、昨年11月以降、幾度となく続伸を阻まれた強力な抵抗帯(レジスタンス)109.70の壁が立ちはだかる可能性があるからです。事実、今週も109.69をトップに上値が抑えられる展開となりました。余程強いドル買い・円売り材料が出てこない限り、同水準を突破することは容易では無いと考えられます(戻り売りに押される可能性が高い)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違いや、Aトランプ米大統領の弾劾リスク(米下院は来週、トランプ米大統領の弾劾決議案を上院に送付する見通し)、B米国ファンダメンタルズの冴えない結果(1/3に発表された米ISM製造業景況指数は2009年6月以来の低水準、1/10に発表された米雇用統計も市場予想を下回るなど、主要経済指標は力強さに欠ける内容)、C米中貿易摩擦の再燃リスク(第1段階合意署名は来週15日に行われる公算大。但し、トランプ米大統領は1/9に第2段階合意は米大統領選後まで見送る可能性もあり得ると発言)、D英合意なき離脱リスクの再燃リスク、E朝鮮半島を巡る地政学的リスク、F中東情勢の緊迫化(トランプ米大統領・演説を受けて緊張感が幾分和らぐもまだまだ油断は出来ない状況)など、ドル売り・円買いを想起させる材料は引き続き残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「上値の重さ」が意識されます。年初来・下げ幅の「全値戻し」が達成されたことで、短期筋のショートポジションは既に解消された可能性が高く、余程強いドル買い・円売り材料が出てこない限り、強力なレジスタンス109.70を上抜けすることは難しいと考えられます(ショートカバー主導では無く、新規のロングを呼び込む材料が必要)。来週発表される米・12月消費者物価指数や、米・12月小売売上高が冴えない結果となれば、米景気を巡る悲観論の再燃を通じて、米長期金利低下→ドル売りの流れが再開する恐れもありそうです。また、米中第1段階合意(1/15)を受けた材料出尽くし感や、中東を巡る地政学的リスクの再燃リスクもドル円の上値を抑制すると考えられることから、来週はドル円相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):108.25ー110.25
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、またしても1.12台で定着できず反落に転じました。この間、一目均衡表転換線や基準線、バンドウォークや200日移動平均線など主要テクニカルポイントを軒並み割り込んだ他、11/29安値1.0981と、12/20安値1.1065を結んだサポートラインも下抜けするなど、テクニカル的に見て「上値の重さ」を意識させるチャート形状となりつつあります。目先は、1.10台半ばに控える一目均衡表「雲上限・下限」を下方ブレイクできるか否かに注目が集まりそうです。また、ファンダメンタルズ的に見ても、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスクや、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感、Bイタリアの財政悪化問題、CECBによる追加緩和観測、D英国情勢の先行き不安など、ユーロ売りを意識させる懸念材料は根強く残っています。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「上値の重さ」が意識されます。200日移動平均線を下回ったことで地合いは弱く、ユーロ圏主要経済指標(11月鉱工業生産や、12月新車登録台数、ECB理事会議事録など)や、中東及び英国を巡るヘッドラインを睨みながらも、来週はユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1025−1.1225
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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