もみあいも徐々に円高方向に試す流れ
今週の週間見通し
先週のドル円は、週半ば以降にFOMC、日銀会合、米国雇用統計とイベントが集中したこともあって、水曜NY市場後場までは108円台後半の狭いレンジの中でのもみあい、イベント待ちの様子見相場が続きました。FOMCでは予想通りに利下げが行われ、会見では今回の利下げで打ち止めといった発言があったことで、一時109.29レベルの高値をつけましたが、市場参加者のコンセンサスも12月利上げまでは織り込んでいませんでしたので、短期筋が高値掴みをした感が個人的には強く感じられました。
そして、それまでのドル高円安の流れに変化が見られたのが、木曜欧州市場で流れたニュースで、これは中国側が米国との通商協議に疑問を呈しているといった記事でした。先の米中通商協議部分合意以来も中国側は一切合意という単語は使わず、協議継続という表現を繰り返していましたが、米国主導で進められていく流れに対しては以前から中国側は警戒感を隠していませんので、これも一連の流れと考えることが出来るでしょう。
金曜には米中通商協議に関して電話会議が行われ、米国側は進展、コンセンサスは取れたという発言をしていますが、これまで何度も裏切られ、この週報でも合意の2文字を見るまでは安心できないと書いてきたのですが、前回は部分合意という言葉が出たと思ったら米国側のみがその単語を使っているという、結局のところは米中首脳間で署名が行われるまでは信じられるものは無いというのが正直なところです。こうなると、合意では無く「署名」の2文字を見るまでは安心できません。APECサミットが中止となったことで、12月中旬までの署名に持って行けるかどうかが今後のテーマとなりますので、進展という程度のことでリスクオンに動くのはリスクを甘く見ているとしか言えません。
そして雇用統計ですが、既に米国の雇用状況は完全雇用に近いことを考えると、もはや以前のような重要度は無く、他の一連の経済指標と同列で考えてよいものです。経済指標の重要度も時代とともに変化していて雇用統計が注目される前は、それこそ日米貿易摩擦で貿易収支が注目され雇用統計の注目度は非常に低いものでした。いまはまた貿易収支の重要度がやや増えたこと、そして全体的な経済指標としてはわかりやすさから各国のPMIの注目度が増していると言えます。
さて、今週ですがその各国PMIの改定値が連日発表されます。速報値よりは注目度は低いものの修正が上方、下方どちらになるのかには注目しておきたいところです。そして、貿易収支は米国、中国双方が発表されることとなりますので、それぞれから発表される数字にも注目です。米国の対中赤字が増えるといったような数字次第ではドル売り要因となりますし、トランプ大統領の発言のきっかけにもなってくるでしょう。
また、ユーロ要因ではありますが、月曜のラガルド新ECB総裁の講演を筆頭に、各国金融政策担当者の講演も多いので、新たな動きに繋がるとは思えないものの、これらも念の為に注意となります。なお、今週から米国が冬時間に移行しますので、時間には注意してください。予定表の日本時間はすべて調整済みです。
今週もあまり大きな動きは期待できそうもありませんので、テクニカルな観点から日足チャートを見てみましょう。
先週引いた上昇ウェッジのライン(ピンクの太線)をそのまま残してあります。高値では上ヒゲで抜けていますが引き直すほどでもありませんので、今週はそのままとしておきます。上値も同ラインで抑えられたのと同様に下げ局面でもサポートで止められていますが、現時点ではサポートにかなり近いため、今後ラインを抜けてくるとするとサポートの下抜けの可能性が高いと言えそうです。
仮に下抜けが無いとするとかなりつまらない値動きとなりそうで、先週の安値圏となる107円台後半を日足の下ヒゲで試す程度となり、また上値も木曜に下げ始める前の水準となる108.65レベルとなってかなり値幅が狭い、といっても最近のドル円にはよく見られる光景ではありますが、横方向の動きとなってしまいます。しかし、個人的には109円台で既に短期的な戻り高値をつけたと見ていますので、動きが出てくるとするとドル安方向の可能性の方が高いと考えています。
その場合のターゲットですが、10月安値と高値の半値押し107.88は先週安値で一致を見ていますので、次は61.8%押しにあたる107.55となります。大きな値幅も見込めないと思いますので、今週は107.55レベルをサポートに108.65レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
11月4日(月)
**:** 東京市場休場
**:** NY市場冬時間移行
09:30 豪州9月小売売上高
16:00 トルコ10月CPI
17:00 スペイン中銀総裁講演
17:50 フランス10月製造業PMI改定値
17:55 ドイツ10月製造業PMI改定値
18:00 ユーロ圏10月製造業PMI改定値
18:30 英国10月建設業PMI
24:00 米国9月製造業新規受注
28:30 ラガルド新ECB総裁講演
11月5日(火)
07:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
10:45 中国10月MarkItサービス業PMI
12:30 豪中銀政策金利発表
18:00 フランス中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏9月PPI
22:30 米国9月貿易収支
23:45 米国10月サービス業PMI改定値
24:00 米国10月ISM非製造業景況指数
26:40 (ダラス連銀総裁講演)
30:45 NZ7〜9月期失業率
11月6日(水)
08:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)
08:50 日銀会合議事要旨公表
16:00 ドイツ9月製造業新規受注
17:50 フランス10月サービス業PMI改定値
17:55 ドイツ10月サービス業PMI改定値
18:00 ユーロ圏10月サービス業PMI改定値
18:00 デギンドスECB副総裁講演
18:30 メルシュECB理事講演
19:00 ユーロ圏9月小売売上高
22:00 シカゴ連銀総裁講演
22:30 米国7〜9月期単位労働コスト
23:30 NY連銀総裁討論会参加
23:30 週間原油在庫統計
29:15 (フィラデルフィア連銀総裁討論会参加)
11月7日(木)
09:30 豪州9月貿易収支
16:00 ドイツ9月鉱工業生産
21:00 英中銀MPC結果発表、四半期インフレ報告
21:30 英中銀総裁会見
21:30 米国新規失業保険申請件数
27:05 (ダラス連銀総裁講演)
11月8日(金)
09:10 (アトランタ連銀総裁講演)
09:30 豪中銀四半期金融政策報告書公表
**:** 中国10月貿易収支
16:00 ドイツ9月貿易収支
16:45 フランス9月貿易収支
16:45 フランス9月鉱工業生産
24:00 米国10月卸売在庫・売上高
24:00 米国11月ミシガン大消費者信頼感速報値
25:45 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
11月10日(日)
**:** スペイン総選挙
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
10月28日(月)
ドル円はNY市場に入るまでは全く動かず、10銭強の狭いレンジでのもみあいを続けました。NY市場に入りダウ上昇ととともにドル買いの動きとなり、ストップや仕掛けの買いも巻き込みながら一時109.04レベルの高値をつけました。後場以降は再び膠着相場となり109円を若干割り込んだ水準で引けました。
10月29日(火)
ドル円は日経平均が寄り付き直後に上昇する動きとともに、一時109.07レベルと前日高値を更新しましたが後が続かず、逆に日計りの買いが増えた印象でした。欧州市場序盤には買いを増やした向きのストップも出て下押しする場面も見られましたがNY市場までにはそれも戻す動き。NY市場では米中通商協議の遅れを示す発言から108.75レベルまで下げましたが、引けにかけてはやや買い戻されての引けとなりました。
10月30日(水)
ドル円はFOMCを前に若干の上下が見られる程度でNY後場までもみあいを続けました。FOMCでは予想通り0.25%の利下げが行われ、利下げ直後こそ目立った反応は見られなかったものの底堅い地合いでパウエル議長の会見待ちとなりました。議長会見では今回で利下げが打ち止めといった発言も見られたことをきっかけに一時109.29レベルの高値をつけたもののすぐに反落し行って来い。引けにかけてはほぼFOMC前の水準でのもみあいと比較的静かなイベント経過となりました。
10月31日(木)
ドル円は前日FOMC直後には乱高下も見られたものの上値の重たいスタートを切りました。株価も上値が重くなってきたところに前日安値を割り込んだことからドル売りの流れが強まりました。欧州市場に入り中国が米国との通商協議に疑問を呈しているといった報道があり、それをきっかけにドル円は108円台前半へと下げ、NY市場では弱い経済指標に反応しダウが下げる動きからドル円は一段安となり後場には107.93レベルの安値をつけた後に若干戻して引けました。
11月1日(金)
ドル円はNY市場が始まるまでは全く動かず雇用統計待ちとなりました。雇用統計はNFPが予想よりもやや強かったことからドル買いが先行したものの、すぐに元の水準へと下押し。その後米中協議進展のヘッドラインに反応し再びドル買いの動きとなり108.32レベルまで買われた後にやや押して引けました。
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