米利下げ観測再燃でドル売り再開。来週は米中通商協議が焦点
今週のレビュー(9/30−10/4)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初107.92で寄り付いた後、@対ユーロでドル高が加速したことや、A「米政権は中国株の米ニューヨーク証券取引所への上場廃止を検討している」との一部報道に対して米財務省とナバロ米大統領補佐官が否定的なコメントを発したこと、B日銀短観(大企業製造業DI:結果5、予想1)が市場予想を上回ったこと、C国内最大級の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が外債投資拡大方針を表明したこと等が支援材料となり、翌10/1に、約2週間ぶり高値となる108.47まで上昇しました。
しかし、FOMC後に記録した高値108.48を前に伸び悩むと、C米・9月ISM製造業景況指数(結果47.8、予想50.1)が10年ぶり低水準に落ち込んだことや、 Dトランプ米大統領が「ドルは強すぎる、FRBの金利は高すぎる」とツイートしたこと、E朝鮮半島及び香港を巡る地政学的リスクが再燃したこと、F米・9月ADP雇用統計(結果13.5万人、予想14.0万人、前回19.5万人→15.7万人へ下方修正)や、米・9月ISM非製造業景況指数(結果52.6、予想55.0)が冴えない結果となったこと、Gシカゴ連銀エバンス総裁が「直近2回の利下げは適切であり、必要に応じて一段の調整を行う用意がある」とハト派的なコメントを発したこと、Hこれらを受けて、米株安・米長期金利低下(米10年債利回りは9/13に記録した1.908%から。10/3には1.509%まで急低下)の流れが加速したこと等が重石となり、ドル円は、週後半にかけて、9/5以来、約1ヶ月ぶり安値となる106.49まで急落しました。
もっとも、同水準では押し目買い意欲も根強く、トランプ米大統領が「中国の貿易交渉団が来週米国を訪れ、通商協議を行う見通し。順調に進んでいる」と発言すると、10/10ー10/11に開催される予定の米中閣僚級通商協議への期待感からドル円も持ち直す展開となりました。注目された米・9月雇用統計では、非農業部門雇用者数(結果13.6万人、予想14.5万人)が市場予想を下回ったものの、失業率(結果3.5%、予想3.7%)が約50年ぶり低水準に留まったことが好感され、結局106.80付近まで持ち直しての越週となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0940で寄り付いた後、@ドイツ・9月消費者物価指数(結果1.2%、予想1.3%、前回1.4%)が市場予想を下回ったこと等を背景に、翌10/1に、約2年5ヶ月ぶり安値となる1.0879まで急落しました。しかし、A米国ファンダメンタルズの冴えない結果(ISM製造業景況指数、ADP雇用統計、ISM非製造業景況指数など)や、Bシカゴ連銀エバンス総裁による「直近2回の利下げは適切であり、必要に応じて一段の調整を行う用意がある」とのハト派的な発言、C米長期金利の急低下が支援材料となると、週後半にかけて、約1週間ぶり高値となる1.0999まで反発しました、もっとも、心理的節目1.1000手前では戻り売り意欲も根強く、続伸が阻まれると再び反落。結局1.0980前後まで押し戻されての越週となっております。尚、10/3に発表されたユーロ圏・8月生産者物価指数(結果▲0.8%、予想▲0.5%)は冴えない結果となりましたが、ユーロ売りでの反応は一時的なものに留まりました。
来週の見通し(10/7−10/11)
<ドル円相場>
ドル円は、週前半にかけて上値を試すも、FOMC後に記録した高値108.48を前に失速すると(高値108.47)、週央以降、大きく値を下げる展開となりました。この間、一目均衡表転換線や、ボリンジャーミッドバンド、90日移動平均線、一目均衡表基準線、心理的節目107.00、9/24安値106.97、一目均衡表雲上限など、主要テクニカルポイントを次々に下抜けした他、9/18高値108.48と、10/1高値108.47を起点としたダブルトップからの「下放れ」も完成しました。テクニカル的にみて、下落リスクが強く意識されるチャート形状となりつつあります。
ファンダメンタルズ的に見ても、@トランプ米大統領を巡る弾劾機運の高まりや、A欧米を始めとした世界経済の減速懸念、B米中交渉を巡る先行き不透明感、C中東及び朝鮮半島を巡る地政学的リスク、D英国の合意なき離脱リスク、E香港情勢の緊迫化、F日米金融政策格差(追加利下げが織り込まれる米国と、副作用を警戒して追加緩和に二の足を踏む日銀との金融政策の方向性の違い)など、ドル売り・円買いに繋がり易い材料が引き続き多く残っています。特に今週は、シカゴ購買部協会景気指数や、ISM製造業景況指数、ADP雇用統計、米・ISM非製造業景況指数など米国ファンダメンタルズの悪化が相次ぎ、今月末に開催される米FOMC(連邦公開市場委員会)での追加利下げを織り込む形でドル売りに拍車がかかる展開となりました。
来週は、10/10に発表されるFOMC議事要旨や、米・9月消費者物価指数、10/10ー10/11に開催される米中の閣僚級通商協議の結果を睨みながらの神経質な展開が予想されます。トランプ米大統領は10/3、「私は中国に対し多くの選択肢を提示できるが、中国が米国の要望に応じないのであれば、われわれには多大な力がある」と、中国が歩み寄りも見せなければ「交渉決裂→追加制裁」の可能性があることを滲ませました。米中協議に絡んでは、楽観と悲観が入り混じるなど、まだまだ予断を許さない状況です。交渉決裂時にはマーケットが想像以上にクラッシュする恐れもあることから、常にダウンサイドリスクを念頭に置いた取引が必要となりそうです。当方では、テクニカル面、ファンダメンタルズ面の弱さを踏まえ、ドル安・円高基調の継続をメインシナリオとして予想いたします。(ドル円の予想レンジ:105.00ー108.50)
<ユーロドル相場>
ユーロドルは、週前半に記録した約2年5ヶ月ぶり安値1.0879から切り返すと、週後半にかけて一時1.0999まで急伸しました。米国ファンダメンタルズの悪化を受けて、「ドル売り→ユーロ・ショートカバー」の流れが強まったことが背景と考えられます。もっとも、一目均衡表基準線や、ボリンジャーミッドバンド手前では戻り売り意欲も根強く、1.10台の回復には至りませんでした。6/25高値と8/6高値を結んだ中期レジスタンスラインが上方に迫ってきていることも上値を重くしている一因と考えられます。テクニカル的に見て、ユーロ安・ドル高基調の継続が意識されます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスクや、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感(今週は米国ファンダメンタルズの悪化の影に隠れていたが、欧州経済指標は先週来冴えない数字が継続中)が高まっていること、Bイタリアの財政悪化問題、C中東やトルコを巡る地政学的リスク、D英国の合意なき離脱リスクの高まりなど、不安材料は山積みです。レーンECB理事など欧州当局者からはハト派的な発言が相次ぐなど、「欧州経済の先行き不安→ECBによる追加緩和観測(マイナス金利の深掘りや資産買い入れ規模の拡大期待)→欧州債利回り低下→ユーロ売り」の流れは今後も続くと予想されます。
来週は、10/8のドイツ・8月鉱工業生産や、10/10のドイツ・8月貿易収支、10/11のドイツ・9月消費者物価指数に注目が集まります。冴えない数字が相次げば、欧州経済を巡る悲観的な見方が一段と強まり、ファンダメンタルズ主導でユーロ売りが再燃する展開も想定されます。当方では、米中通商協議終了後に再びユーロ安・ドル高基調が強まると予想いたします。(ユーロドルの予想レンジ:1.0800−1.1100)
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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