ドル円見通し 米雇用統計からの反発は軽微、ダブルトップからの下落継続か
【概況】
米労働省が10月4日夜に発表した9月の雇用統計で失業率は3.5%となり1969年12月以来49年9カ月ぶりの低水準となった。非農業部門就業者数は季節調整済みで前月比13万6000人増となり市場予想の14万5000人増を下回ったが、8月分は当初の13万人増から16万8000人増へ上方修正された。米連銀が注視している平均時給伸び率は前年同月比2.9%増で市場予想及び8月の3.2%から鈍化した。前月比は0%の伸びで予想の0.3%及び8月の0.4%から鈍化した。
ドル円は雇用統計前日に106.50円まで下落してから下げ一服で様子見となっていたが、発表直後に107.12円までいったん上昇するも戻りは短時間にとどまって107円台を維持できずに雇用統計発表前水準へほぼ押し返されて週を終えた。ユーロは対ドルで発表からいったん下げたが深夜には戻した。ポンドもいったん下落後に元の水準へ戻している。総じて為替市場の反応は限定的だった。
NYダウは雇用統計のうち失業率の大幅低下を見て景気悪化懸念は後退したとして372.68ドル高と上昇した。
【経済指標】
米雇用統計で失業率は歴史的な低水準となった。これは不況への懸念を後退させるものだが、就業者の増加ペースも従来の20万人増前後の水準にはなかなか達しない状況に鈍化し、時給の伸びも鈍っていることは景気の先行き減速懸念を拭えないものと思われる。
ダウは1日のISM製造業景況指数悪化、2日にADP民間雇用が予想を下回った段階で大幅下落し、3日のISM非製造業景況指数悪化でも一時は大幅続落となり、1日からの下げ幅が千ドルを超えたが3日の終盤には景気悪化なら利下げが支えるとして持ち直し、4日も失業率の改善から続伸というように、弱気心理へ落ち込みかけたところから楽観を取り戻した印象だ。
しかし、ドル円の反発はNYダウと比較しても軽微なものだった。就業者数と時給の伸び鈍化が今後の米連銀による追加利下げの可能性を排除しないこと、米中の閣僚級通商協議が11日と12日にもたれるが、必ずしも楽観的な見通しが立っているわけでもないことを踏まえて慎重な反応にとどまったということだろう。
米10年債利回りも10月4日は0.01%低下の1.53%で終了した。株高から序盤は債券売りとなったが長続きしなかった。債券市場は先行きの景気後退不安と米連銀の追加利下げ及び世界的な金融緩和傾向の継続感を維持していると思われる。
総じて、10月1日と3日のISM景況感が債券市場と為替市場には圧迫感を与えているということだろう。米サプライ管理協会(ISM)が発表した9月の製造業景況指数は47.8で市場予想の50.1を下回り、前月の49.1から低下、凡そ10年ぶりの低水準となった。また景気拡大の目安とされる50を2ヶ月連続で割り込んだ。3日の非製造業景況指数も52.6にとどまり前月の56.4から悪化、市場予想の55.0を大幅に下回った。欧州、中国の景況感の悪化が目立ってきたが、米国の景況感悪化も明確になりつつあるのではないかと思われる。
【3か月サイクルではダブルトップからの下落期入り】
中勢では概ね10か月から1年周期の底打ちサイクルで推移している。直近では2019年1月3日で底をつけ、4月24日高値で戻り一巡となり次の底形成期となる11月から来年1月にかけての間へ下落継続しやすい状況にあると思われる。このため、8月26日安値からの反発では1年サイクルの底打ちとしては日柄が浅く、もう一度底試し、さらに底割れを目指す可能性があるとみる。
1年サイクルを4分割する概ね3か月前後のサイクル(2か月から4か月毎の周期)では、1月3日底以降に3月25日、6月25日、8月26日と底打ちしてきたが、8月26日からの上昇は9月18日と10月1日のダブルトップで一巡して下落期に入ったと思われる。
ダブルトップの谷間にあった9月24日(25日未明)の安値を割り込んでダブルトップは完成して二段下げに入ったが、この過程で9月24日の安値を下支えした26日移動平均を割り込んだこと、ダブルトップ形成中に相対力指数のピークが切り下がる弱気逆行現象が見られたことから10月3日安値では下げ止まれずにさらにサイクルボトム形成への下落を継続しやすい状況と思われる。この3か月周期の底打ちサイクルにおける次の安値形成期は11月末前後と推察されるが、12月以降へ延長する可能性もある。
ドル円の下落は米10年債利回りの下落サイクルと概ね同調しているが、米経済指標悪化懸念が債券への逃避買い心理を助長しながら利回り低下基調が継続している。米10年債利回りの低下は独仏英、豪州等の長期債利回り低下も招いているため、主要国の利回りの低下がクロス円での円高圧力となり、ドル円においても円高圧力が勝ってきていると思われる。
8月26日への下落で今年1月3日安値、昨年3月26日安値を割り込んだ。いったんは戻したものの、1年サイクルにおける直前2つの底を割り込み、その後の戻りが9月18日と10月1日のダブルトップで行き詰まっているとすれば、今回の1年サイクルの底打ちは104円台では安値を出し切ったことにはならず、先行きはさらに水準を切り下げてゆく可能性があることを示唆していると思う。仮に8月26日安値を割り込む場合、心理的には100円の大台が目安だろうが、チャート上の節目として目安にすべき下値は2016年6月底99.04円まで切り下がる。
8月26日安値から9月18日への戻り幅の倍返しは100.43円であり、仮にそこまで下げれば心理的には100円試しの状況に入る。勢い余れば99円試しという可能性も現実的ではないといえないだろう。
米経済指標が予想外に悪い状況が続き、国慶節の大型連休明けからの米中協議動向が悲観的になればリスク回避的円高、世界的金融緩和感による欧米豪等の長期債利回り低下による円高圧力で10月3日安値割れ、さらに105円台、104円台を段階的に試してゆく可能性も徐々に強まるのではないかと思う。
【当面のポイント】
(1)当初、10月3日深夜安値106.50円を下値支持線、4日深夜高値107.12円を上値抵抗線とみておく。
(2)10月3日深夜安値が概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルのボトムのため、底割れ回避のうちは10月7日の日中から8日夜にかけての間への上昇余地ありとし、107.12円超えの場合は107.50円から107.75円にかけてのゾーンへの上昇を想定するが、そこは戻り売り場となりやすいとみて、その後の107円割れからは下げ再開と考える。
(3)106.75円割れからは106.50円試しとし、底割れからはまず106円試し、さらに105円台後半への下落を想定するが、短期的なサイクルでの底打ち期は8日夜から10日深夜にかけての間と想定されるので、8日夜以降はいったん反発が入りやすいと注意する。ただし107円以下での推移中は一段安警戒が続くとみる。(了)<6日17:50執筆>
【当面の主な予定】
10/7(月)
休場、中国、香港、オーストラリア
07:45 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演(デンバー)
14:00 (日) 8月 景気先行指数(CI)・速報値 (7月 93.7、予想 91.7)
14:00 (日) 8月 景気一致指数(CI)・速報値 (7月 99.7、予想 99.4)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 -2.7%、予想 -0.4%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前年同月比 (7月 -5.6%、予想 -6.6%)
23:20 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ディスカッション参加
28:00 (米) 8月 消費者信用残高 前月比 (7月 232.9億ドル、予想 150億ドル)
10/8(火)
08:30 (日) 8月 全世帯消費支出 前年同月比 (7月 0.8%、予想 0.9%)
08:50 (日) 8月 経常収支・季調前 (7月 1兆9999億円、予想 2兆1000億円)
08:50 (日) 8月 経常収支・季調済 (7月 1兆6471億円、予想 1兆6821億円)
08:50 (日) 8月 国債収支ベース貿易収支 (7月 -745億円、予想 364億円)
09:30 (豪) 9月 NAB企業景況感指数 (8月 1)
10:45 (中) 9月 財新サービス業PMI (8月 52.1、予想 52.0)
13:00 (英) カーニー英中銀総裁、講演(東京)
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー-現状判断DI (8月 42.8、予想 43.3)
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー-先行判断DI (8月 39.7、予想 39.4)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 -0.6%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 -4.2%、予想 -4.3%)
21:30 (米) 9月 生産者物価指数 前月比 (8月 0.1%、予想 0.1%)
21:30 (米) 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 1.8%、予想 1.8%)
21:30 (米) 9月 生産者物価コア指数 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 生産者物価コア指数 前年同月比 (8月 2.3%、予想 2.3%)
24:50 (米) パウエルFRB議長、NABE年次会合で講演(デンバー)
26:35 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演(シカゴ)
30:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ディスカッション参加
10/9(水)
08:30 (豪) 10月 ウエストパック消費者信頼感指数 (9月 98.2)
23:00 (米) 8月 卸売在庫 前月比 (7月 0.2%、予想 0.4%)
23:00 (米) 8月 卸売売上高 前月比 (7月 0.3%)
23:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、金融政策再点検のためのイベント
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
10/10(木)
米中閣僚級貿易協議[11日まで、ワシントン]
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前月比 (8月 -0.3%、予想 0.0%)
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前年同月比 (8月 -0.9%、予想 -1.1%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前月比 (7月 -6.6%、予想 0.0%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前年同月比 (7月 0.3%、予想 -8.4%)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 214億ユーロ、予想 186億ユーロ)
15:00 (独) 8月 経常収支 (7月 221億ユーロ、予想 179億ユーロ)
17:30 (英) 8月 月次GDP 前月比 (7月 0.3%、予想 0.0%)
17:30 (英) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 0.1%、予想 0.0%)
17:30 (英) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 -0.9%、予想 -0.8%)
17:30 (英) 8月 製造業生産 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
17:30 (英) 8月 貿易収支・物品 (7月 -91.44億ポンド、予想 -100億ポンド)
17:30 (英) 8月 貿易収支・全体 (7月 -2.19億ポンド、予想 -10.50億ポンド)
20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
21:30 (米) 9月 消費者物価指数 前月比 (8月 0.1%、予想 0.1%)
21:30 (米) 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 1.7%、予想 1.8%)
21:30 (米) 9月 消費者物価コア指数 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 消費者物価コア指数 前年同月比 (8月 2.4%、予想 2.4%)
21:30 (米) 前週分 新規失業保険申請件数 (前週 21.9万件、予想 21.8万件)
21:30 (米) 前週分 失業保険継続受給者数 (前週 165.1万人、予想 165.1万人)
25:15 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、対話集会参加
10/11(金)
米中閣僚級貿易協議[最終日、ワシントン]
06:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
07:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
08:50 (日) 9月 マネーストックM2 前年同月比 (8月 2.4%、予想 2.4%)
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
21:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、Q&A参加
21:30 (米) 9月 輸入物価指数 前月比 (8月 -0.5%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 9月 輸出物価指数 前月比 (8月 -0.6%、予想 0.1%)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (9月 93.2、予想 92.0)
26:15 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
28:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
オーダー/ポジション状況
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