ドル円週報「底打ちパターンだが、もみあいを想定」(週報7月第5週)

ユーロ円の下げが上値を抑える動きと、週を通してユーロドル、ユーロ円の影響が強く感じられました。

ドル円週報「底打ちパターンだが、もみあいを想定」(週報7月第5週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、ECB理事会を前にしたユーロドルの売りがドル買いの動きとなった面が強かったと思います。理事会まではユーロ円も下げていましたので、ペースは鈍かったもののじりじりと円安に動きました。ECB理事会前後には上下に振れる動きも見られましたが、ドラギ総裁会見で今回の理事会では利下げの検討をしなかったとの発言にユーロの買い戻しが入り、ユーロ円が週初高値を上回るとドル円でもストップオーダーを巻き込みながら108円台後半へと続伸。金曜には一時的に高値を更新したものの、ユーロ円の下げが上値を抑える動きと、週を通してユーロドル、ユーロ円の影響が強く感じられました。


今週もドルはユーロドル、円はユーロ円の動きを横目で見ながらの流れは継続するかもしれませんが、月末から月初にかけては金融政策イベントを中心に重要イベントが続きます。火曜は日銀、水曜はFOMC、木曜は英中銀と連日の金融政策決定会合、そして金曜には影響は限定的なイベントとなるものの米国雇用統計の発表もあります。

まず、日銀は基本的に現状維持になり影響は少ないとは思うものの、主要先進国が軒並み緩和方向で動く中、緩和から抜け出すには追加緩和という思惑が働く可能性はあります。しかし、日銀は秋に控える消費税増税とその後の景気鈍化懸念に対応することが今年最大の役目となるはずですから、今ここで動くということは考え難いと思います。ですから、個人的には日銀会合はノーケアで行きます。

そして今週最大のヤマ場となるFOMCですが、0.25%利下げは織り込み済みで、月曜午前の時点でFF先物からの利下げ織り込み度は100%、そのうちの80%が0.25%の利下げを想定しています。残り20%は0.50%と大幅な利下げを見込んでいることとなりますが、先週までの各地区連銀総裁の発言等からすると、今回は0.25%の利下げに留まると見ることが妥当でしょう。そしてここまで市場参加者が織り込んできていることや、予防的な利下げを想定するならば現状維持という選択肢は無いと言わざるを得ず、今回はほぼ0.25%利下げ確定と言えそうです。その場合、株式市場はすでに織り込み済みでの上昇を見てきましたので、株式市場は反応が少なく、為替市場は素直にややドル売りで反応するのではないかと見ています。

また英中銀MPCも今回は現状維持となるでしょうか、ジョンソン新首相誕生でハードブレグジット(合意無き離脱)の可能性が高まってきていることに対して、一段の警戒感を示すことはありそうですから、将来的な緩和思惑につながるような発言が出てきても不思議では無いと思います。どの先進国も緩和方向に揃うことで、その前に少しでも利上げに動けた米国は良いのですが、他国は緩和といっても選択肢が限られ、難しい運営を迫られる年後半になってくることは間違いありません。


そして、金曜の米国雇用統計ですが、いまだにFX業者ではお祭り材料としている感がありますが、既に米国は完全雇用に近く、単月の数字で多少のブレがあったとしても影響は限られると見るべきですし、政治的なことを考えると雇用統計よりも同時刻に発表される貿易収支の方に注目したいと思います。今週はムニューシン財務長官等の米国高官が中国に向かい通商協議を行う予定となっていますので、米中間の動向と合わせて対中、対日赤字の動向には目を向けるべきと思います。

そうは言っても、今週もドル円は大きな動きは期待できそうにありません。
テクニカルにはどうか、日足チャートを見てみましょう。

テクニカルには4月から続いていたドル安トレンドに変調が見られ、6・7月の安値圏でいったん底打ちしたと見る方が自然です。ただ、材料的にはドル売り材料のほうがドル買い材料より多いため、108円台後半から109円までは相当に足取りが重たくなってくるであろうことはテクニカルにも示されています。

太い青の水平線は4月高値112.40と6月安値106.78の38.2%戻しにあたる108.93ですが、このラインは5月安値や7月高値とも一致していることを考えるとそう簡単には上抜けさせてくれないのではないか、逆にここを抜けると半値戻しの109.59までは速いのではないか、そのようなイメージが出やすいチャートパターンと言えるでしょう。

現時点では横方向のもみあい局面に入り、上にしても下にしても次の材料待ちという段階にありますが、今週の一連のイベントでも方向感が出ないとなると、いよいよ夏枯れ相場になるのではないかという、トレーダー的にはつまらない流れの可能性が高まってきています。
今週は上値が重たい展開ながらも下値も限定的として、108.00レベルをサポートに、109.00レベルをレジスタンスとする週を見ておくこととします。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。


7月29日(月)
**:** 日銀会合(〜30日)

7月30日(火)
07:45 NZ6月住宅建設許可件数
08:30 本邦6月失業率・有効求人倍率
08:50 本邦6月鉱工業生産
10:30 豪州6月住宅建設許可件数
**:** 日銀会合結果公表
14:30 フランス4〜6月期GDP速報値
15:00 ドイツ8月GFK消費者信頼感
15:30 黒田日銀総裁会見
18:00 ユーロ圏7月消費者信頼感
21:00 ドイツ7月CPI速報値
21:30 米国6月個人所得・消費支出
22:00 米国5月ケースシラー住宅価格指数
23:00 米国7月消費者信頼感
23:00 米国6月住宅販売保留件数指数
**:** FOMC(〜31日)

7月31日(水)
08:01 英国7月GFK消費者信頼感
10:00 中国7月製造業PMI
10:00 NZ7月企業信頼感
10:30 豪州4〜6月期CPI
15:00 ドイツ6月小売売上高
15:45 フランス7月CPI
16:00 トルコ6月貿易収支
16:55 ドイツ7月失業率
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP速報値
18:00 ユーロ圏7月CPI速報値
18:00 ユーロ圏6月失業率
21:00 南ア6月貿易収支
21:15 米国7月ADP全国雇用者数
21:30 米国4〜6月期雇用コスト
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見

8月1日(木)
10:30 豪羽州4〜6月期輸入物価指数
10:45 中国7月MarkIt製造業PMI
16:00 トルコ7月製造業PMI
16:50 フランス7月製造業PMI
16:55 ドイツ7月製造業PMI
17:00 ユーロ圏7月製造業PMI
20:00 英中銀MPC結果公表、四半期インフレ報告
20:30 カーニー英中銀総裁会見
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国7月製造業PMI
23:00 米国7月ISM製造業景況指数

8月2日(金)
08:50 日銀会合議事要旨公表
10:30 豪州4〜6月期PPI、小売売上高
17:30 英国7月建設業PMI
18:00 ユーロ圏6月PPI、小売売上高
21:30 米国6月貿易収支
21:30 米国7月雇用統計
23:00 米国6月製造業新規受注
23:00 米国7月ミシガン大消費者信頼感確報値

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

7月22日(月)
ドル円は、冴えない一日となりました。東京市場が始まってすぐに底堅い日経平均と仲値に向けてのドル買いの動きが入り、NY引けの水準から30銭ほどドル高となりましたが、それだけ。その後はNYの引けまでじりじりと調整の売りが入り狭いレンジの中でやや上値の重たさを感じさせる動きのまま引けました。


7月23日(火)
ドル円は、東京前場に底堅い日経平均を見ながらリスクオンの動きが先行しました。その後もユーロが25日のECB理事会を前にして売りが強まる動きに沿って、ドル円でもドル買い、NY市場では連邦債務に関し議会指導部での大枠合意を好感し108.29レベルの高値をつけドル高地合いのまま引けました。


7月24日(水)
ドル円は、朝方から上値の重たい展開となり先週金曜から続いた短期ドル高トレンドに終止符を打つこととなりました。108円台前半では既に売りオーダーも見受けられ、その後はNY市場まで緩やかなドル安が続きました。しかし108円割れでは買いも見られ東京朝の水準に戻して引けました。

7月25日(木)
ドル円は、NY市場までは動意薄の展開が続きました。NY市場に入ると強めの経済指標に反応しドル買いの動きとなりましたが、材料に反応したというよりもユーロ円の急激な買い戻しに反応したという面が強かった様子でした。ストップオーダーも巻き込みながら108.75レベルまで買われそのまま高値圏で引けました。


7月26日(金)
ドル円は、ほとんどの時間帯を108.60-70のレンジ取引となり、NY市場で強めのGDPとクドローNEC委員長による大統領は強いドルを望んでいるとの発言で2度108.83レベルを試したものの抜けきれず、どちらかというと上値の重たさを感じさせる週末クローズとなりました。

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