今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは週初からECB理事会においてフォワードガイダンスも含めて何らかの緩和政策が示されるのではないかとの思惑からユーロ売りが目立ちました。また、英国では新首相に前外相のジョンソン氏が就任しましたが、同氏は合意の有無に関係なく10月末にEUから離脱するとのスタンスを示しているため、ハードブレグジット懸念によるポンド売りもユーロの上値を抑える展開となっています。
ただ、ECB理事会では今回の理事会では利下げの検討をしなかったとのドラギ総裁の発言で一時的に買い戻しが強まりましたが、欧州経済が良いとは言えないことや、ブレグジット問題や今週の利下げがほぼ確定している米国の動き等、次回9月のECB理事会ではよほど状況が好転しない限り、緩和策が検討されるであろうことから、週末には再びユーロ売りが目立つ動きへと流れが戻っています。
ECB理事会が終わり、今週は最大の注目材料であるFOMCがありますが、利下げ織り込み度は100%であり、しかもその8割が0.25%の利下げを想定していることから、実際の結果もおそらくその通りとなる可能性がかなり高いと考えざるを得ません。そうした点では、今回のFOMCが終わると9月のFOMCで追加利下げがあるのか、またECB理事会でも再度緩和に動くのかと9月に向けての思惑がテーマとなってきます。さらに英中銀MPCも木曜にありますが、ハードブレグジット懸念が高まっている現状に対して、英中銀が今までよりもハト派寄りのコメントを出すのかどうかも注目しておいてよいでしょう。
他にも連日経済指標の発表がありますが、金融政策的に緩和的なバイアスがかかりやすい状況下、経済指標も弱い数字により反応しやすくなると考えられます。また予定はされていなくてもジョンソン新首相の発言には注意が必要です。週末には「EU離脱はとてつもなく大きな経済好機だ」と、離脱強硬派を印象付ける発言をしていますし、ポンドもユーロの上値を抑える大きな要因となってきそうです。
そして金曜の米国雇用統計は一時的な影響が見られる程度で、もはや重要な経済指標という位置づけではありません。欧州関連でも特段目立った材料が無い中でテクニカルな材料もまた重要となってくるでしょう。
今週はまず週足チャートをご覧ください。
昨年後半以降は緩やかに下げてきているものの動き自体は非常に穏やかです。ただ長期的には2008年からの大きな下降トレンドの中で、現状はピンクの下降ウェッジの中での動きを続け、大きなターゲットとして2017年安値と2018年高値の78.6%(61.8%の平方根)押しとなる1.0815を目指しているというのが大きな見通しです。
次にいつもの日足チャートです。
さすがに下降ウェッジ(ピンク)は大きすぎるので6月高値からの平行下降チャンネル(青)を引いてみました。1.12を明確に下抜いたことで現在の戻りの限界点は1.12を考えますが、下値としては既に年初来安値を下抜いたことで、大きくは1.10の大台ということになります。当面は1.10〜1.12の中での動きを想定し、今週はその中で1.1050レベルをサポートに1.1180レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
先週はドル円の動きにユーロ円の値動きが与えた影響が大きかったので、今週はユーロ円のチャートを見ることとします。ユーロ円日足チャートです。
ユーロ円は、5月後半以降はトライアングルの中での推移となっていましたが、先々週後半にサポートラインを下抜けユーロ安方向への動きが確定と考えられるチャートです。先週のECB理事会後の上げでは抜けたサポートがレジスタンスとなり上値を抑えられたことが、ちょうど良いガス抜きになったと考えることができます。
つまり、現在のユーロ円は再び下降トレンドへと回帰しやすく、青の下降ウェッジで示した中で緩やかに下げやすいと見ることができます。ドル円、ユーロドル、ユーロ円、それぞれスピードやタイミングは異なっても下方向に向かいやすいということは言えるでしょう。
今週の予定
7月31日(水)
08:01 英国7月GFK消費者信頼感
15:00 ドイツ6月小売売上高
15:45 フランス7月CPI
16:55 ドイツ7月失業率
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP速報値
18:00 ユーロ圏7月CPI速報値
18:00 ユーロ圏6月失業率
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見
8月1日(木)
16:50 フランス7月製造業PMI
16:55 ドイツ7月製造業PMI
17:00 ユーロ圏7月製造業PMI
20:00 英中銀MPC結果公表、四半期インフレ報告
20:30 カーニー英中銀総裁会見
8月2日(金)
17:30 英国7月建設業PMI
18:00 ユーロ圏6月PPI、小売売上高
21:30 米国6月貿易収支
21:30 米国7月雇用統計
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
7月22日(月)
ユーロドルだけでなく主要通貨は全般に小動きの一日となりました。ユーロドルは1.1210/15レベルを中心として終日のレンジもわずか21pipsに留まり静かな一日のまま終わりました。
7月23日(火)
ユーロドルは、ECB理事会で何らかの追加緩和が示されるとの思惑が強く、他に目立った材料が無い中、終日ユーロ売りの動きとなりました。NY市場ではドル買い材料もまたユーロ売りの支援材料となりました。また、英国では保守党党員による投票でジョンソン氏が新党首に就任しましたが、前週末からのハードブレグジット懸念によるポンド売りが続きました。
7月24日(水)
ユーロドルは、欧州市場序盤に弱い欧州の経済指標に反応して売りが入り、一時1.1126レベルをつけたもののECB理事会を前に後が続かず、終日狭い値幅でのもみあいとなりました。また英国では前日に保守党党首となったジョンソン前外相が新首相となり、ハードブレグジット思惑が強かったのですが、ポンドドルは事実で買い戻しパターンとなっていました。
7月25日(木)
ユーロドルはECB理事会を前に上値の重たい展開が続きました。理事会では現状維持との結果から買いが先行したものの、その後は緩和を示す文言が並びユーロドルは一時年初来安値を割り込みました。しかしドラギ総裁会見では今回の理事会では利下げを検討しなかったことが示され、ユーロは対ドル対円とも急速に買い戻される動きとなりました。ユーロドルはドル買いも出たことから引けにかけてはほぼ東京朝方の水準に戻しての引けとなりました。
7月26日(金)
ユーロドルは、東京市場では同意薄でしたが欧州市場に入ると前日のECB理事会における次回以降の緩和思惑が再燃し、前日に買い戻しが強かったことも重なって、週末前に改めてユーロ売りが強まる展開となりました。ポンド売りの再燃とNY市場におけるドル買いヘッドラインもユーロの上値を抑え、1.1112レベルまで水準を切り下げ、安値圏での週末クローズとなりました。
ディスクレーマー
アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.03.29
東京市場のドルは151円台でのこう着、今晩のPCEデフレータで動く可能性も(24/3/29)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、グッドフライデーの祝日で、多くの海外市場が休場となっていることから方向感の乏しい地合いとなった。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.03.29
ドル円 週間通して1円未満の変動、今年最小更新となるか(3/29夕)
東京市場は151円全台前半での揉み合い。本邦当局者からの円安けん制発言など、材料は決して少なくなかったが市場動意は限られた。
-
ニュージーランドドル(NZD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.03.29
NZドルWeekly 調整局面は継続、90円割れの攻防を迎える(24/3/29)
NZドルは、政府・日銀による円買い介入への警戒感が高まるなか、目先のサポートラインだった100日移動平均線や、一目均衡表の雲をそれぞれ下回る弱い地合いとなった。
-
ユーロ(EUR)の記事
Edited by:編集人K
2019.07.29
ユーロ弱含み、英「合意なき離脱」が現実味を帯び、英ポンドは17年3月以来の安値(7/29夕)
週明けのアジア市場でユーロは弱含み。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。