ドル円 為替条項懸念が上値を抑えるか(週報4月第3週)

週末G20では円安と円高の双方の材料が出ました。円安材料は黒田日銀総裁による追加緩和の可能性への言及です。しかし、この発言は

ドル円 為替条項懸念が上値を抑えるか(週報4月第3週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、週前半は株安の動きもあり水曜NY市場までは円高の動きが目立ち110円台へと入り込みました。しかし日経平均は一足早く東京市場で反転、ドル円も後を追っての切り返し、株高によるリスクオンが短期筋のストップオーダーを巻き込む形で金曜のNY引け間際には112円台乗せを見せる動きとなりました。

週末G20では円安と円高の双方の材料が出ました。円安材料は黒田日銀総裁による追加緩和の可能性への言及です。しかし、この発言は今すぐどうというよりは10月の消費増税を想定して一段の緩和は可能だと、まだ切り札があることをほのめかした面が強いと言えます。一方で円高材料は、米国のムニューシン財務長官が本日からの日米通商協議では為替も議題となり、為替条項を含めるとの発言がありました。こちらは今夜にも話されるテーマで、日本側は当然抵抗するでしょうが米国側も引くことは無く、それを材料に日本に対して譲歩を迫ってくるはずです。

これまでも北米の新NAFTAでは為替条項が含まれていますし、米中協議でも人民元安問題が話されてきました。今月下旬には財務省が年2回の為替報告書を議会に提出しますが、前回10月の監視国リストでも上位(中国、日本、ドイツ)に上げられている日本に対しては、中国同様に強気で臨んでくるでしょうし、EU(ドイツ)に対してはつい最近制裁関税の話が出てきたばかりです。これまでも日米間では協議はあったものの米国にとっては中国との協議が最大の問題で、次はいよいよその矛先が日本に向いてくるということになります。

現行のドル円水準を112円として、どの程度の円安を米国は避けたいと考えているかですが、一時期黒田ラインと言われた120円超えはあまりにも離れていて現実的ではありません。おそらく昨年高値(114.54レベル)を超える115円あたりを考えていてもおかしくはありませんし、トランプ大統領当選時の円相場が105円レベルであったことを考えると、その上下10円幅を考えた95〜115円などは、いかにもありそうな水準です。

今日明日の協議ですんなり決まるとも思えませんが、6月にはG20大阪サミットがありますので、それまでには何らかの方向性が見えてくる可能性は高いのではないか、そしてそれは日本の対米貿易黒字を減らすことが対象となっていることを考えるにつけ、円相場を取り囲む日米間の材料は金利差拡大停止とともに、ドル安・円高にバイアスがかかりやすくなってくるであろうとしか思えません。

次にテクニカルな観点です。日足チャートをご覧ください。

まず現状の認識としては1月4日からの上昇チャンネル(ピンクの平行線)の中での推移ですが、3月につけた年初来高値112.14にかなり近く、ここを上抜けてくるとチャンネル内での動きを継続し、ドル高に行きやすくなると考える向きが多いでしょう。しかし、2週前のFX羅針盤のコラムにも書いた2015年高値からのレジスタンスを赤の太線で示してありますが、現在112.70水準を下降中で、そのラインが強いレジスタンスになるという認識は変わっていません。

つまり、ここからのドル高の動きの余地はそれほど大きくなく、誤差を考えても1円もありません。そして、今日から日米通商協議が始まりますので、そこから聞こえてくる内容次第では3月の年初来高値が今後も年初来高値となる可能性も決して低くはないと言えます。さすがに、ここからの値幅を考えるといったんトライしてからの反落のほうが現実的ですが、仮に112円台後半か前半かどちらであったとしてもテクニカルにはそろそろ警戒すべき段階に入ってきている。そこに合わせるかのようにイベントがあり、要注意です。

今週は週初水準からのドル売りを考え、先週のレンジを中心に110.90レベルをサポートに、112.20をレジスタンスとする週を見ておきます。

今週の週間見通し

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

4月15日(月)
16:00 トルコ1月失業率
21:30 米国4月NY連銀製造業景況指数
25:30 フランス中銀総裁講演
26:00 シカゴ連銀総裁講演
**:** 日米通商協議(?16日)

4月16日(火)
**:** IMF世界経済見通し公表
09:00 ボストン連銀総裁講演
10:30 豪中銀理事会(2日)議事要旨公表
17:30 英国3月失業率
18:00 ドイツ4月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏4月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏2月建設支出
22:15 米国3月鉱工業生産、設備稼働率
22:50 オーストリア中銀総裁講演
23:00 米国4月NAHB住宅市場指数
27:00 (ダラス連銀総裁講演)

4月17日(水)
07:45 NZ1-3月期CPI
08:50 本邦3月貿易統計
11:00 中国1-3月期GDP
11:00 中国3月鉱工業生産、小売売上高
17:00 南ア3月CPI
17:00 ユーロ圏2月経常収支
17:30 英国3月CPI、PPI
18:00 ユーロ圏3月CPI改定値
18:00 ユーロ圏2月貿易収支
20:00 南ア2月小売売上高
21:30 米国2月貿易収支
22:00 英中銀総裁講演
23:00 米国2月卸売売上高・在庫
23:30 週間原油在庫統計
25:30 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
25:45 セントルイス連銀総裁講演
27:00 ベージュブック

4月18日(木)
10:30 豪州3月失業率
15:00 ドイツ3月PPI
16:15 フランス4月製造業・サービス業PMI
16:30 ドイツ4月製造業・サービス業PMI
17:00 ユーロ圏4月製造業・サービス業PMI
17:30 英国3月小売売上高
21:30 米国3月小売売上高
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国4月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:45 米国4月製造業・サービス業PMI
23:00 米国3月景気先行指数
23:00 米国2月企業在庫
25:10 (アトランタ連銀総裁講演)
**:** 米国取引所短縮取引

4月19日(金)
08:30 本邦3月CPI
21:30 米国3月住宅着工・建築許可件数
**:** アジアと欧州の主要市場、米国市場休場(イースター〜22日)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

4月8日(月)
早朝に高寄りしていた225先物が現物とともに下落、それに沿ってドル円も111.70レベルから111.40レベルへと下げ、その後は膠着が続きました。NY市場ではユーロ買いの動きに沿ったドル売りから一時111.29レベルの安値をつけましたが、引けにかけては111円台半ばへと戻して引けました。

4月9日(火)
ドル円は東京寄り付き直後とNY寄り付き直後の株安からリスクオフの円買いに振れる動きを見せました。東京市場では前日安値で止まっていましたが、欧州市場に入り前日安値を抜けるとストップも出ての一段安。NY市場ではトランプ大統領がEU製品に報復関税をかけるとの発言を嫌気しダウが下がり、一時111円を割り込みました。引けにかけては買い戻しも入り、111円台前半での引けとなりました。

4月10日(水)
ドル円はNY市場に入るまでは同意薄だったものの株式市場が全般に強かったことから若干じり高という動きになりました。しかし、NYに入ると売りが先行したこと、またドラギ総裁会見後にユーロが対円でも大きく下げたことをきっかけに円高となり、一時110.84レベルの安値をつけました。引けにかけては株価の回復もありやや戻しての引けとなりました。

4月11日(木)
ドル円にしては珍しく動きが出た一日でした。東京朝方から実需のドル買いが見られ、その後もNY市場までじり高の展開が続きました。NY市場の朝方に発表された経済指標が予想より強かったことも支えとなり一段高となる中、前日高値を超えると短期筋のストップオーダーも巻き込みながら引けにかけては111.70レベルまで水準を切り上げ高値圏での引けとなりました。

4月12日(金)
東京市場のドル円は株高の動きを受け早朝から週間高値を更新、仲値後にいったん軽い押しを挟んで更に上昇を続けました。中国経済指標が強かったことをきっかけに欧州市場ではダウ先物を中心に主要株価指数が大幅高となり112円目前でNY市場入り。NY市場では112円にあった売りオーダーもこなし、引け間際には112.09レベルの高値をつけ高値圏での引けとなりました。

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