ユーロ週報 対ドル、対円とも反転し下げやすい(4月第3週)

先週のユーロは、臨時EUサミットにおいて英国のEU離脱期限延期が合意されるかどうかが最大の注目材料でしたが、

ユーロ週報 対ドル、対円とも反転し下げやすい(4月第3週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、臨時EUサミットにおいて英国のEU離脱期限延期が合意されるかどうかが最大の注目材料でしたが、短期延期と1年延期の間を取ったかのような6か月延期という色々な意味で政治的な理由で決着したように思えます。現段階では単に問題の先送りに過ぎませんが、リスクシナリオであった合意無し離脱が無くなったことから、市場は落ち着いた動きを見せています。

ここからはEU側の離脱案修正が無い中で、英国議会が超党派でまとまることが出来るかどうかということになります。2016年6月の国民投票から既に3年近い時間が経過し、英国政治は停滞したままであることを考えると外野としては、党利党略はそろそろ妥協し、国民のためにも次のステップに進むべきだと思います。実際のところ5月23日の欧州議会選にも英国は参加ということになると、合意も期限ギリギリにまでもつれこむ可能性もあり、それまでは動きにくい状況が続きそうです。

そうした中で、トランプ大統領の対EUの関税発言、ムニューシン財務長官の対日の為替条項発言と、三極の通商協議は次のステップに向かおうとしています。為替条項の話はドル円週報にも書いた通りですが明確な円高要因ですし、EUへの関税はこれまでの反応を見る限りユーロ安要因として理解されています。
ユーロは対ドルでも対円でも下げやすい環境にあると言えるでしょう。

そして、もっと気にしてよいファンダメンタル要因として英国の景気があります。昨日の日経朝刊に詳しく記載されているので、そちらをご一読いただきたいのですが、現在の英国景気はブレグジットを懸念した在庫の積み増しによるものだという内容です。今後、英国とEUが最終合意となれば在庫を積み増す必要が無くなり、実際の状況に近づくこととなりますが、そこに目を向けると欧州同様に明確な減速に陥ることとなります。

そうなると英国の貿易の相手国として輸出入ともに圧倒的な首位であるEU圏の景気減速も強まる可能性がありますので、こちらもユーロに対する下げ圧力となりますし、ECBはそれに対して一層のハト派スタンスを見せるかもしれません。過去2回のECB理事会後のドラギ総裁の発言を見る限り、ある程度はそうしたことを織り込んでの利上げ時期後退、9月からのオペ実施といった金融政策の方向性を示しているのでしょうが、短期ではないにせよ中長期的な材料としては、なかなかユーロ買い材料が見つからないというところです。

テクニカルには、長期的には弱いものの短期的には決定打が見当たらないという動きそのものです。日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

1月以降は高値、安値とも切り下げる下降チャンネルの中での推移を続けていて、直近では4月初めから上昇の動きとなっています。また、先週のコラムで示した2017年安値と2018年安値の61.8%押し(青の水平線)も引いてありますが、同水準を明確に抜けない限り上値は重たいものの、もみあい継続という流れになりやすいというチャートです。

今後ユーロを取り囲む悪材料がどこで改めて注目されるのか、それ次第ではあるとはいえ常に下方向に抜ける可能性が高いという認識でいたほうがよさそうです。今週は先週水曜の安値圏1.1130レベルをサポートに、3月高値と4月安値の61.8%戻し(赤のターゲット)と重なる1.1350レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

今週のコラム

ユーロも売り材料、円は買い材料という割にユーロ円は強い動きを示し、先週金曜には126.77レベルの高値をつけています。テクニカルに現在の水準がどうなのかを見てみましょう。

今週のコラム

上下しながらも年初から着実に安値を切り上げる動きを示し、短期的に下げてもまた上昇トレンドに戻すという動きを繰り返しています。しかし、先週金曜のリスクオンの動きで、ちょうど3月中旬の高値圏へと戻してきていることがわかりますし、同水準は3月高値と4月安値との78.6%(61.8%の平方根)戻しの126.68(赤のターゲット)とも重なっていることがわかります。上げの動きが速かった上に、テクニカルなターゲットに戻してきたことを考えると、今の水準はいったんは上値を抑えられやすい水準であると言えるでしょう。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

4月15日(月)
25:30 フランス中銀総裁講演
**:** 日米通商協議(?16日)


4月16日(火)
**:** IMF世界経済見通し公表
17:30 英国3月失業率
18:00 ドイツ4月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏4月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏2月建設支出
22:50 オーストリア中銀総裁講演

4月17日(水)
17:00 ユーロ圏2月経常収支
17:30 英国3月CPI、PPI
18:00 ユーロ圏3月CPI改定値
18:00 ユーロ圏2月貿易収支
21:30 米国2月貿易収支
22:00 英中銀総裁講演
27:00 ベージュブック


4月18日(木)
15:00 ドイツ3月PPI
16:15 フランス4月製造業・サービス業PMI
16:30 ドイツ4月製造業・サービス業PMI
17:00 ユーロ圏4月製造業・サービス業PMI
17:30 英国3月小売売上高


4月19日(金)
**:** アジアと欧州の主要市場、米国市場休場(イースター、〜22日)

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。


先週の概況

4月8日(月)
ユーロドルは、東京市場ではドル円の下げがリードする形でユーロ買いの動きとなりました。欧州市場では英国議会における進展やEUサミットでの離脱延期といった思惑もあり、イベント前のポジション調整による買いが目立ちました。前日NY引けの1.1215レベルからほぼ一本調子で上昇し、NY朝方には高値1.1275をつけました。その後は高値圏でのもみあいを続け、引けにかけてはやや押して引けました。


4月9日(火)
ユーロドルは、ドル売りの動きに加え、臨時EUサミットを前に離脱期限延期でまとまりそうとの思惑からポンド買いに引っ張られてのユーロ買いとなりました。しかし、NY市場ではトランプ大統領がEU製品に報復関税をかけるとの発言を嫌気して一転ユーロ売りの動きとなり、東京朝方の水準に押しての引けとなりました。

4月10日(水)
ユーロドルは、ECB理事会までは欧州株高もあって買いが先行、一時1.1288レベルと前日高値を上抜けました。しかし、ドラギ総裁会見でマイナス金利見直しはまだ先のこと、景気減速懸念が強まっていること等、前回に続いてハト派な内容となったことから、ユーロは反落し1.1230レベルまで押しました。引けにかけては臨時EUサミットで英国の離脱期限延期でまとまりそうとのニュースが入ってきたことをきっかけに理事会前の水準へと戻しました。


4月11日(木)
ユーロドルは、臨時EUサミットが事前予想通りに英国離脱延期合意で終わったことから警戒が解けてのスタート。東京市場ではドル円とともにユーロ円にも実需買いが見られたことで上昇しました。しかし、海外市場に移ってからはドル円のドル高に反応し、ユーロ売りへと流れが変わり、引けにかけては1.1250まで押して安値引け。ユーロ円はドル円での買いのスピードが速かったことから、125.72レベルまで水準を切り上げ強い地合いのまま引けました。

4月12日(金)
ユーロドルは、NY市場まではリスクオンの動きからドル円とともにユーロ円でも大幅上昇。NY前場にはユーロ円が高値126.77レベルと東京前場から1円以上もの上昇となった動きにつられてユーロドルも1.1324レベルの高値をつけました。後場は全般的なドル高の動きと週末G20を控えたポジション調整も加わり1.13をやや割り込んでの引けとなりました。

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