円高再開(週報2016年4月第三週)

週末には注目を集める2つの会合(G20、産油国会議)がありましたが、結局はどちらも期待外れに終わっての週明けとなっています。

円高再開(週報2016年4月第三週)

円高再開、年初来安値を更新する週となるか

前週の主要レート(週間レンジ)

     始値    高値     安値    終値

ドル円   108.29   109.74    107.63   108.76
ユーロ円  123.51   124.00   122.60    122.73
ユーロドル 1.1405   1.1465    1.1234   1.1283
日経平均 15761.57   16928.67 15525.49  16848.03

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

4月11日(月)

東京前場は株安とともに円買いの動きとなり、一時107.63レベルとわずかに安値を更新する動きとなりましたが、その後は株の買い戻しとともに108円台を回復。海外市場では目立った材料が無い中108円を挟んでの小動きとなりました。いっぽうユーロドルは、欧州市場序盤にユーロポンドの売りからユーロが下げる場面も見られましたが、その後のユーロドルは全般的なドル売りの動きから急速に値を戻し、1.14台半ばまで水準を切り上げた後にやや押してのクローズとなりました。

4月12日(火)

ドル円は先週今週月と107円台半ばで2点安値を付けたこと、また週初は終日株価が堅調な動きとなったことも下支えとなり、108円台後半まで水準を切り上げた後にやや押しての引けとなりました。いっぽうユーロドルは、欧州市場序盤にストップオーダーと見られる買いから一時1.1465レベルまで上げたところから急反落、レンジを拡大するもちあいパターンとなっていて、どちらかに明確に抜けるまで方向感の無い流れが継続地合いとなりました。

4月13日(水)

連日のリスクオンの展開から株高、円安の動きが続きました。日経平均先物(CME)は16700円台まで上昇し、ドル円も109.41レベルの高値を付けました。東京市場では原油高に加え、中国の経済指標が強かったことからリスクオンの動きが継続しましたが、欧州市場に入りユーロドルがこれまでのもみあいを下抜けたことでドル全面高の動きとなりました。NY後場に発表されたベージュブック(米国地区連銀経済報告)も、為替市場には直接的な影響は無かったものの堅調な米国経済を示す内容となり、NYダウが大幅高、短期的には円安(ドル高)の動きを継続しやすい地合いとなっていました。

4月14日(木)

ドル円は、東京前場こそ強い日経平均株価に支えられ一時109.55レベルの高値を付けたものの、その後は109円台半ばから110円にかけてはドル売りオーダーが並んでいることもあり、じり安の展開となりました。しかし、下がったところではG20や産油国会議等のイベントを前にして買いたい向きも見られ、NY市場の指標後に108.90レベルの安値を付けた後はじり高、109円台半ばに戻してのクローズとなりました。いっぽうユーロドルは、欧州市場までは前日の流れを受けじり安、その後は1.12台半ばでの膠着のまま引けました。

4月15日(金)

東京市場では株価の上昇とともに円安に動いたものの、株価が17000円の大台を前に足踏みしたことから、為替市場も109.74レベルを高値に徐々に上値が重たい展開となりました。欧州市場に入ると原油価格と欧州株の下げを受け、週末を前にしたポジション調整からドル円はじり安となり、NY市場前には109円割れ。その後も米国経済指標は強弱ミックスしていたものの、ドル円の上値は重く122.60レベルまで水準を下げた後に安値圏でのクローズ。ユーロドルもドル円のドル安の動きから買いが入り、1.13台に乗せた後小緩んでのクローズとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

4月18日(月)
07:45 NZ1〜3月期CPI
21:30 NY連銀総裁挨拶
23:00 米国4月NAHB住宅市場指数
25:30 (ミネアポリス連銀総裁講演)

4月19日(火)
08:00 ボストン連銀総裁講演
10:30 豪中銀理事会(5日)議事録公表
17:00 ユーロ圏2月経常収支
18:00 ドイツ4月ZEW景気期待指数
18:00 ユーロ圏4月ZEW景気期待指数
21:30 米国3月住宅着工件数、建設許可件数
22:30 豪中銀総裁講演
23:35 英中銀総裁議会証言

4月20日(水)
08:50 本邦3月貿易収支
17:00 南ア3月CPI
17:30 英国3月失業率
20:00 トルコ中銀政策金利発表
23:00 米国3月中古住宅販売件数
23:30 米国週間原油在庫発表

4月21日(木)
10:30 豪州1〜3月期NAB企業信頼感指数
15:45 フランス4月企業景況感
20:45 ECB理事会結果発表
21:30 ドラギECB総裁記者会見
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国4月フィラデルフィア連銀製造業指数
21:30 米国3月景気先行指数
22:00 米国2月住宅価格指数
23:00 米国3月景気先行指数
23:00 ユーロ圏4月消費者信頼感速報値

4月22日(金)
16:00 フランス4月製造業、サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ4月製造業、サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏4月製造業、サービス業PMI速報値
22:45 米国4月MarkIt製造業PMI速報値
**:** ユーロ圏財務相会議、EU財務相会議

今週の週間見通し

週末には注目を集める2つの会合(G20、産油国会議)がありましたが、結局はどちらも期待外れに終わっての週明けとなっています。

まず、G20では最近の円高の動きに対して日米間で介入を容認する合意があるのではないか、との一部の根強い期待がありましたが、終了後の会見で米国財務長官は「円高は進んでいるが市場の動きは秩序的」と日本の介入を牽制していると取れる発言を行いました。これは、先の安倍首相の米紙とのインタビューで出た内容と基本的には同じで、後ろに控える中国を意識した発言と取ることも可能ですが、あえて円高と円に触れたことから日本の通貨当局としては、当面口先介入に頼るしかなく、早期介入の道は閉ざされたと考えられます。

先週の当コラムでも書いた通り、黒田バズーカ2の前の2014年10月安値105.22レベルを含め、テクニカルなターゲットも105〜106円台にあることから、長期的には引き続き105円台を目指す流れにあり、一段と戻りは鈍くなってくると考えられます。さらに、その前の黒田バズーカ1(2013年4月)まで遡ると、当時のドル円は92円台でした。それ以降、米国側からすれば昨年高値125.86レベルまで30円以上ものドル高を耐えてきたという認識があるでしょうから、おそらく100円の大台を割り込むような水準にならない限り介入は無い、と見ておく方が良いと考えます。

また、最近の日経新聞にも出ていましたが、内閣府の調査による全輸出企業の採算レートが103.20という調査結果があります。さすがに、黒田バズーカ1の水準まで戻してしまうと、為替だけでなく株式市場に与える影響も大きいことを考えると大台割れというのは、米国側の認識、日本側として国内産業に与える影響と株価への波及、双方から許容される水準ではないでしょうか。

次に、産油国会議ですが、事前の段階ではサウジアラビアとロシアでの増産凍結合意という話も出ていて、WTI原油先物は一時42ドル台まで値を回復していました。しかし蓋を開けてみると、制裁前の生産量に回復するまでは凍結に加わらないとイランが欠席したことから増産凍結が遠のき、既に過去最高水準の産油となっているサウジアラビアとロシアが増産しなくても需給の余剰状態には変化は無く、週初の原油価格は急落しています。

ただ、イランの言っていることももっともで、イランは制裁解除後にようやく増産体制に入ったいっぽう、サウジアラビアは過去最高の産油とイラン側からすればバランスを欠いた合意は出来ないということになります。結局のところ各国の利害関係が一致せず、6月のOPECの会合までは供給過多の状態に変化は起きないということとなりそうです。

WTI原油先物の日足チャート(期近つなぎ)をご覧ください。

             WTI原油先物の日足

             WTI原油先物の日足

テクニカルには、1月、2月に26ドル台安値でダブルボトムを付けたのと同様、今回は3月、4月の42ドル前後でダブルトップを付けた可能性があります。安値26.05から高値42.42までの38.2%押しが36.17、4月初めの押しが35.24です。当面35ドル台前半から36ドル台前半までの下げを視野に入れつつ、原油価格の下げによるリスクオフ、円高の動き、さらには双方から来る株安の動きと、これまでも見てきたような流れですが、当面はそれぞれが足を引っ張り合う展開が予想されます。

今週のドル円は、年初来安値を更新する動きを視野に入れ、106.90レベルをサポートに、108.90レベルをレジスタンスとする見通しとしておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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