今週の週間見通し
先週のドル円も株式市場に沿った動きとなり、週初月曜に日経平均とともに安値をつけ、その後は週半ばまで上昇を続け、木曜に反落して週末を前に買い戻しと週を通してみると底堅い地合いであったと言えます。ただ、株式市場よりもドル高・円安の動きとなった背景としてユーロ安の影響がありますが、それでも値幅自体は大きくなくわずか1円強の中での値動きに留まっています。
先週初の材料として、ムニューシン財務長官による日米通商協議における為替条項の発言がありましたが、単発で終わった感じでした。その後、米国財務省が議会に提出した為替報告書では日本は相変わらず監視リストに入っていること、今回は見送られたものの中国が次回4月の報告書で為替操作国と認定される可能性があること等、今後の通商協議と米国の為替政策について中間選挙を前にして何らかの発言が出てくる可能性は高そうです。
中間選挙では共和党が不利な流れを逆転させることは現状では難しそうですが、投票日が11月6日ですから今日から10月末あたりに向けて、トランプ大統領を中心に米国民にアピールするような発言が出てきてもおかしくはありません。特に米中間の交渉が暗礁に乗り上げ、いっぽうで欧州は英国とのブレグジット問題で時間を取られている状況下、対日交渉で強気の発言が出やすいと思われます。
実効為替レートで見た米ドルもかなり高い水準にあり、ムニューシン財務長官の中間選挙までは強いドル発言は封印すると思います。先週初の発言に合わせ今週はトランプ大統領が何か言うのではないかという懸念もあります。ドルインデックスや円相場をトータルで考えると、おそらく米国としては115円以上の円安に対して懸念を示す可能性が高く、7月の113円台におけるドル高牽制発言、そして直近の通商協議と絡めた為替条項の発言など、個人的には113〜115円を警戒水域と考えています。
更に、中国の株式市場や人民元については先週の羅針盤コラムでも触れましたが、一段安のリスクがあり、それが米国の株式市場にいつまた影響を及ぼすかわかりません。また長期金利も12月のFOMCに向けて高止まり傾向が続き、状況次第では債券売りへとつながる懸念は拭い去ることができません。トランプ大統領による減税を主とした景気刺激策はここまでうまく来ていますが、そのいっぽうで米国の財政赤字は増大する流れです。
貿易赤字と財政赤字という双子の赤字という問題は古くて新しいテーマで、今の株式市場や債券市場を見ていると、どうもどこかで本格的なトリプル安の動きが出ても不思議ではありません。中間選挙前は国民にアピールするための日本攻撃、選挙後はトリプル安の懸念、そして現在の実効的な為替水準自体を考えても、ここから2円の上下はあっても5円となると下(円高)しか無いのではないか、静かな動きを続けているだけに不安を感じてしまいます。
テクニカルにはどうでしょうか、日足チャートをご覧ください。
ここまでの流れを見ると、8月安値からのサポートライン(ピンク)が効いていて、10月安値も同ラインで止められました。しかし、上述の通り10月高値114.55は警戒水域のかなり高い水準に近づいたと考えられ、同水準が当面の高値となります。この高値と先週安値113.63との38.2%戻しが先週半ばの高値圏と重なっていますが、今後ドル買いが出たとしても半値戻しに当たる113.09が戻しの限界点に近いのではないかと見ています。
今週はサポートラインとこの半値戻しを基準に考え、111.90レベルをサポートに113.10レベルをレジスタンスと、引き続き112円台でのもみあい継続としますが、バイアスは常にドル安・円高にあると見ています。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
10月22日(月)
**:** NZ市場休場
10月23日(火)
15:00 ドイツ9月PPI
23:00 米国10月リッチモンド連銀製造業指数
23:00 ユーロ圏10月消費者信頼感速報値
24:20 英中銀総裁講演
27:15 (ダラス連銀総裁講演)
10月24日(水)
09:00 (カンザスシティ連銀総裁講演)
15:45 フランス10月企業景況感
16:15 フランス10月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ10月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏10月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 南ア9月CPI
22:00 米国8月住宅価格指数
22:45 米国10月製造業・サービス業PMI速報値
23:00 米国9月新築住宅販売件数
23:00 カナダ中銀政策金利発表
23:30 原油週間在庫統計
26:00 アトランタ連銀総裁講演
26:10 クリーブランド連銀総裁講演
27:00 ベージュブック
10月25日(木)
06:45 NZ9月貿易収支
15:00 ドイツ11月GFK消費者信頼感
17:00 ドイツ10月ifo企業景況感
17:00 ノルウェー中銀政策金利発表
18:30 南ア9月PPI
20:00 トルコ中銀政策金利発表
20:45 ECB理事会
21:30 ドラギECB総裁会見
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国9月耐久財受注
21:30 米国9月住宅販売保留件数
25:15 クラリダFRB副議長講演
10月26日(金)
08:30 本邦10月東京区部CPI
10:00 クリーブランド連銀総裁講演
15:45 フランス10月消費者信頼感
15:45 フランス9月PPI
21:30 米国7〜9月期GDP速報値
23:00 ドラギECB総裁講演
23:00 米国10月ミシガン大消費者信頼感確報値
10月28日(日)
**:** 欧州・英国冬時間に移行
前週の主要レート(週間レンジ)
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
前週の概況
10月15日(月)
東京市場のドル円は、弱い日経平均株価と週末のムニューシン財務長官による為替条項発言が足を引っ張る形でじりじりと円高に進みました。日経先物が夜間取引で一段安となりドル円も欧州市場序盤に111.63レベルの安値をつけましたが、その後は小動き。NY市場が引けるまで111.75を挟んで狭いレンジでのもみあいに終始しました。
10月16日(火)
ドル円は朝方の水準を安値に終日じり高の展開を辿りました。東京時間からリスクオフの巻き戻しで日経平均株価、ダウ先物ともに上昇を強める流れに沿って、ドル円も一貫して買われる動きとなり、NY市場ではダウが急落後の戻り高値を上抜けたことも重なって112.34レベルまで上伸後にほぼ高値圏での引けとなりました。
10月17日(水)
ドル円は夜間取引で上げていた日経平均の上値が重たくなる動きに沿って東京市場では上値を抑えられる動きとなりました。112円台半ばから上ではドル売りオーダーも見えていたことも重なり、NY市場前場には112.02レベルまで水準を切り下げました。しかし、ブレグジットの進展が見られないとの話がEU側から出ていることや、イタリアの予算案についてイタリアの政権内部でEUが認めない可能性について言及する等、欧州の悪材料が多かったことからユーロが大きく水準を下げ、その動きとともにドル円は東京高値を超え112.68レベルまで上昇、高値圏での引けとなりました。
10月18日(木)
ドル円は株安の動きから改めてリスクオフの円買いとなりました。東京市場ではじり安となった日経平均株価を横目で見ながら、上下しつつも円高へと舵を切りましたが、NY市場に入りダウが大幅安となったことを背景にNY後場には111円台へと入り込む動きとなりました。その後ダウがもみあいとなりドル円も112円台を回復しましたが、戻り高値が重たい動きを確認した一日となりました。
10月19日(金)
ドル円はNYダウが先物の夜間取引で前日の下げに反発する動きとなり、日経平均株価も反発上昇する動きがNY市場前場まで続きました。株価の動きに沿ってドル円もじり高の流れとなり、NYの朝方には112.65レベルまで上昇しましたが、前日高値は抜けられず、引けにかけては週末前の調整も重なって112円台半ばでのもみあいのまま引けました。
ディスクレーマー
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