ドル円 下値を模索しやすい地合いが続く(週報10月3週)

先週のドル円は、NYダウが2月以来の急落(水木の2日間に先物ベースで1600ドルを超える下げ)を演じたことを主因に、リスクオフによる円買いの動きが目立ちました。

ドル円 下値を模索しやすい地合いが続く(週報10月3週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、NYダウが2月以来の急落(水木の2日間に先物ベースで1600ドルを超える下げ)を演じたことを主因に、リスクオフによる円買いの動きが目立ちました。しかし、それでも週初の高値113.94レベルから木曜の安値111.83レベルまで2円強のレンジに留まっていて、最近のドル円の値幅の狭さを物語っている感じです。

これまでの円相場を取り囲む材料として、大きくは(1)強い株式市場、(2)日米金利差拡大、(3)日米通商協議3つを主軸に他の材料がさらに影響を与えていたという見方をしていますが、(1)については上記の通りで急落相場となったため、日経平均は9月の上げ幅を全て失い、NYダウは7月下旬からの上げを全て失う動きとなりました。秋相場は米株を中心に調整が入りやすいのですが、やや遅れて嵐がやってきた印象です。少なくとも株価を材料にしたリスクオンは材料から外れました。

次に(2)ですが、引き続き日米金利差拡大は続きますので、FX取引におけるスワップ金利では今後も増えてくるということは確かです。しかし、金利上昇は政策金利だけでなく長期金利にも及び、10年債利回りが2011年以来の水準となっていることは9日のコラムに書いた通りです。この長期債における利回り上昇は債券価格の下落になりますので、株の下げとともに、株安、債券安、ドル安の米国資産ミニトリプル安の動きと重なります。10月に入ってからは、債券価格の下落が1週間先行していました。

そして(3)は、9月こそ警戒感があったものの10月の第2回協議がセレモニー的なものに終わったため、急速に警戒感がなくなりました。しかし、トランプ政権の公約の大きな柱に不均衡是正があり、来月6日の中間選挙を前に最もアピールできるものがあるとするならば、米国と他国における通商協議で米国が成果を勝ち取ることです。この件で、市場には材料視されていないものの、週末のムニューシン財務長官に気になるものがありました。

同長官は、今後の日米通商協議において為替条項を盛り込むことを検討していると述べていますが、NAFTAでの対メキシコ協議において為替条項を付帯した際に、日米通商協議を視野に入れた動きであると言われていましたが、この時も市場は材料視しませんでした。日本側は受け入れないと言っていますが、日米間のパワーバランスを考えると米国が強いのは目に見えていますし、不均衡是正がテーマですからそれだけでも米国が主導しやすい流れです。

ここで、いま一度「為替条項」について復習しておくと、為替条項とは一言でいえば「輸出促進のための通貨安誘導を認めない」というものです。日本としては、そんなことはしていないと言うに決まっていますが、米国の論理で行くと現在の米ドルは強くなる一方(BISが算出する名目実効レートでは2002年以来のドル高値)で、このことが不均衡の大きな要因のひとつだ、ということになります。仮に為替条項がソフトな内容だとしても付帯されることになれば為替市場は敏感に反応して、協議時点よりも円安には動きにくくなります。

米国としても付帯することによる心理的な効果と、実際に通貨安に動いた場合にドル高の阻止を相手国に求めることが出来ますので、具体的な貿易品目の詰め以上にアピールしやすいという思惑がホワイトハウス内にあるのではないかと個人的には勘ぐっているところです。おそらく事務レベルでは水面下での綱引き協議が行われていると思いますが、今後どのような形で発言を強めて来るのかには注意が必要です。特に具体的にドル円に対してドル高牽制発言を行った7月の水準が113円台前半であったことを考えると、115円を超える円安は認めないと考えていると見てよいのではないかと思います。

次にテクニカルな面から日足チャートをご覧ください。

2つのターゲットが示されていますが、赤のターゲットは年初来安値と高値の38.2%押しにあたる110.76です。青のターゲットは直近の9月安値と10月高値(=年初来高値)との61.8%押しにあたる111.97と78.6%(61.8%の平方根)押しにあたる111.27です。今後はこれら3つのターゲットを視野に入れた展開になりやすいと見ていますが、先週の安値は61.8%に近く、様子を探るためにいったん止まりやすい水準でした。

しかし、戻りは弱く再び下値を探りに行きやすいということがテクニカルにも言えますので、株式市場が大きく値を戻すような動きでも無い限り、戻り売りがワークしやすいと見ています。今週は、112.75レベルをレジスタンスに、次のターゲットにあたる111.25レベルをサポートとする週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

10月15日(月)
08:01 英国10月ライトムーブ住宅価格
16:00 トルコ7月失業率
21:30 米国10月NY連銀製造業景況指数
21:30 米国9月小売売上高
23:00 米国8月企業在庫
**:** 本日より米銀決算続く

10月16日(火)
06:45 7?9月期CPI
09:30 豪中銀理事会(10月2日)議事要旨公表
10:30 中国9月CPI・PPI
15:00 ドイツ8月輸入物価指数
16:00 トルコ8月鉱工業生産
17:30 英国9月失業率
18:00 ユーロ圏8月貿易収支
18:00 ドイツ10月ZEW景況感
22:15 米国9月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国10月NAHB住宅市場指数

10月17日(水)
**:** 香港市場休場
17:30 英国9月CPI・PPI
18:00 ユーロ圏9月CPI改定値
20:00 南ア8月小売売上高
21:30 米国9月住宅着工・建設許可件数
23:30 原油週間在庫統計
25:10 ブレイナードFRB理事講演
25:30 ドイツ連銀総裁講演
27:00 FOMC(9月26日)議事録公表

10月18日(木)
08:50 本邦9月貿易統計
09:30 黒田日銀総裁挨拶
09:30 豪州9月失業率
15:00 ドイツ9月PPI
17:00 オーストリア中銀総裁講演
17:30 英国9月小売売上高
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国10月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:05 (セントルイス連銀総裁講演)
23:00 米国9月景気先行指数
25:15 クオールズFRB副議長講演
**:** EU書脳会議(?19日)

10月19日(金)
08:30 本邦9月CPI
11:00 中国7?9月期GDP
11:00 中国9月小売売上高、鉱工業生産
15:35 黒田日銀総裁挨拶
22:00 (ダラス連銀総裁講演)
23:00 米国9月中古住宅販売件数
24:30 英中銀総裁講演
25:00 アトランタ連銀総裁講演

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

10月8日(月)
週明けの月曜は東京、NY市場が休場で参加者が少ない中、リスクオフの動きが目立つ一日となりました。アジア市場午前中は小動きとなっていたものの、休み明けの中国株が大幅安となったことから株価指数が先物市場を中心に下落。欧州市場に入るとユーロ円の売りが先行、ドル円も連れ安の中で直近安値を割り込むとストップオーダーを巻き込んで一気に下げる動きを見せました。NY市場ではダウが大幅安となり前日安値を割り込むとドル円も一時112.82レベルまで水準を切り下げ、引けにかけてはダウの買い戻しとともに戻しも入っての引けとなりました。

10月9日(火)
ドル円は前日に大きく下げた後の調整相場となりました。東京市場では113円割れでは買いが見られるものの、113.30レベルからは売りオーダーが並び、海外市場でも何度か戻りを試したものの上がりきらずにNY市場入り。米国国連大使が辞任するとの報道をきっかけに対ユーロを中心としたドル売りの動きとなり、後場にはトランプ大統領がFRBの引き締め姿勢を牽制する発言も行ったことから112.87レベルの安値をつけ若干戻しての引けとなりました。

10月10日(水)
ドル円はNY市場が始まるまでは狭いレンジの中で底堅い展開を続けていました。しかし、NY市場に入りダウが大幅安となりその後引けにかけては800ドルを超える急落となったことからリスクオフの円買い、ドル円は112.26レベルと安値引けとなりました。

10月11日(木)
東京市場のドル円は、前日海外市場の流れを受け仲値すぎに一時111円台に入り込んだものの、その後はスピードが速いという警戒感と株式市場が安定した値動きとなっていたことでNY市場まではじり高の展開となりました。NYの朝方には112.53レベルまで値を回復していたもののNY株式市場が始まるとダウが続落、それに連れてリスクオフの円買いが再燃しました。後場に入り、トランプ大統領がドル高を牽制する発言をしたことも重なって111.83レベルへと日中安値を更新後にやや戻して引けました。

10月12日(金)
東京市場では底堅い株価と米金利上昇の動きに支えられドルがじり高の展開となりましたが、週末前ということもあって全般に動意薄の流れが続きました。海外市場に入ってからは株価指数が下げに転じたことに加え、ユーロが対ドル、対円で売られる動きとなったことからドル円も下げに転じ、ほぼ東京朝方の水準に押しての引けとなりました。

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