ドル円 米中貿易戦争激化でも上昇基調。(週報9月4週)

米連銀(FRB)は9月25日と26日に連邦公開市場委員会(FOMC=金融政策決定会合)を開く。

ドル円 米中貿易戦争激化でも上昇基調。(週報9月4週)

【概況】

米トランプ政権は9月18日に対中制裁関税について実施済の500億ドル規模に加えて2000憶ドル規模の中国製品への関税上積み発動を決定した。この報道を受けて9月18日午前には111.65円まで下落し、9月14日高値112.16円からは0.51円の円高ドル安となった。しかし年内の関税上積みを10%とするなど強硬的な姿勢感よりも米中協議への含みを残すものとして市場は過度の悲観をせず、初期的反応としてのドル売り円買いを消化すると上昇に転じた。9月18日夕刻に中国が対抗措置をとる旨を表明したが、これによる下落も一時的なものとして上昇基調を継続した。
9月20日夜には英国のEU離脱交渉に対する楽観的な見通しが優勢となってポンド、ユーロが上昇、ドル円もリスクオン心理優勢により上昇、また株高もドル高円安に寄与した。

NYダウは9月18日に184ドル高、19日に158.8ドル高、20日には251ドル高と大幅連騰して史上最高値を更新した。21日も86ドル高と4連騰した。ここまでは米中問題も9月末にかけての米中閣僚級ないしは次官級協議でなにがしかの進展があるが、10%程度の様子見的な上積み関税なら株式市場への深刻な打撃を心配するのは時期尚早という楽観的な受け止め方を株式市場が先導した。これに為替市場も追従し、おりからのポンド高、ユーロ高の流れがリスク選好感を強め、クロス円もリスクオンからの上昇=円安へ進み、ドル円も18日の下落を押し目として上昇基調を継続した。

21日夜には英国のEU離脱問題でメイ首相がEU案を拒否する姿勢を示したことでポンドが急落、ユーロも追従安となり、為替市場でのリスクオン心理がやや後退したためドル円も21日午後高値112.87円から下落して週を終えた。

【米中問題は冷静に消化しつつも、日米問題に注意】

9月22日、米トランプ政権は予定通りに2000憶ドル規模の追加関税を発動するとし、中国側も予想通りに対抗措置をとると宣言し、さらに米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、中国がワシントンへの通商代表団の派遣を取りやめたと報じた。
米トランプ米政権は予定通りに24日午前0時(日本時間午後1時)過ぎに2000億ドル規模の関税強化を発動、中国も対抗措置を実施した。9月24日のアジア市場では日本は休場だったが、中国通商協議団の訪米中止報道を受けてアジア通貨が下落、アジア株、豪州株、インド株等が下落した。また先週に4連騰したNYダウも今週のFOMCを控えていることも踏まえてやや楽観し過ぎとして181ドル安と5日ぶりに反落した。しかし金融市場全般としては今のところは9月18日に続き冷静な反応を継続しているようだ。

米トランプ政権は中国が対抗措置をとる場合にはさらに中国からの輸入品すべてに対して関税上積みに動くと公言してきたが、果たして公言通りに発動が決定されるのかどうか、その段階で株式市場がこれまでの楽観的なスタンスを維持できるのかどうかを注目してゆくことになるのだろう。

9月26日夜には日米首脳会談も予定されているが、24日にはトランプタワーで両首脳は会食しており、その直前には日本の対米貿易黒字削減への圧力ともとれるツイートをトランプ大統領が行っている。今のところドル円の動きでは日米通商摩擦問題と円安抑制的な圧力が高まることへの懸念はさほど見られない。

しかし米中協議が米国の思惑通りの妥協を得られずに関税強化合戦が続く中で、より成果をアピールするには影響力を行使しやすい日本に対して黒字削減や農畜産物等の輸入拡大圧力、さらには円安抑制等の要求が市場予想よりも強まるのではないかと懸念される。最近になって安倍首相は異次元緩和の出口について言及するなど従来のアベノミクス最優先的な姿勢からの変化をにおわせ始めていることも気になるところだ。今のところはかなり楽観的な本邦株式市場とクロス円もそうした情勢変化にさらされる可能性についても警戒すべきではないかと思われる。

【米FOMC、来年以降の利上げペース、終点見込みに注目】

米連銀(FRB)は9月25日と26日に連邦公開市場委員会(FOMC=金融政策決定会合)を開く。従前から年4回の利上げ姿勢が示され、今回で今年3度目の利上げが決定されることがほぼ確実視されている。利上げされれば2008年以来の2%台到達となるが、12月に今年4回目の利上げが実施される確率が上昇するのかどうか、メンバーの2019年、2020年、2021年の利上げ予想がどうなるのかに注目が集まる。今回は2021年について初めてのメンバー予想が示されるため、利上げの終点及び目標金利水準が見えるかどうかも焦点となる。
トランプ大統領は米連銀の利上げ姿勢を何度も批判してきたためにかえって政権からの独立性を保持していることをアピールすると思われるが、利上げペースの鈍化や終点を示す姿勢が出てくるようなら利上げサイクルを織り込み済としたドル安へと傾斜しやすく、逆に利上げ継続性が強く示されれば当面はドル高基調が継続しやすくなると思われる。

【ダブル天井か、ダブル天井破りかの決着が迫る】

【ダブル天井か、ダブル天井破りかの決着が迫る】

8月21日109.77円から9月21日高値112.87円までは3.10円の円安ドル高だった。7月19日高値113.15円に迫っているがまだ上抜けずにいる。このまま7月19日高値を上抜けば3月26日底からの上昇は5月21日までを一段目、7月19日までを二段目とし、8月21日からの上昇が三段上げの三段目へ発展する。しかし7月19日高値を更新できないかわずかに超えても急落してゆく場合はダブル天井で終わる可能性がある。昨年11月6日天井は12月12日高値を戻り天井としてダブル天井破り失敗から大幅下落(円高ドル安)へ転じた。このため今回も7月天井を超えない限りは同様の下落につかまる可能性が残る。

8月21日安値から9月7日へ底上げしてきたため、中勢レベルの弱気転換には9月7日安値を割り込む必要がある。9月7日安値以降は9月13日未明安値、9月18日午前安値、9月20日夜安値と安値を切り上げてきているので、この安値切り上げパターンが崩れる=9月20日安値を割り込むところからは短期的な弱気転換とし、中勢レベルの弱気転換にも注意が必要になってくると思われる。逆に9月7日からの底上げパターンが継続するうちはダブル天井破りの可能性も継続すると思われる。24日、25日朝時点では上向きの流れを継続している。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月24日朝安値112.38円を下値支持線、21日高値112.87円を上値抵抗線とみておく。
(2)9月24日安値割れに至らないうちは高値更新から113円試し、7月19日高値113.15円試しへ向かう可能性ありとみる。米中及び日米貿易戦争問題に対する株式市場及び為替市場全般の反応が9月18日以降の楽観的な受け止め方の範囲として推移すること、FOMCからのドル高基調が継続することが条件と思われる。7月19日高値を突破して上昇に弾みがつく場合は先行きで昨年11月天井114.72円試しまで上値目途が切り上がってゆく可能性も考えられる。
(3)9月24日夜安値を割り込む場合は9月20日夜安値112.04円試しとみる。9月20日安値割れに至らないうちはその後の112.50円超えから上昇再開とするが、9月20日安値割れからは9月7日からの底上げパターンが崩れるためにいったん大きめの調整安入りないしは基調転換の可能性を警戒しつつ、9月18日午前安値111.65円試し、さらに111円台前半試しへ向かう可能性ありとみる。

【当面の予定】

9/25(火)
休場 香港市場
   (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
14:00 (日) 7月 景気先行指数(CI)・改定値 (速報 103.5 )
14:35 (日) 黒田日銀総裁、発言
22:00 (米) 7月 住宅価格指数 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
22:00 (米) 7月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (6月 6.3%、予想 6.2%)
23:00 (米) 9月 リッチモンド連銀製造業景況指数 (8月 24、予想 21)
23:00 (米) 9月 消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード) (8月 133.4、予想 132.0)

9/26(水)
日米首脳会談
07:45 (NZ) 8月 貿易収支 (7月 -1.43億NZドル、予想 -9.25億NZドル)
10:00 (NZ) 9月 NBNZ企業信頼感 (8月 -50.3)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数 前月比 (7月 -1.7%、予想 0.5%)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数 [年率換算件数]  (7月 62.7万件、予想 63.0万件)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利発表 (現行 1.75-2.00%、予想 2.00-2.25%)
27:30 (米) パウエル米連銀(FRB)議長、定例記者会見

9/27(木)
06:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
15:00 (独) 10月 GFK消費者信頼感 (9月 10.5、予想 10.5)
15:35 (日) 黒田日銀総裁、全国証券大会挨拶
17:00 (欧) 欧州中銀(ECB)月報
18:00 (欧) 9月 経済信頼感指数 (8月 111.6、予想 111.2)
18:00 (欧) 9月 消費者信頼感指数 確定値 (速報 -2.9、予想 -2.9)

21:00 (独) 9月 消費者物価指数(CPI、速報値)前月比 (8月 0.1%、予想 0.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.1万件、予想 21.0万件)
21:30 (米) 4-6月期GDP、確定値 前期比年率 (改定値 4.2%、予想 4.2%)
21:30 (米) 8月 耐久財受注 前月比 (7月 -1.7%、予想 1.9%)
21:30 (米) 8月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (7月 0.2%、予想 0.4%)
23:00 (米) 8月 住宅販売保留指数 前月比 (7月 -0.7%、予想 -0.2%)
23:00 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、パネル討論会 フランクフルト
25:30 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、イベントで講演
26:05 (欧) プラートECB理事、講演 ロンドン
27:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
29:30 (米) パウエルFRB議長、上院関連イベント発言

9/28(金)
07:00 (加) ポロッツ・カナダ中銀総裁、講演
07:45 (NZ) 8月 住宅建設許可件数 前月比 (7月 -10.3%)
08:30 (日) 8月 失業率 (7月 2.5%、予想 2.5%)
08:30 (日) 9月 東京都区部消費者物価コア指数 前年同月比 (8月 0.9%、予想 0.9%)
08:50 (日) 8月 鉱工業生産 速報値 前月比 (7月 -0.2%、予想 1.5%)
08:50 (日) 8月 小売業販売額  前年同月比 (7月 1.5%、予想 2.1%)
10:45 (中) 9月 財新製造業PMI (8月 50.6、予想 50.5)
14:00 (日) 8月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (7月 -0.7%、予想 0.3%)
16:55 (独) 9月 失業率 (8月 5.2%、予想 5.2%)
17:30 (英) 4-6月期経常収支 (前期 -177億ポンド、予想 -194億ポンド)
17:30 (英) 4-6月期GDP、改定値 前期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
17:30 (英) 4-6月期GDP、改定値 前年同期比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
18:00 (欧) 9月 消費者物価指数(HICP)速報値 前年同月比 (8月 2.0%、予想 2.1%)

21:30 (米) 8月 個人消費 前月比 (7月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 個人所得 前月比 (7月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 PCEコア・デフレーター 前月比 (7月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
22:20 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
22:45 (米) 9月 シカゴPMI (8月 63.6、予想 62.0)
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報 (速報 100.8、予想 100.5)
29:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る