ダブルトップに終わるかブレイクへ向かうか(9月第3週)

米国と中国は双方が500億ドル規模の輸入品への関税強化をすでに発動してきた。

ダブルトップに終わるかブレイクへ向かうか(9月第3週)

【概況】

8月21日安値109.77円から反発した後は111円を挟んだ往来相場が続き、8月29日深夜高値111.82円、9月5日高値111.75円と高値が切り下がり、8月21日安値110.68円、9月7日安値110.38円と安値も切り下がっていた。
9月7日の米雇用統計が強めの数字だったことから切り返して9月12日未明には111.64円まで上昇したが、高値切り下がりラインが抵抗となり、米生産者物価伸び率の鈍化や米中通商協議進展期待からドル高が緩んで13日未明には111.10円まで下げた。
9月13日には米中協議への期待感を背景に株高が進んだことでドル円も持ち直していたが、13日深夜にはトランプ大統領が対中強硬姿勢を堅持していると報じられたことでドル高感がさらに強まって上昇、8月29日高値からの高値切り下がりラインを突破して112円に迫った。14日には112円に到達、さらに14日深夜には112.16円までドル高円安が進んだ。

9月14日夜はトランプ大統領が2000億ドル規模の対中国制裁関税の発動を指示したとのブルームバーグ社報道等がきっかけとなりドルストレートでのドル高が進んだ。ドル円にとってはリスクオン心理後退による円高圧力もかかったがドル高が勝ったために14日深夜高値112.16円へ上昇した。
9月17日は日本市場が祝日だったために値動きも緩慢だったが、14日深夜高値越えには至らず、深夜以降は米国の対中関税が17日か18日には発動される見込みが強まったとしてややリスクオフ的な円高が勝る状況で18日早朝は111.70円台後半まで押されている。

【米国の対中追加制裁関税、間もなく発動か】

米国と中国は双方が500億ドル規模の輸入品への関税強化をすでに発動してきた。さらにトランプ政権は2000億ドル規模の中国製品への関税拡大を指示し、その影響に関する公聴会や意見公募を行ってきたが、9月6日までに意見公募が終了したために早々に発動されるのではないかと懸念してきた。
しかし9月7日以降に新たな動きが見られない中、WSJ紙電子版が9月12日、トランプ米政権が中国との貿易摩擦緩和に向けた閣僚協議の再開を打診したと報じた。報道ではムニューシン財務長官等の米国側交渉団が中国の劉鶴副首相に今後数週間以内の協議再開を提案したとされた。これにより市場は再び楽観ムードを取り戻した。
WSJ紙は13日にもが「トランプ政権側が中国との交渉で難航し、圧力を受けている」旨を報道したが、これに対してトランプ大統領が13日深夜、「ウォール紙は間違っている。米国側は中国側と合意するための圧力にはさらされていない。中国側が米国側と合意するための圧力にさらされている」とツイートしたことで市場の楽観ムードに水が差された。

米ブルームバーグは9月14日に「トランプ米大統領が中国の知的財産権侵害に対抗して2000億ドル相当の中国製品に関税を上乗せする追加制裁の発動を指示した」と報じた。この報道では具体的な発動時期には言及がなかったが、9月6日に終了した意見公募等の集計や発動条件の見直し作業等が遅れているためにまだ発動されていないとした。

トランプ大統領は8月末時点で「9月6日の意見公募終了後に速やかに発動する」と述べていたが、9月13日の米政権内協議では発動時期の決定に至らなかったという。

米中問題への一喜一憂が続く中、9月17日夜には17日か18日に米国による対中2000億ドル規模関税が発動される見込みと複数の報道があった。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は17日、NYの講演で追加関税を課す新たな制裁措置について「間もなく発表される」との見通しとし、「トランプ大統領は中国との貿易協議に対して不満を持っている」と述べた。また「中国が真剣で本質的な協議を行う用意があるなら米国はいつでも協議に応じる」とし、「協議は関税を引き下げ、非関税障壁を撤廃し、世界で最も競争力のある我々が中国にモノとサービスを輸出できるものでなければならない」とした。

トランプ大統領は17日に記者団に対して17日のマーケット終了後に関税発動について公表すると述べたとロイター通信社が報じている。これらに対して中国側は協議再開に応じない可能性を示唆するなどしている。

日本時間18日朝7時時点ではまだ関税発動はなされていない。(編集部注:その後18日午前7:30頃に24日からの発動を米大統領が宣言)米中双方は9月27日から28日にかけて閣僚級協議を開催するため、その事前協議として次官級レベルの調整を9月20日前後に行う予定となっているようだ。

6月序盤までに米中閣僚級協議が3回行われ、合意形成への動きがみられたがトランプ大統領がその流れを一蹴したために6月15日から人民元が暴落した。
8月16日に次官級協議開催が報じられて市場はいったん楽観を取り戻したが8月23日には次官級協議の最中に既定の500億ドル規模関税のうちの未実施分160億ドルへの発動が決定され、次官級協議も進展が見られずに終了した。

【各種楽観姿勢が継続】

貿易戦争問題の混迷や新興国通貨安不安等を抱えつつも、米国株式市場は貿易戦争問題は米国に不利な展開にはなっていないとしてて楽観優勢の展開を継続している。新興国通貨安も8月のトルコリラ暴落時にはパニック的な状況も見られ、南アランドやインドルピーの下落も9月序盤まで続いたが、ひとまず一服している。
米国の株高基調が継続し、日経平均も大崩れせずに持ち直している中にあっては、今のところはドル円も全般的な楽観ムードに乗って8月21日以降の上昇を継続している印象だ。
株高基調の継続感は株と債券の関係性では米国債売りとなり米10年債利回りが14日には一時3%を超えるところまで上昇しており、日米長期金利差面でもドル高円安に寄与する状況がみられる。9月25日から26日にはFOMCも控えているが、トランプ大統領が利上げ批判を繰り返しても9月会合での利上げはほぼ確実視されており、当面は四半期毎の緩やかな利上げ姿勢を維持しやすく8月後半からの米長期金利上昇基調も継続しやすいと思われる。

【日足チャートの逆三尊とダブルトップ】

【日足チャートの逆三尊とダブルトップ】

8月21日へ下落した時点では3月26日大底以降の安値を結んだ支持線割れにより中勢レベルの円高ドル安期に入った可能性が高まったが、その後の反騰により8月21日安値を押し目として3月底からの上昇基調を継続する可能性が残った。8月21日安値を頭とし、7月26日安値と9月7日安値を両肩とした逆三尊型を形成しており、8月29日高値を上抜いたために8月21日以降は二段上げ型に伸びてきている。
しかし昨年11月6日天井の後に12月12日へ戻したものの高値更新へ進めずに1月から円高ドル安期に陥ったように、今回も7月高値に迫っても高値更新できずに失速すれば、昨年11月天井と12月高値との関係性の繰り返しに終わる可能性がある。
米中貿易戦争問題、新興国通貨安問題、トランプ政権の各種動向、米国による対日赤字削減要求の度合い等によってはドル高円安基調をさらに発展させる可能性も、8月21日からの上昇基調が一挙に崩れる可能性も併せ持つ状況にある。相変わらずトランプ大統領の呟き一つで相場も大きく動きかねない状況も続く。

以上を踏まえ、当面の中勢ポイントを示す。

(1)9月7日安値から9月13日未明安値へ底上げし、高値を切り上げて二段上昇となっている。この底上げ型を維持するうちはさらに高値切り上げへ進む可能性も継続しやすい。このため、13日未明安値111.10円を割り込まないうちは9月7日からの上昇基調継続性ありとし、戻り高値更新なら112.50円、さらに7月19日高値113.15円へ迫る上昇へ発展する可能性ありとみる。その場合、7月19日高値とのダブル天井形成から反落しやすいとみるが、仮に7月天井突破となれば3月底からの上昇が三段上げへ発展し、上値目途は昨年11月天井114.72円、さらに115円を目指す可能性も出てくるかもしれない。

(2)9月13日未明安値を割り込む場合は底上げ型が崩れるために上昇継続性はいったん仕切り直しとし、9月7日安値試しへ向かうとみる。9月7日安値割れ回避なら上昇基調の再構築へ進む可能性があるが、9月7日安値を割り込む場合は8月21日安値からの上昇トレンドが崩れるため、7月19日高値に対する戻り天井形成による下落期入り=円高ドル安期の本格化が懸念され始めると思う。その際は8月21日安値試し、底割れからは7月19日天井からの下落二段目入りとして今年1月、2月の円高ドル安期並みの下落に入る可能性が考えられえる。(了)<7:10執筆>

【当面の主な予定】

9/18(火)
韓国大統領、北朝鮮訪問
   (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
10:30 (豪) 4-6月期 四半期住宅価格指数 前期比 (前期 -0.7%、予想 -0.7%)
10:30 (豪) 4-6月期 四半期住宅価格指数 前年同期比 (前期 2.0%、予想 -0.7%)
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
16:15 (欧) ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、発言
23:00 (米) 9月 NAHB住宅市場指数 (8月 67、予想 66)

9/19(水)
韓国大統領、北朝鮮訪問、平壌で南北首脳会談
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、終了後政策金利発表 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
07:45 (NZ) 4-6月期 四半期経常収支 (前期 1.82億NZドル、予想 -13.15億NZドル)
08:50 (日) 8月 貿易統計(通関ベース) (7月 -2312億円、予想 -4832億円)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見

17:00 (欧) 7月 経常収支 (6月 235億ユーロ)
17:30 (英) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.0%、予想 0.5%)
17:30 (英) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 2.5%、予想 2.4%)
17:30 (英) 8月 小売物価指数 前月比 (7月 0.1%、予想 0.6%)
17:30 (英) 8月 小売物価指数 前年同月比 (7月 3.2%、予想 3.2%)
17:30 (英) 8月 生産者物価コア指数 前年同月比 (7月 2.2%、予想 2.1%)
21:30 (米) 4-6月期 四半期経常収支 (前期 -1241億ドル、予想 -1037億ドル)
21:30 (米) 8月 住宅着工件数 [年率換算件数] (7月 116.8万件、予想 124.0万件)
21:30 (米) 8月 建設許可件数 [年率換算件数] (7月 131.1万件、予想 130.8万件)
22:00 (欧) ドラギECB総裁、講演(ベルリン)

9/20(木)
韓国大統領、北朝鮮訪問、平壌で南北首脳会談
自民党総裁選
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行 政策金利 (現行 6.50%、予想 6.50%)
07:45 (NZ) 4-6月期 四半期GDP 前期比 (前期 0.5%、予想 0.8%)
07:45 (NZ) 4-6月期 四半期GDP 前年同期比 (前期 2.7%、予想 2.5%)
16:30 (ス) スイス国立銀行 3カ月物銀行間取引金利誘導目標中心値 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
17:30 (英) 8月 小売売上高指数 前月比 (7月 0.7%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 20.4万件、予想 21.0万件)
21:30 (米) 9月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 (8月 11.9、予想 16.0)
23:00 (欧) 9月 消費者信頼感 速報値 (8月 -1.9、予想 -2.0)
23:00 (米) 8月 景気先行指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.5%)
23:00 (米) 8月 中古住宅販売件数 [年率換算件数]  (7月 534万件、予想 538万件)
26:20 (欧) プラートECB専務理事、講演[NY]

9/21(金)
08:30 (日) 8月 全国消費者物価指数 前年同月比 (7月 0.9%、予想 1.1%)
08:30 (日) 8月 全国消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 0.8%、予想 0.9%)
13:30 (日) 7月 全産業活動指数 前月比 (6月 -0.8%、予想 0.1%)
16:30 (独) 9月 製造業PMI、速報値 (8月 55.9、予想 55.7)
16:30 (独) 9月 サービス業PMI、速報値 (8月 55.0、予想 55.0)
17:00 (欧) 9月 製造業PMI、速報値 (8月 54.6、予想 54.5)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI、速報値 (8月 54.4、予想 54.4)

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