ドル円日米通商協議を前に反転リスク大(週報9月第3週)

先週のドル円は、週を通して振り返ってみると着実に安値高値とも切り上げる上昇トレンドを続けました。

ドル円日米通商協議を前に反転リスク大(週報9月第3週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、週を通して振り返ってみると着実に安値高値とも切り上げる上昇トレンドを続けました。先週時点では円高見通しを立てていましたので、思い切り外した感がありますが、現状の市場を取り囲む環境には何ら変化は無く中長期的に円高リスクが残っているという考え方自体には変化がありません。ただ短期的には市場参加者の多くと見る材料が異なっていたと考えています。

市場は常に正しいと言わざるを得ませんので、何を見誤ったかを分析することが先週のドル高・円安の理由となります。まず、2週前に発表された雇用統計は時給を中心として非常に強い結果でしたが、これでもって9月26日のFOMCにおける利上げが確定、日米金利差拡大からドルを買いやすくなったという考え方です。もうひとつは株高です。この株高も正直なところ材料を考えると個人的には疑問を感じる部分がありますが、株高によるリスクオン、結局はこの2つがドル買いの動きに繋がったという、ある意味単純な動きと言えます。

しかし、6月FOMCで年内4回の利上げ見通しが示され、少なくとも9月利上げはほぼ確実視されていますし、逆に最近の米国発の貿易摩擦激化による中国の景気後退懸念や更には米国への影響を考えると、2019年を中心として今後の利上げ見通しは後退する可能性は十分にあります。逆にFOMC前に警戒感が高まるのではないか、というのが個人的な見解です。

また株価についても、21日には第2回日米通商協議が予定されていて、これまでのトランプ大統領の発言を見ている限り、日本に求めてくる内容はTPP以上のものを求めて来るでしょうし、直近でのNAFTAの協議を見ていると日本に対して為替条項を盛り込むよう要請してくる可能性もあります。特に日米間の主要な不均衡となっている自動車分野の協議では、展開次第では高関税がかけられるリスクが高く、安心して株価上昇を見ていられる流れにあるとは思えません。

この日米通商協議において議論される自動車問題について、日経新聞日曜版にも具体的な数字とともに解説がなされていましたので一部を紹介します。日本から対米への自動車輸出は174万台、NAFTA経由での米国への輸出が146万台と合わせて320万台にも達します。日本からの自動車輸出が米国の対日赤字の4割程度となっていて仮に自動車に対して高関税がかけられた場合もっとも日本への影響が大きいとIMFは分析しています。

さて11月8日には米国では中間選挙があり、その半月ほど前の10月中下旬には明確な実績を上げたいと考えるトランプ大統領がいます。そのことを考えると、手っ取り早いのは日本に対して自動車の高関税をちらつかせながら牛肉や農産物の輸入を増加させるなど、日本としては飲まざるを得ない項目を大量に見せて来ることは確実です。トランプ大統領も「日本にいくら払うべきかを言えば良好な関係はすぐ終わる」とWSJ紙に述べています。

今ではないにせよ、いつ日米間の貿易摩擦が円高に繋がってもおかしくない状況ですし、今週末には第2回目の協議が行われることを考えると今の材料は、それしか無いのではないかそのように考えていることが、先週は市場参加者と私との考え方が乖離した最大の理由だと思います。

また今週は日銀会合がありますが、安倍首相が出口戦略に触れたと考えられる発言を行っています。今回の会合で仮に大規模緩和の調整につながるようなものが出てきた場合、それも円高材料になると見ています。


それでは、テクニカルな観点からチャートも見てみます。
テクニカルには7月高値113.18が中期的なドル高値となっていて、短期的には8月の戻り高値111.83を上抜けたことで先週金曜の112円台もしくはもう少しだけ上値を延ばす可能性はあるものの、そろそろ高値に近い水準にあるのが現状です。7日安値から12日高値までの上げ、同日の押しを3点としたN波動を考えると78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションが112.07、そして100%エクスパンション(青のターゲット)が112.34となります。この水準は8月安値を起点としたN波動における100%エクスパンション(赤のターゲット)とも重なります。

個人的にはこの112円台前半を上昇トレンドの限界点と考えつつ、下げに転じた場合でもまだ一気には下げきれず先週安値圏の110円台半ばというあたりが目安になってくると考えています。今週は週初が高値圏、その後日銀会合や日米通商交渉を材料に上値を抑えられやすい展開を考え、112円台前半をレジスタンスに110円台半ばをサポートとする週を見ておきたいと思います。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

9月17日(月)
**:** 東京市場休場
16:00 トルコ6月失業率、7月鉱工業生産
18:00 ユーロ圏8月CPI
21:30 米国9月NY連銀製造業景況指数

9月18日(火)
**:** 日銀会合(〜19日)
10:30 豪中銀理事会(4日)議事要旨公表
10:30 豪州4〜6月期住宅価格指数
16:15 ドラギECB総裁講演
23:00 米国9月NAHB住宅市場指数

9月19日(水)
07:45 NZ4〜6月期経常収支
08:50 本邦8月貿易収支
**:** 日銀会合結果公表
15:30 黒田日銀総裁会見
17:00 南ア8月CPI
17:00 ユーロ圏7月経常収支
17:30 英国8月CPI、PPI
21:30 米国4〜6月期経常収支
21:30 米国8月住宅着工・建築許可件数
22:00 ドラギECB総裁講演
23:30 原油週間在庫統計
**:** ブラジル中銀政策金利発表

9月20日(木)
07:45 NZ4〜6月期GDP
**:** 本邦自民党総裁選投開票
16:30 スイス中銀政策金利発表
17:30 英国8月小売売上高
**:** 南ア政策金利発表
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国9月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
23:00 米国8月景気先行指数
23:00 米国8月中古住宅販売件数
23:00 ユーロ圏9月消費者信頼感速報値
**:** EU首脳会合

9月21日(金)
08:30 本邦8月CPI
15:45 フランス4〜6月期GDP確報値
16:15 フランス9月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ9月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏9月製造業・サービス業PMI速報値
22:45 米国9月製造業・サービス業PMI速報値
**:** 第2回日米通商協議(予定)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値  高値  安値   終値

ドル円   110.92 112.17 110.85 112.06
ユーロ円  128.23 131.11 127.87 130.23
ユーロドル 1.1561 1.1722 1.1526 1.1622
日経平均 22253.65 23105.28 22249.61 23094.67

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

9月10日(月)
ドル円は朝方こそドル売りが先行したものの110.85レベルで下げ止まり東京市場では111円挟みの小動きに終始しました。欧州市場以降は大きく買い戻されたユーロ円の動きに沿ってじり高となりましたが、ユーロドルの上昇がドルの上値を抑えることにもなりドル円は狭い値幅のまま一日を終えました。

9月11日(火)
ドル円は終日株式相場を横目で見ながらリスクオンの動きが続きました。東京市場前場から上昇を強めた日経平均とともにドル円は欧州市場序盤には売りオーダーもこなしながら111.57レベルまで水準を切り上げ、その後225先物での調整売りと買い戻しの動きから、多少の押しを挟みながらもNY後場には111.64レベルまで水準を切り上げ、高値圏での引けとなりました。

9月12日(水)
ドル円は朝方に高値をつけて以降は終日じり安の展開を辿りました。東京市場では2回目の日米通商協議が9月21日を軸に進んでいるとのヘッドラインをきっかけに、前日に111.50より上の売りオーダーをこなして上げてきたこともあって、ポジション調整が中心となった様子でした。その後も上値の重たい地合いの中、米国PPIが弱かったことからドル売りの動きとなり111.11レベルまで水準を下げた後に若干戻しての引けとなりました。

9月13日(木)
ドル円は日経平均が大幅高で始まった動きを受けて前場からリスクオンの動きが強まりました。その後もじり高の動きを続け一連の中銀会合を111.50水準で迎えることとなりました。英中銀MPC、ECB理事会以上にトルコ中銀の政策金利の上げ幅が注目されていましたが、4?5%の利上げ思惑に対して24%へと6.25%の利上げが行われたことでトルコリラを中心に新興国通貨全般での買いもリスクオンの動きにつながりました。NY市場では序盤に発表されたCPIがPPIに続いて弱かったことから一時的に下押しする場面も見られましたが、米中通商協議が再開する可能性からダウが大幅高となり、ドル円も112.00ワンタッチの後高値圏での引けとなりました。

9月14日(金)
東京市場のドル円は安倍首相が日銀の大規模緩和に対して修正を求めているとも取れる発言をきっかけに朝方の112円台から欧州市場序盤にはユーロドルの買いが入ったことも重なって111.75レベルまで円高の動きとなりました。しかし、その後は株式市場が堅調な動きを続けていること、ユーロドルが大きく下げる動きにつれて112円台前半を回復して引けました。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る