今週の週間見通し
先週のドル円は、週初こそトランプ大統領が中国と欧州の為替レートに対して苦言を呈したことをきっかけに、翌火曜にはドル円が一時110円の大台を割り込み109.78レベルまで下押しする動きを見せましたが、110円割れには買いのオーダーも見られ大台割れの滞空時間は短いものに終わりました。その後は株高が引っ張る形でドル円も上昇、リスクオンの動きに週初売りで入った短期筋もポジションを切らされ、金曜には111.49レベルまで上昇する動きとなりました。
大きな流れとしては、トランプ発言で110円以下のオーダーを吸収してのドル売りポジションがその後の動きで切らされた格好で、注目度は低かったもののジャクソンホールまでは底堅い展開が続きました。ジャクソンホールではパウエルFRB議長をはじめ地区連銀総裁もハト派寄りの発言を行い、年内2回の利上げでいったん米国の引き締めは終了するのではないかとの思惑も出ました。
そうなるとFRBの6月時点の金利見通しが9月FOMCで下方修正されるかどうかが最大の注目材料となります。
もっとも弱気な予想を考えるならば、年内の利上げも2回から1回へという見方もできます。急な変化と捉えることも出来ますが、年内3回が4回に変わったのは6月のFOMCで、その後の貿易摩擦や新興国の混乱等を考えると元の3回に戻すという考えは、可能性が低そうなもののあり得ることです。
また2019年の利上げ見通しは3回、2020年が1回というのが6月時点の見通しです。
つまり、2020年末までにあと合計で6回の利上げというのが6月時点の見通しでしたが、この合計の回数が減ってくるようであれば、今回のジャクソンホールで見せたハト派寄りの発言は、FOMCにおける変化の前触れと見ることが出来そうです。
9月26日のFOMCまではまだ時間もありますし、関係者の発言が禁止されるブラックアウトも18日からですから、まだしばらくは講演等での発言に要注目と言えるでしょう。
他の動きとしては、トルコが一週間全休となったことから、トルコリラの流動性は低下したものの特に悪材料が出なかったこともあって、新興国通貨絡みの動きも材料とはなりませんでした。
110円割れは買いというイメージが強まりましたが、111円台半ばより上も積極的に買う流れでは無いという地合いの中で、テクニカルな状況がどうかを見てみます。
下記の日足チャートをご覧ください。
テクニカルには7月高値の113.18は大きなドルの高値をつけたと考えていますが、先週の109.78もそう簡単には下抜けが出来るとは思えない値動きとなっています。つまり、これら2つのレートに挟まれた現時点で現状はどうなっているかと考えることが妥当と思われます。
そうすると、まず金曜戻り高値はこれら2つのレートのちょうど半値111.48で止められていることがわかり、週明けの初動としては円高方向に動きやすく、その値幅がどの程度になるかを考えると動きが見えてきそうです。ピンクのターゲットは先週のレンジに対する下押しの目途ですが、61.8%押しが110.43、78.6%(61.8%の平方根)押しが110.14となっています。110円台前半が下押しの目途と言えそうです。
いっぽうで上値ですが、こちらは7月高値と8月安値の半値戻しの上、61.8%戻しが111.88(青のターゲット)となっていて、8月初旬の高値をやや下回る水準に位置しています。111.50から上ではまだドル売りオーダーが残っていると考えると112円には到達しないという見方で良さそうです。
全体としては今週はもみあい、110.25レベルをサポートに111.75レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
ドル円日足チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
8月27日(月)
**:** LDN市場休場
17:00 ドイツ8月ifo企業景況感
8月28日(火)
15:45 フランス8月消費者信頼感
20:00 プラートECB理事講演
22:00 米国6月ケースシラー住宅価格指数
23:00 米国8月リッチモンド連銀製造業指数
8月29日(水)
15:00 ドイツ9月GFK消費者信頼感
15:45 フランス4〜6月期GDP改定値
16:00 トルコ7月貿易収支
21:30 米国4〜6月期GDP改定値
23:00 米国7月住宅販売保留件数指数
23:30 原油週間在庫統計
8月30日(木)
**:** トルコ休場
10:00 NZ8月企業信頼感
10:30 豪州7月住宅建設許可件数
16:55 ドイツ8月失業率
18:00 ユーロ圏8月消費者信頼感確報値
18:30 南ア7月PPI
21:00 ドイツ8月CPI速報値
21:30 米国7月個人所得・消費支出
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 カナダ4〜6月期GDP
8月31日(金)
08:01 英国8月GFK消費者信頼感
08:30 本邦7月失業率・有効求人倍率
08:30 本邦8月東京区部CPI
10:00 中国8月製造業PMI
15:45 フランス8月CPI
18:00 ユーロ圏8月CPI速報値
18:00 ユーロ圏7月失業率
21:00 南ア7月貿易収支
22:45 米国8月シカゴ購買部協会景気指数
23:00 米国8月ミシガン大消費者信頼感確報値
26:00 デギンドスECB副総裁講演
前週の主要レート(週間レンジ)
表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
前週の概況
8月20日(月)
東京市場から欧州市場までのドル円は底堅いものの値幅は狭く動きにくい週初のスタートとなりました。基本的にはユーロドルの動きがリードする流れとなり、ユーロが安値圏から反転上昇する動きとともにドル円もじり安の動きへと転じました。その後、NY市場に入りトランプ大統領がパウエルFRB議長の引き締め政策を批判したり、中国だけでなく欧州も為替操作していると述べ最近のドル高をけん制する発言を行ったりしたことからドル安の動きが加速、引けにかけては110円の大台目前まで水準を下げて安値圏での引けとなりました。
8月21日(火)
ドル売りが先行してのスタートを切りました。ドル円は110円の大台を割り込み仲値すぎには109.78レベルの安値をつけましたが、109円台半ばでは買いが出て来たことに加え、株式市場でもリスクオフの動きが早々に収まり反転上昇の動きとなったことから、大台割れの滞空時間は短いものに終わりました。その後はNYの昼まで買い戻しが続きロス商務長官による関税調査の遅れについての発言も手伝って110.55レベルの日中高値をつけました。しかし引けにかけてはユーロ上昇の動きとともに110円台前半に押して引けました。
8月22日(水)
東京市場では早朝にNY終値レベルから110円の大台間近まで下押しする動きも見られましたが、堅調な株価の動きを見ながら110.50レベルへと水準を切り上げ後場はもみあいのまま海外市場入りとなりました。トランプ大統領の弁護士がロシア疑惑に関して指示を受けたとの証言を行ったことから下押しする場面も見られましたが、FOMC議事録の発表を控え下げは限定的なものとなりました。その後は225先物が夜間取引で一段高となったこともあり、ドル円は日中高値を110.62レベルへと切り上げましたが、FOMC議事録は想定内の内容であったものの貿易摩擦やション公国に対する懸念にも言及されていたため、やや押しての引けとなりました。
8月23日(木)
東京市場のドル円は仲値に向けて実需筋のドル買いが出たことに加え、豪首相が辞任する可能性とのニュースに豪ドル売りが全般的なドル買いの動きとなりました。東京後場からNY市場までドル円は110円台後半でもみあいを続けていましたが、NY市場に入ってからも実需筋と思われるドル買いが出て、ストップオーダーを巻き込みながら111.32レベルまで上伸後に高値圏で引けました。
8月24日(金)
東京市場のドル円は強い株価とともにリスクオンの動きが先行し、昼過ぎには111.49レベルの高値をつけましたがそこまで。これまでも50銭刻みで大きめのオーダーが入っていましたが111.50より上にはドル売りオーダーが並んでいたことから、その後は株価は上昇を続けたもののドル円は高値圏でのもみあいとなりました。NY市場に入りジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の講演が、インフレの加熱リスクは無いと述べたことから、来年以降の利上げ思惑が後退しドル売りの動きに。週末前のポジション調整も重なって111.10レベルの安値をつけたあと、やや戻して引けました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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