今週の週間見通し
先週のドル円は、動意薄で早くも夏枯れ相場の様相を呈していました。110円台前半の買いと111円台前半の売りに挟まれ、一週間のレンジもわずか86銭と1円にも満たない狭いレンジとなりました。世界中を巻き込んでのトランプ大統領による貿易戦争は、まず対中国での関税が発動されましたが、予定されていたイベントということもあり影響は限定的でした。
しかし、先週のFX羅針盤コラムで書いたとおり、中国を代表する株価指数である上海総合株価指数は2015年のチャイナ・ショック後の安値に迫る動きを続けていて、コラム執筆後も水準を下げ、先週金曜には2691.02と2016年安値2638.30まで50ポイント強の水準にまで下げています。中国では株安、人民元安とどうも他の新興国通貨と環境は異なっていても似たような状況になっていて、今後の貿易摩擦拡大の動き次第では米国による中国への通商攻撃が、世界的な景気停滞へと波及していくリスクにも考えを巡らせる必要があるでしょう。
それ以外には米国雇用統計がやや目立った材料ではあったものの、現在の完全雇用に近い環境化では単月の悪化程度でFRBの金融政策に与える影響はほとんど無いと言えますし、先月利上げを行ったばかりで、先週の議事録からも次の利上げ(9月が濃厚)に向けて、いまや雇用統計は参考程度という状況になってきていると考えられます。いっぽうで、常に予測できないのが外部要因で、FRBが最初に利上げを行う時期がちょうど2015年のチャイナ・ショックと同時期でした。9月に向け米中間の貿易戦争の行方と中国株の動きには引き続き注視したいところです。
さて今週ですが米国のドル材料も日本の円材料もイベント面では乏しく、ユーロドルや株式といった他の市場からの影響でしか動かない一週間となりそうです。そうなると先週のレンジを大きく抜けてくるも難しそうですし、テクニカルにもはっきりとはしないものの現在の立ち位置を日足チャートで見てみましょう。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
こちらも先週のチャートとほとんど変化が無く、大きくは水色の平行線で示した上昇チャンネルの中での動きであり。2015年の125円台から延びてくるレジスタンスライン(ピンク)が大きなレジスタンスとして現在は111円台半ばを緩やかに下降中です。また先週の少ない値動きから、6月26日安値109.37と先週高値111.14とのフィボナッチ・リトレースメントも引いてあります。この61.8%リトレースメントにあたる110.04はもみ合いが続くとすれば下値のターゲットとなりそうですし、上値は5月高値と先週高値を結んだ緩やかなレジスタンスライン(灰緑)と見ることができ、同線は111円をわずかに上回った水準にあります。
テクニカルにも煮詰まってきていますので、予想を大きく外して動きが出てくるまでは基本的にもみ合い前提で考えるべきと思います。今週は大台110.00レベルをサポートに、111.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきますが、貿易摩擦激化による他市場の動きだけは見ておくようにしましょう。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
7月9日(月)
08:50 本邦5月国際収支(貿易収支)
09:30 黒田日銀総裁挨拶
14:45 スイス6月失業率
15:00 ドイツ5月貿易収支
16:50 英中銀副総裁講演
20:00 オーストリア中銀総裁講演
22:00 ドラギECB総裁講演
7月10日(火)
10:30 中国6月CPI・PPI
10:30 豪州6月NAB企業景況感
15:45 フランス5月鉱工業生産
17:30 英国5月鉱工業生産、貿易収支
18:00 ドイツ7月ZEW景況感指数
18:00 ユーロ圏7月ZEW景況感指数
7月11日(水)
16:00 ドラギECB総裁講演
21:30 米国6月PPI
23:00 米国5月卸売売上高・在庫
23:00 カナダ中銀政策金利発表
23:30 週間原油在庫
24:35 英中銀総裁講演
29:30 NY連銀総裁講演
7月12日(木)
15:00 ドイツ6月CPI改定値
15:45 フランス6月CPI改定値
18:00 ユーロ圏5月鉱工業生産
21:30 米国6月CPI
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 (ミネアポリス連銀総裁講演)
25:15 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
7月13日(金)
**:** 中国6月貿易収支
20:00 英中銀副総裁講演
21:30 米国6月輸出入物価指数
23:00 米国7月ミシガン大消費者信頼感速報値
**:** 本日から4〜6月期米銀決算発表続く
前週の主要レート(週間レンジ)
始値 高値 安値 終値
ドル円 110.74 111.14 110.28 110.48
ユーロ円 129.32 129.96 128.42 129.72
ユーロドル 1.1678 1.1768 1.1591 1.1743
日経平均 22233.80 22312.25 21462.95 21788.14
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
前週の概況
7月2日(月)
月初のドル円は実需買いに引っ張られて買いが先行、昼前には111.06レベルまで高値を切り上げました。しかし、中国株の下げが日経平均に波及し日経平均も大きく下げる動きとともに前週末の引け水準へと押しての海外市場入り。中国株は2016年2月以来の安値へと沈み込み日経平均先物は夜間取引で続落しましたが、下げ止まる動きを見てドル円も底打ちとなりました。その後は、株価が底堅く推移しドル円もやや安値を切り上げる展開を続け、底堅い地合いのまま終えました。
7月3日(火)
東京市場では買いが先行してのスタートとなりました。前場後場を通じて株価の下げによる押しも入りましたが、111円台乗せをしたものの111.10/15レベルを上抜けることができず、直近高値トライには至りませんでした。その後、NY市場に入り米金利低下が上値を抑える中、日計り組の投げも出て昼前には110.51レベルの安値をつけました。引けにかけては上値の重たいままでのクローズとなりました。
7月4日(水)
ドル円は前日海外市場の流れを受け株安とともに円高の動きが先行しました。仲値前後には110.28レベルの安値をつけましたが後も続かず、その後は110円台半ばへと戻しました。米国が独立記念日で休場となることもあって、狭いレンジの中で動意薄のまま1日を終えました。
7月5日(木)
東京前場のドル円は、実需のドル買いに加え仲値の思惑から買いが先行し一時110.62レベルをつけましたが、蓋を開けてみると買いは出ず110.30レベルへと押しが入る目まぐるしさでした。後場に入るとユーロ円で大口の買いが出てドル円は110.70レベルまで上昇、海外市場に移ってからも底堅い値動きを続けました。FOMC議事録発表後にはユーロドルの下げから110.73レベルへとわずかに日中高値を切り上げましたが、雇用統計を前にして方向感が出るほどの動きとはなりませんでした。
7月6日(金)
米国の関税発動、中国の報復関税というニュースはあったものの、米国雇用統計の発表を控えて東京からNY市場までは110円台後半でのもみ合いに終止していました。雇用統計は、NFPが前月の上方修正も含め強い数字であったものの、失業率が予想外に4%と悪化したことからドル売りで反応しました。単月の数字としての影響は少ないものの、それまで底堅い動きを続けていたことから週末を前にしたポジション調整が入った様子で、引けにかけても上値は重たいまま110.48と一日の安値圏でのクローズとなりました。
ディスクレーマー
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