110円台でのもみあいが中心(7月第1週)

先週のドル円は、週初から一貫してドル高円安の流れが継続した印象が強い一週間

110円台でのもみあいが中心(7月第1週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初から一貫してドル高円安の流れが継続した印象が強い一週間でした。材料的にはトランプ大統領は相変わらずの米国第一主義を進めていく動きとなっていましたし、株価も日経平均を見ている限り週を通してもみあいを続けて方向感はありませんでした。それにも関わらずドル円が上昇基調を維持した理由としては、材料的に目先のリスクオフ材料が目立たなくなってきていることと、トランプ大統領の発言もある意味一貫していて市場参加者も目先の材料とはしていないという点が大きいかと思います。

またテクニカルには、月曜から火曜にかけて安値109.37を3回トライして抜けられなかったという不自然なまでの底堅さが見られ、おそらく2度目、3度目のトライで売り仕掛けた向きが切らされ短期的に円売り方向に転じた可能性がありそうです。シカゴの通貨先物の円ポジションは最新が6月26日のものですが、3月27日以降12週連続でほとんどポジションが無く買いだったり売りだったりという状態が続いていましたが、ここ2週間ほどサイズこそ小さいものの35,000枚前後の円売りポジションとなりました。投機的な動きも含めてドル買い・円売りのポジションがじわじわと効いてきているという面もあるかもしれません。

今週ですが、今日(7/2)出たばかりの6月の日銀短観大企業製造業は+21とコンセンサスの+22を下回り、また12月短観の+25をピークに2回連続で下がっていますが、市場への影響は今のところ見られず、株価も為替も動いていません。想定内の低下であることや、長期的には上昇傾向は続いているといった見方かもしれません。実際に2011年12月から2013年3月までの短観では大企業製造業はマイナスでしたから、当時からの長期トレンドはチャート的にも上昇トレンドは崩れていないと見ることも出来そうです。これで、月初のイベントは通過しましたので、週後半のFOMC議事録と米国雇用統計に向けてここからどう動くのかという感じになってきました。

FOMC議事録ですが、少なくとも6月FOMCで金利見通しが年4回に上がってきたことは事実ですから、よほど議事内容に偏った発言が無い限り雇用統計を翌日に控えており動きにくそうです。また雇用統計もほぼ完全雇用に近い状態となっていますので、単月の結果をもって今後のFOMCの政策に影響を与えることもないでしょう。コンセンサス(NFP+19万、予想レンジ14.4万〜21万)からずれた場合に一時的に振れるのは、お祭りのようなものですが、その結果112円台に乗せるほどの強い数字でもない限り方向感を出すとは思えません。

また同時に発表される貿易収支ですが、いままではあまり重視されてきませんでしたが、トランプ大統領が不均衡是正に積極的である現状において、今年の中間選挙が終わるまでは思いのほか材料視される可能性があると思います。コンセンサス(435億ドルの赤字、予想レンジ427〜505億ドルの赤字)からのズレと同時に、対中国、対日本の地域別詳細もチェックしておきましょう。米国ではここ2年程景気拡大を反映して輸出入とも伸びてきているため、貿易収支自体は緩やかに赤字が拡大しています。このあたりもトランプ大統領が騒ぐ要因ともなっていますので、80年代のように貿易収支で円相場が動くといったことも今後は考えられることです。

そして、今週もテクニカルな要因が大きいと思っていますので、下記の日足チャートをご覧ください

先週とほぼ同じラインを残してありますが、短期のラインは先週の動きを反映して若干位置を調整しました。この中で最も重要なラインが2015年の125円台から延びてきているレジスタンスライン(ピンク)で、今週は111円台半ばをゆっくりと下降しています。また5月レンジの高値111.40も直近では重要な高値となっていますので、111.40からこのレジスタンスラインを明確に抜けない限り、長期的なドル安・円高のトレンドに変化は無いと見るべきでしょう。

次に短期的には3月安値から引いたサポートライン(青)とそれと平行に引いたチャンネルによる上昇チャンネルです。幅の広い方は現段階では考える必要はありませんので、鼻場の狭いほうを見ます。この2つのラインによって挟まれる上昇チャンネル内での動きと長期レジスタンスに抑えられるシナリオがもっともあり得そうです。下限は109.70レベルから110.00の大台へと上昇、いっぽうで上限は先の長期レジスタンスで抑えられる動きが優先されますが、5月高値は超えられない展開が考えられます。

今週は109.70レベル(青いチャンネル下限)をサポートに111.40レベル(5月高値)をレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

7月2日(月)
**:** 香港、トロント市場休場
08:50 本邦6月日銀短観
10:45 中国6月MarkIt製造業PMI
16:50 フランス6月製造業PMI改定値
16:55 ドイツ6月製造業PMI改定値
17:00 ユーロ圏6月製造業PMI改定値
17:30 英国6月製造業PMI
18:00 ユーロ圏5月失業率
22:45 米国6月製造業PMI改定値
23:00 米国6月ISM製造業景況指数
23:00 米国5月建設支出

7月3日(火)
10:30 豪州5月住宅建設許可件数
13:30 豪中銀政策金利発表
16:00 トルコ6月CPI
17:30 英国6月建設業PMI
18:00 ユーロ圏5月PPI
18:00 ユーロ圏5月小売売上高
23:00 米国5月製造業新規受注
**:** 米国取引所短縮取引

7月4日(水)
**:** NY市場休場
10:30 豪州5月貿易収支
10:45 中国6月MarkItサービス業PMI
16:50 フランス6月サービス業PMI改定値
16:55 ドイツ6月サービス業PMI改定値
17:00 ユーロ圏6月サービス業PMI改定値
17:30 英国6月サービス業PMI

7月5日(木)
15:00 ドイツ5月製造業新規受注
16:15 スイス6月CPI
19:00 英中銀総裁講演
19:30 メルシュECB専務理事講演
20:30 米国6月チャレンジャー人員削減予定数
21:15 米国6月ADP全国雇用者数
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国6月サービス業PMI改定値
23:00 米国6月ISM非製造業景況指数
24:00 週間原油在庫
27:00 FOMC(6月13日)議事録公表

7月6日(金)
15:00 ドイツ5月鉱工業生産
15:45 フランス5月貿易収支
21:30 米国6月雇用統計
21:30 米国5月貿易収支

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値    高値    安値  終値

ドル円   109.95  110.94 109.37  110.70
ユーロ円  128.20  129.48  127.15  129.34
ユーロドル 1.1660  1.1720  1.1527  1.1685
日経平均  22543.56 22556.55 22038.40 22304.51

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

6月25日(月)
 トランプ大統領が中国からの投資抑制を検討しているとのニュースに朝からリスクオフの展開となりました。ドル円は早朝の110円近辺から東京後場には109.38レベルへと円高が進み、株式市場もダウ先物を含めて全面安となりました。その後のドル円は109円台半ばでの小動きが続きましたが、NY市場の引け間際にナバロNTC委員長がトランプ大統領の政策に誤解があるとの発言をしたことで、薄い中を一時110.04レベルと1日の高値を更新する動きが見られましたが、日計り組のストップ一巡後は売りも出て1日のレンジの中間地点に押して引けました。

6月26日(火)
 東京前場のドル円は、依然として米国による一連の保護主義に対する懸念に加え、前日NY引け間際の上げに対する調整の売りも加わって109.37レベルまで下押しする動きとなりました。しかし、前日の東京、NYに続き3度目のトライも109.37で止められたことから、109.30/35レベルには大きめの買いがありそうだとの思惑から反発。欧州市場では英中銀の次期MPC委員がハト派発言を行い現在のタカ派委員と入れ替わることからポンド売りがユーロ売りへと波及し、それがドル買いへと結びつく結果となりました。NY市場では底堅い株価も手伝ってドルが一段高の動きとなり、短期筋の買い戻しも見られたことから110.22レベルまで上伸後に大台近くまで押して引けました。

6月27日(水)
ドル円は米国主導の対外政策に対する懸念も根強く、東京市場では株価とともにリスクオフでの売りが続きました。前場の仲値に向けては月末スポットの実需売りも出ていた様子で、欧州市場序盤には109.69レベルまで下押ししての海外市場入り。欧州市場以降は売り手も一巡している中、トランプ大統領が中国の投資抑制策に対して楽観的な発言をしたことから一転リスクオフの巻き返しとなり株高、円安の動きがNY前場まで続き110.49レベルの高値をつけました。しかしNEC委員長は大統領は中国に譲歩しないと発言したことで株価は行って来い、ドル円はユーロドルの下げによるドル買いがドル売りの動きを緩和しやや押しての引けとなりました。

6月28日(木)
ドル円は前場に株式市場が下げる動きとともに一時的に110円の大台を割り込む動きを見せましたが、その後は株価も反転したことから底堅い展開のまま海外市場へ入りました。その後は再び売りが出て大台目前でNY市場に入りましたが、NYの朝方には上値の重たかった米株が底堅い動きを示す動きとともにドル円でも買いが入り110.65レベルの高値をつけた後にやや押しての引けとなりました。

6月29日(金)
 東京市場のドル円は前場にEUサミットで難航が予想された難民問題で合意が得られたとの情報にユーロが対ドル、対円で上昇し、ユーロ円でも動きがドル円にも波及する格好となりました。110円台後半へと水準を切り上げたまま海外市場では高値圏でのもみあいが続きましたが、NY市場に入り再びユーロ円の上昇とともにドル円も110.94レベルまで高値を切り上げ、その後110.70レベルへ押しての月末クローズとなりました。

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