ドル円 底堅いものの上値余地は限られる(6月第3週)

先週のドル円は、米朝首脳会談に始まり、FOMC、ECB理事会、日銀会合と連日のイベント続きでしたが、

ドル円 底堅いものの上値余地は限られる(6月第3週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、米朝首脳会談に始まり、FOMC、ECB理事会、日銀会合と連日のイベント続きでしたが、一週間を振り返ると週初から上下しながらもドル高・円安の動きが続きました。FOMCでは年内の利上げがあと2回の計4回と3月FOMCの計3回から増えたことで、米国は今年1年間で1%の利上げが行われることとなります。いっぽうで、ECBは年内で債券購入は停止となるものの3か月は半減して継続することや、利上げはドラギ総の裁任期中には無いと判断できることから対ユーロでも大きくドル高が進みました。

先進国では唯一目立った引き締めに動いている米国ですが、この引き締めは単純に考えれば金利差拡大ということで米国への資金還流を招き、新興国通貨を筆頭に多くの通貨ペアでドル買いに繋がると考えるのが為替市場の参加者の動きです。いっぽうで、金利上昇は株式市場にとっては悪材料となりますので株価は週末に向けて下げましたし、今後の金利上昇を考えると株安がリスクオフへと繋がり、更には新興国通貨安を通して全体的にドルを上がりにくくする動きが出てもおかしくはありません。

また、政策金利上昇とともに短期金利は上昇しますが、長期金利(債券利回り)はパラレルには上昇しません。米国の政策金利は2017年初に0.75%、2017年末に1.50%、2018年6月現在2.00%とこの間に1.25%上昇しました。いっぽうで長期金利のベンチマークとされる10年債の利回りは、2017年初に2.50%近辺、2018年6月時点で3.00%近辺と0.50%しか上昇していません。着実にイールドカーブ(各期間の利回りを結んだグラフ)は緩やかになってきていて、今年の年末には更にフラットニング(平らに)することが考えられます。一般的にこのような状況が続くと将来的な景気見通しに対する不安が生じていると考えられドル売りにつながることもある点には注意が必要です。

また、米中間の通商交渉は依然として大枠(中国が対米黒字を削減する方向)だけが決まって以降、知的財産権の問題なども出てきて新たな関税の報復合戦となってきました。先週末のG7でも米国の保護主義と残り6か国の自由貿易主義の対立だけが目立ち、秋の中間選挙に向けて難問山積といった状態です。これもドルにとっては悪材料とされやすいですし、そろそろ日米通商交渉も本格的に始まることを考えると、110円の大台よりも円安で安定するのかどうかは疑問です。

そんなことを考えながらチャートを見てみましょう。

日足チャートにあるピンクのラインは2017年1月高値と11月高値を結んだレジスタンスラインですが、これを過去に向けて伸ばしていくと2015年の高値125円台のところにきれいに延びていくことがわかります。過去の重要な高値を抑えているレジスタンスラインです。現在、このレジスタンスは111円台後半を下降中で多少の誤差を考えても112円台前半がいいところです。

つまりテクニカルには先週高値から考えて、あと1円程度というのが上値に残された余地ということになりますので、そろそろ円安方向への動きについては注意水準に突入してきたと考えてもよいでしょう。よくインターバンクディーラーはゾロ目での取引レートを好む傾向があって、111.11という1並びのゾロ目はいかにもありそうなレートです。逆に同レートよりも上は残り1円というイメージでいてもいいと個人的には考えています。

もちろん、112円を明確に上抜けるようだと125円台からの流れが転換することにもつながりますが、材料的には難しいだろうという見方です。今週は上値は上記水準、いっぽう下値は先週の安値圏109円台前半はまだ買いが出やすいと見ています。結論としては109.20レベルをサポートに、111.20レベルをレジスタンスと現行水準から上下1円程度の値幅を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月18日(月)
**:** 香港・中国市場休場
08:50 本邦5月貿易収支
16:00 トルコ3月失業率
**:** ウィリアムズ新NY連銀総裁就任
21:45 ダドリー前NY連銀総裁講演
23:00 米国6月NAHB住宅市場指数
26:00 アトランタ連銀総裁講演
26:30 ドラギECB総裁講演
28:45 ウィアムズ新NY連銀総裁講演

6月19日(火)
10:30 豪中銀理事会(5日)議事録公表
10:30 豪州1〜3月期住宅価格指数
**:** ドイツ・フランス首脳会談
17:00 ドラギECB総裁講演
17:00 ユーロ圏4月経常収支
17:30 プラートECB理事講演
20:00 (セントルイス連銀総裁講演)
21:30 米国5月住宅着工・建設許可件数

6月20日(水)
07:45 NZ1〜3月期経常収支
08:50 日銀会合(4月27日)議事要旨公表
15:30 黒田日銀総裁講演
17:00 ラウテンシュレーガーECB理事講演
17:00 南ア5月CPI
19:30 クーレECB理事講演
21:30 米国1〜3月期経常収支
22:30 FRB議長、ECB総裁、日銀総裁、豪中銀総裁講演
23:00 米国5月中古住宅販売件数
23:30 米国週間原油在庫

6月21日(木)
07:45 NZ1〜3月期GDP
15:45 フランス6月業況感指数
16:30 スイス中銀政策金利発表
17:00 南ア1〜3月期経常収支
17:30 英国5月財政収支
20:00 英中銀MPC結果発表
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国6月フィラデルフィア連銀製造業指数
22:00 米国4月住宅価格指数
23:00 米国5月景気先行指数
23:00 ユーロ圏6月消費者信頼感速報値
29:15 英中銀総裁講演

6月22日(金)
08:30 本邦5月CPI
**:** OPEC総会
15:45 フランス1〜3月期GDP確報値
16:00 フランス6月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ6月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏6月製造業・サービス業PMI速報値
22:30 オーストリア中銀総裁講演
22:45 米国6月MarkIt製造業・サービス業PMI速報値

6月24日(日)
 **:** トルコ大統領選挙

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値  高値   安値  終値

ドル円  109.46 110.90 109.39 110.66
ユーロ円 128.99 130.36 127.71 128.45
ユーロドル 1.1785 1.1853 1.1544 1.1608
日経平均 22686.95 23011.57 22667.30 22851.75

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

6月11日(月)
 週明け早朝は、G7サミットで米国と残り6か国の対立が鮮明となったことからリスクオフの動きが先行しましたが、イベントの多い週となることからすぐに元の水準へと戻しました。東京市場では株価の上昇とともにリスクオンの動きとなりドル円は買いが強まり、米朝首脳会談への期待もリスクオンの材料とされ後場には110円の大台を回復しましたが、その後の海外市場では110円を挟んでのもみあいで引けました。

6月12日(火)
 ドル円は米朝首脳会談開催を前にすでにリスクオンの動き、開催時点である程度成功することが前提という楽観的な見方が広がりました。高値110.49レベルも会談開催前につけましたが、110.50に売りオーダーが並んでいたことや実際の会談とその後の声明を見守りたいとの動きから110円台前半で上下する展開が続きました。声明は想定されていた内容に沿ったもので、具体的にはこれからということで、首脳会談を材料とした動きはNY市場ではすでに終わりFOMCが次の焦点となってのクローズでした。

6月13日(水)
ドル円は、米朝首脳会談が終わり次はFOMCでの利上げ回数思惑へと移りドル高が進む動きとなりました。欧州市場序盤には一時110.73レベルまで水準を切り上げた後、FOMCを前に利食いも出て東京朝方の水準での発表待ち。FOMCでは予定通り利上げが行われ誘導目標が1.75?2.00%とされると同時に、年内の利上げ回数が合計4回(残り2回)へと回数が増えることから一時的に110.85レベルの高値をつけました。しかし株式市場は利上げペースが速まることを嫌気して売りが広がり、ドル円もNYダウの下げとともに110.27レベルへと1日の安値を更新し、そのまま安値圏での引けとなりました。

6月14日(木)
ドル円は、前日FOMC後の流れを継続し東京市場でもドル売りの動きが目立ちました。後場には一時109.92レベルの安値をつけたものの、110円の大台割れには買いたい向きもいてECB理事会に向けては買い戻しが進みました。ECB理事会後のユーロの急落を見てドル円はドルが一段高となり110.69レベルまで上伸後に高値圏で引けました。

6月15日(金)
 東京市場では朝方こそ上値の重たい展開となっていたものの、ユーロ売りの動きも見ながら昼前から再びドル買いの動きとなりました。後場には110.90レベルとFOMC直後の高値を更新したものの、すぐに売りへと転じ米国の対中国の関税問題も嫌気され、欧州市場序盤には110.39レベルと一時朝方の安値を下抜けました。海外市場では株安が進んだもののドル円はあまり影響を受けず110円台半ばでもみあいのまま一週間を終えました。

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