EUR 1.15トライを考え下に余裕あるレンジ(6月第3週)

先週のユーロドルは、ECB理事会の金融政策変更思惑でユーロ買いが先行し、理事会での発表直後が高値となり、その後急落を演じました。

EUR 1.15トライを考え下に余裕あるレンジ(6月第3週)

ユーロ 今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、ECB理事会の金融政策変更思惑でユーロ買いが先行し、理事会での発表直後が高値となり、その後急落を演じました。先週のユーロの動きはほぼECB理事会だけと言っても良いので、まずはこの理事会の結果と動きについてから簡単に説明しましょう。

ECBの緩和政策のうち、QE(債券購入)については9月末まで月額300億ユーロで、10月からどうなるのかについては見方がわかれていました。しかし、2週間前にECB理事のタカ派発言が続いたことで、年内に終了することだけは間違いなさそうだとの思惑でしたが、もっともタカ派的な思惑は9月末で終了、ハト派的な見方では12月まで延長というものでした。結果は半減し150億ユーロで年末までとちょうど間を取った市場参加者の思惑も間を行くというものでした。それでも年内終了という点を取って直後はユーロ買いに動きました。

しかし、債券購入が終了後のステップには利上げが残ります。現在のECBの政策金利は0.0%ですが、日銀と同じく超過準備預金はマイナス金利となっていて−0.4%となっています。このマイナスをゼロへと戻すところまでが少なくとも緩和政策の正常化となりますが、今回のECB理事会では2019年夏まで現行の金利にとどまることを示しました。ドラギ総裁の任期が2019年10月までですから、退任前に正常化の道筋を示しつつも在任中には利上げは無いという見方が妥当に思われます。

こうしたことを受け、欧米間の金利差は年内にあと0.5%、2019年夏までに更に0.5%(場合によっては0.75%)と少なくとも1%以上の金利差拡大を見越してドル買いに動いたこととなります。FXでEURUSDの取引をしている方もユーロ売り・ドル買いであれば日々スワップ金利が入ってきますので、イメージとしてわかりやすいと思います。

ただ、このECB理事会後の高値から金曜安値まで300pipsを超えるユーロの売り圧力は意外なほどの強さで、そんなに理事会前にユーロ買いのポジションが積み上がっていたのかと正直なところ疑問に感じるほどの下げとなりました。今週はドラギ総裁をはじめECB理事の講演も続きますし、主要国の経済指標もありますので、細かくは上下に振れることも考えられますが、5月安値1.1510レベルを視野に入れてきましたし、イベントでユーロ売りが出た場合には1.15の大台を試す動きも考えられテクニカルには依然として危ない水準に位置しています。チャートを見て行きましょう。

ユーロ 今週の週間見通しと予想レンジ

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

1月下旬からの長期もみあいを5月に下抜け、その後は5月につけた年初来安値の1.1510レベルまで一貫して下落、そして6月中旬に向けV字回復をしていたところに急落です。すると4月高値を起点に5月安値までの下げ、逆N波動を想定したフィボナッチ・エクスパンションによる値幅観測が可能です。50%エクスパンションが1.1401、61.8%エクスパンションが1.1294と1.15の大台を抜けた場合、ほぼ100pips刻みでターゲットがあります。

また週足チャートでより長期的に2017年安値1.0341と2018年高値1.2555のフィボナッチ・リトレースメントを見ると半値押しが1.1448と上記2つのターゲットの手前に位置していて、それなりに下値のサポートもありそうだということがわかります。

テクニカルには1.1510、大きくは1.15の大台を試すかどうかが今後の展開を考える上で重要なキーとなりますが、材料的には試す可能性が高いという前提で考えた方がよさそうです。今週は1.1450レベルをサポートに1.1700レベルをレジスタンスと下方向に余裕のあるレンジを見ておきたいところです。


今週のコラム

ECB理事会後のユーロ急落でユーロ円もまた大きく水準を切り下げる展開となりました。特にここ2週間ほど130円台前半での上値の重さが目立っていたところでの下げとなったため、現状では130円の大台が遠のいてしまった感じです。今週はユーロ円の現在の状況を日足チャートから見てみることにしましょう。

ユーロ円日足

ユーロ円日足

少なくとも5月安値を下回るまでは次の逆N波動を言うには早すぎますので、いまは5月高値と6月高値から計算されるフィボナッチ・リトレースメントを考える段階です。すると50%押しが127.49、61.8%押しが126.81と特に後者の127円割れを試しやすい状況と考えることが妥当です。いっぽう上値は129円台では既に130円台の売りオーダーが水準を下げて置いてきていると考えられますので、129円台前半から半ばは上値が重たくなってくると見ています。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

6月18日(月)
26:30 ドラギECB総裁講演
28:45 ウィアムズ新NY連銀総裁講演

6月19日(火)
**:** ドイツ・フランス首脳会談
17:00 ドラギECB総裁講演
17:00 ユーロ圏4月経常収支
17:30 プラートECB理事講演

6月20日(水)
17:00 ラウテンシュレーガーECB理事講演
19:30 クーレECB理事講演
22:30 FRB議長、ECB総裁、日銀総裁、豪中銀総裁講演

6月21日(木)
15:45 フランス6月業況感指数
16:30 スイス中銀政策金利発表
17:30 英国5月財政収支
20:00 英中銀MPC結果発表
23:00 ユーロ圏6月消費者信頼感速報値
29:15 英中銀総裁講演

6月22日(金)
15:45 フランス1〜3月期GDP確報値
16:00 フランス6月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ6月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏6月製造業・サービス業PMI速報値
22:30 オーストリア中銀総裁講演

前週のユーロレンジ

        始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.1785 1.1853 1.1544 1.1608
ユーロ円  128.99 130.36 127.71 128.45

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

6月11日(月)
G7サミットでの米国と残り6か国の対立の影響は少なく、東京市場ではドル円とともにリスクオンのユーロ円買いの動きから底堅い展開となっていました。しかし、1.18台前半で売りが出てきたこと、ドル円でのドル買いの動きがユーロドルにもドルの動きとして波及し、ユーロドルは朝方の安値圏に押しての引けとなりました。

6月12日(火)
ユーロドルは、木曜のECB理事会に向け買い直す動きが入ったものの、結局は高値を切り下げる展開が続くことを確認した一日でした。NY市場では昼過ぎにFOMC後の議長会見を毎回行うとのヘッドラインに反応し、より機動的に利上げを行う布石との思惑によるドル買いとなり、ユーロドルは1.1734レベルと一日の安値を切り下げての引けとなりました。

6月13日(水)
ユーロドルは、FOMCの影響以上にECB理事会における緩和縮小(9月で債券購入停止)への思惑が強く、東京市場からFOMC前まで1.1794レベルへとじりじりと水準を切り上げる展開が続きました。FOMC直後こそドル買いの動きから1.1726レベルまで下げる場面も見られましたが、すぐに切り返し1.18台乗せを見て高値圏での引けとなりました。

6月14日(木)
ユーロドルはECB理事会でのタカ派の動きを期待しじり高の展開となり、理事会の結果発表直後には1.1852レベルの高値をつけました。しかし、9月以降も半減とはいえ12月末まで債券購入を継続すること、また利上げは来年の夏までしないことをネガティブな要因と捉え1.1562レベルまで急落し安値圏での引けとなりました。

6月15日(金)
ユーロドルは、前日のECB理事会後の急落余波が響いて上値が重たい展開が続き、欧州市場の朝方には1.1544レベルと安値を更新。しかし、その後は週末を前にしたポジション調整が出たことや、株安によるドル売りの動きがユーロで見られたことから1.1627レベルまで買われ、引けにかけてはやや押しての週末クローズとなりました。

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