ドル円 イベントは多いが、戻り売り(週報6月第2週)

先週のドル円は、前週につけた安値から反転上昇し、強い雇用統計も手伝って110.27レベルの高値をつけましたが、その後は失速し

ドル円 イベントは多いが、戻り売り(週報6月第2週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、前週につけた安値から反転上昇し、強い雇用統計も手伝って110.27レベルの高値をつけましたが、その後は失速しG7サミットに向けて米国の保護主義懸念も加わり109円台前半へと押す動きとなりました。この間のリスクオン・リスクオフは材料の沿った動きと言えますが、110円の大台手前から110円台半ばまでは本邦輸出を中心としたドル売りオーダーが並んでいたため、投機(トレーディング)の買いが実需の売りを消化したものの、ポジション調整で自律反転した動きと言えるでしょう。

今週初はトランプ大統領がG7サミットの首脳宣言に対して米国は認めずと、米国対残り6か国の対立構図となりましたが、早朝に若干のドル売りが入った程度で、目立った動きにはつながりませんでした。サミット前にも米国の保護主義が加速している動きは見られましたし、先行して開かれたG7でも米国のみ孤立していたため、特にサプライズにはならなかったと言うことでしょうが、追加関税や自動車問題など長期的にはリスクオフの材料となってくることは間違いありません。

また、今週は明日の米朝首脳会談を皮切りに主要3極の金融政策会合が続きます。これらで考えられる為替の動きを書いていきましょう。

・12日=米朝首脳会談
米朝首脳会談も一度は中止になりそうだったものが再度両国がテーブルに戻ることとなったため、実務者レベルでは短期間にかなりの進展があったと言えるでしょう。直近でトランプ大統領が北朝鮮に対して1度のチャンスと完全非核化を要求していることを考えると、おそらく最後まで決まらなかった完全と段階的の部分について米国側が納得できる回答、そしてそれに対応して米国は北朝鮮に対する制裁解除といった方向と思われます。そうであれば、リスクオンでのドル買いとなり、こちらがメインシナリオです。しかし、期待以下のものであればドル売りに繋がるというサブシナリオも考えては起きたいところ。

・13日=FOMC
利上げは既に織り込み済みですから、利上げ後は材料出尽くしてドル売りに繋がりやすいと考えられます。また、年内の金利見通しが3回から4回に変われば新たなドル買いの材料となりますが、FRBの金融政策はブレが無く、いま4回と言っているのはエコノミストとストラテジストです。おそらく今回もFRBは年内3回(つまり今回6月と年後半にもう1回)とし、4回はエコノミストとその周辺市場参加者の思惑ということに終わる可能性の方が高いと見ています。そうであるとすれば、余計にドルが売られやすいということになるでしょう。

・14日=ECB理事会
先週のECB関係者のコメントでは、今回の理事会でようやく9月末以降の金融緩和縮小について議論されるという日程が示されました。市場参加者のコンセンサスは9月末までの債券購入はゼロとなり、次は金利の正常化(マイナス金利からゼロ金利へ)ということになりますが、直近のところではイタリアのポピュリズム政権誕生が不透明な要因として、ECB理事会のメンバーにどのような影響を与えるかという点が気になります。おそらく、9月で購入は停止するもののいつでも再開の用意はあるといったコメントが出ると思いますが、ドラギ総裁は理事会メンバーの中でも最もハト派に位置しているということを割り引いて会見は見る必要があるでしょう。

・15日=日銀会合
日銀だけは大規模緩和を維持という点では変化は無いのですが、黒田総裁2期目に入っても物価上昇への糸口は見えないどころか、逆にマイナス金利とイールドカーブコントロールの負の側面が日銀内部でも懸念の声が上がっている始末です。政策は現状維持でも今後の政策の方向性や日銀会合メンバーの考えに何らかの変化が出て来るのか、詳細は主な意見待ちではあるものの、総裁会見での質疑が注目。発言次第では円高材料となる可能性が残ります。

材料面では以上の通りで、どちらかといえばドル売り方向にバイアスがかかりやすいかもしれないなといたところでしょうか。

日足チャートも見てみましょう。

最近の高値・安値はフィボナッチ・リトレースメントとピッタリ、もしくはかなり近い水準で止まることが多いのですが、先週の高値も安値もそうでした。高値は5月高値と安値の61.8%戻し(青のターゲット)に近く、安値は5月安値と先週高値のちょうど半値押し(緑のターゲット)で止められました。現在の水準は上下とも、どちらに動いてもおかしくはない水準と考えられます。

しかし、中期的な観点では年初来安値からの上昇チャンネルを下抜け、5月高値、先週高値と高値を切り下げる展開です。そうなると、5月高値を起点に5月安値までの下げ、その後の先週高値への上げを各点とする逆N波動の動き(ピンクの線とターゲット)は意識しておかなくてはなりません。今週以降の動きかもしれませんが、50%エクスパンションの108.63、61.8%エクスパンションの108.24の両水準が意識されるでしょう。

110円の大台超えにはまだまだドル売りオーダーも残っていますし、材料的にもテクニカルにも戻り売りが出やすいという観点から、今週は108.60レベルをサポートに、110.10レベルをレジスタンスとする一週間を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月11日(月)
**:** 豪州市場休場
07:45 NZ1〜3月期製造業売上高
16:00 トルコ1〜3月期GDP
17:30 英国4月鉱工業生産、貿易収支

6月12日(火)
**:** 米朝首脳会談
10:30 豪州5月NAB企業信頼感
17;30 英国5月失業率
18:00 ドイツ6月ZEW景気期待指数
18:00 ユーロ圏6月ZEW景気期待指数
21:30 米国5月CPI
**:** FOMC(〜13日)

6月13日(水)
17:30 英国5月CPI・PPI
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産
20:00 南ア4月小売売上高
21:30 米国5月PPI
23:30 米国週間原油在庫
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見

6月14日(木)
**:** 日銀会合(〜15日)
10:30 豪州5月失業率
11:00 中国5月鉱工業生産、4月小売売上高
15:00 ドイツ5月CPI確報値
17:30 英国5月小売売上高
20:45 ECB理事会
21:30 ドラギECB総裁会見
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国5月小売売上高
21:30 米国5月輸入物価指数
23:00 米国4月企業在庫

6月15日(金)
**:** シンガポール市場休場
07:30 NZ5月企業景況感
**:** 日銀会合結果公表
15:30 黒田日銀総裁会見
17:00 オーストリア中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏5月CPI確報値
18:00 ユーロ圏4月貿易収支
21:30 米国6月NY連銀製造業景況指数
22:15 米国5月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感指数速報値

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値  高値   安値   終値

ドル円  109.61 110.27 109.21 109.54
ユーロ円 127.88 130.28 127.79 128.93
ユーロドル 1.1667 1.1840 1.1653 1.1771
日経平均 22365.09 22879.00 22355.83 22694.50

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

6月4日(月)
 東京市場では金曜雇用統計後の底堅い流れを継続し、日経平均株価の上昇とともにやや円安に動いたものの後が続かず、その後はユーロ買いでのドルの動きが上値を抑えることとなりました。NY市場の朝方には109.37レベルと雇用統計前の水準まで下押ししたものの米株が軒並み上昇する動きに沿って109.85レベルへと日中高値を更新し、そのまま高値圏での引けとなりました。

6月5日(火)
 ドル円は東京市場では底堅い動きを続け、後場には一時110円台乗せの場面も見られました。しかし大台超えにはまだまだ実需を中心とした売りオーダーが並んでいて、その後は上値の重たい株価とともにじり安の展開を辿りました。NY市場前場にはユーロの下げからドル買い戻しも見られたものの109.47レベルへと安値を拡大し、引けにかけては買い戻しも出て引けました。

6月6日(水)
リスクオンの一日となりました。ドル円は東京市場から株高とともに円安が進み後場には110円台のせ、その後も株価の動きが強かったことに加え米金利も上昇する動きから底堅い展開が続きました。NY市場前場には米金利の動きとともに一時的に大台割れの場面も見られましたが、その後は連日最高値を更新するNASDAQの動きに引っ張られて株高とともに110.27まで買われたのちにやや押しての引けとなりました。

6月7日(木)
ドル円は前日NY後場の買いは続かず、110円台では10銭刻みで売りオーダーが入っていること、また仲値前後で実需の売りも出たことから109円台後半へと下押ししました。その後は110円にNYカットのオプションがあるとの話もあり、大台を挟んでのもみあいが続きましたが、トランプ大統領の日米首脳会談を前にした北朝鮮に対して強気の発言が出たことや対日赤字についての言及もあったことから109.48レベルの安値をつけ、引けにかけてはやや戻して引けました。

6月8日(金)
東京市場のドル円は株価の下落とともにじりじりと円高の動きが進みました。海外市場に移るとG7サミットにおける貿易問題で米国対6か国という対立の構図が懸念され、リスクオフの円買いが’進みNY市場が始まる頃には一時109.21レベルまで水準を切り下げました。NY市場でもG7への警戒感は続きましたが週末を前にした日計り組の買い戻しも出て109円台半ばでの引けとなりました。

ディスクレーマー

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