ユーロ もみあいながらも底堅い展開か(週報6月第2週)

先週のユーロドルは、まずイタリアのコンテ内閣発足をきっかけに流動的な状態からポピュリズム政権の今後へと視野が変化したこと、

ユーロ もみあいながらも底堅い展開か(週報6月第2週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、まずイタリアのコンテ内閣発足をきっかけに流動的な状態からポピュリズム政権の今後へと視野が変化したこと、次に米国がEUへの追加関税猶予を外したことからG7サミットまで米国対欧州の対立構図が強まったこと、そして今週のECB理事会に向けてECB関係者のタカ派発言が目立ったこと、欧州に関する大きな材料はこれら3つであったと思います。

値動き自体は先週も週初からユーロ買いが目立ち木曜まで上昇、一時1.1840レベルの高値をつけ、週末を前にポジション調整でやや下げる動きになりました。週明け早朝のG7サミット後の動きは米国の保護主義が既に先行したG7で見えていた面もあって動きは全くと言ってよいほど見られませんでした。明日には米朝首脳会談があり、積極的な取引は手控えられそうですが、ユーロへ与える影響はその後のFOMCとECB理事会ということになりそうです。

金融政策の日程は13日にFOMC、14日にECB理事会となりますが、FOMCでの0.25%利上げとECB理事会の現状維持は予定通りとして、注目点としてFOMCでは年内に利上げ見通し回数が前回同様3回なのか4回に増えるのか、またECB理事会ではイタリア政権の不透明な要因に対して、9月で債券購入をやめるのか、その場合それ以降の対応をどのようにするのか、こういったところに注目が集まります。

個人的な見解としては、FOMCメンバーはブレないつまり前回と同様に年内の利上げ見通しは3回のまま(市場参加者は4回の見方も多い)、そしてECB理事会では9月で債券購入を停止する方向性を見せつつも再開の余地を残す(市場参加者の見方も同様)、といったところだと見ています。であると、利上げ+3回見通しでは材料出尽くしによるドル売り、いっぽう4回見通しでは一時的なユーロ売り(ドル買い)となっても、ECB理事会を前に大きく動けないという流れになるのではないかと見ています。

またECB理事会では、先週はタカ派発言が見られましたが、ECB内にはタカもハトも混在してはいるものの、着実に緩和祝縮小方向へと舵を切っていく流れ自体は既定路線で、今回の理事会で討議されることも間違いないでしょう。ただ、理事会後の会見ではハト派的な内容となることは十分に考えられます。ドラギ総裁自身がハト派代表であり、これまでも常に慎重な発言を繰り返して来たことから、今回も次回7月理事会以降まで判断を持ち越す、いつでも債券購入を再開できる状況は維持するといったような発言が出て来る可能性があります。翌月に議事録が公表されるまでは判断しづらいかもしれません。

テクニカルには明らかに底打ち後の上昇局面にありますが、先週高値で上値追いが終わってしまったかどうかは確定できません。ポジション的にはシカゴの通貨先物のポジションを見ると6月5日時点で前週からやや減少し9万枚を割り込んできましたので、残りの買いポジションはベースとして残っている部分(6万枚程度)に近づいてきたとも見られ、いったん売りは落ち着きやすいと考えています。

ただ、先週の買いの材料がECB理事会期待であるとするならば、イベント経過でもって利食いの売りに繋がる可能性もあり、イベント後に大きく上げるような感じは持てません。以上の相場環境を考えてチャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

テクニカルには、V字回復でV字ボトムと言えるチャートパターンです。4月高値と5月や薄根から見ると先週高値は38.2%戻し(赤のターゲット)の1.1855とほぼ一致していますが、年初来高値と5月安値を基準とした38.2%戻し(青緑のターゲット)は1.1909ともう少し余裕があり、現在の流れは同水準をターゲットとする流れにあると考えられます。いっぽう、下値は5月安値と先週高値の半値(青のターゲット)が1.1675にあり、現状のサポートとしてワークしやすい水準と言えます。

今週はイベントが多く連日神経質な展開が続きそうですが、値幅的には上記ターゲットの中での動きになると考えています。今週は1.1700レベルをサポートに、1.1900レベルをレジスタンスとします。

今週のコラム

今週はFX羅針盤の普段のコラムで扱うようなテーマです。イベントも多いので息抜きのトピックスとしてお読みください。

私がFX羅針盤で利用しているチャートツールはFibonacci Traderという米国のテクニカル分析専用のツールですが、機能が恐ろしく豊富で通常のツールで扱えるもの以外にも四則演算や関数、他のプロダクトとの計算等、一般的に機能が多いと思われるMT4がオモチャに見えるほどの機能が搭載されています。

またデータは別途、FXはインターバンクの全通貨ペア、更に株価やコモディティ等取れるだけのプロダクトの取引データを購入していますので、ツールの機能と加えてつい色々なことをしてみたくなります。よくやるのが、2つのプロダクトを並べ片方だけ次々と変えていき、似たようなパターンがずれて表示されないかといったチェックをします。

つまり、あるプロダクトに似た動きを一定期間ずれて再現するような、先行指標的なプロダクトが無いかをチェックする作業です。FXをトレードされている方には関係ないのですが、コモディティCFDを取引されている方にはちょっと興味あるかもしれない現象があります。

シカゴ大豆の日足チャート(GLOBEX、期近つなぎ)をご覧ください。

今週のコラム

上段が大豆(紺)、下段はユーロドル(ピンク)です。そして、ユーロドルのチャートを25期間先行させたラインチャート(赤)を大豆のチャートに重ねました。この1年くらいピッタリではないにせよ、ユーロドルの動きが大豆の動きに先行するような動きが見られます。

であるとすれば、赤いラインのような動き、つまりもう少し下げた後に底打ちといった動き、が大豆で見られるかもしれないと妄想ではありますが、全く違ったプロダクトの比較も時にワークするというお話でした。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

6月11日(月)
17:30 英国4月鉱工業生産、貿易収支

6月12日(火)
**:** 米朝首脳会談
17;30 英国5月失業率
18:00 ドイツ6月ZEW景気期待指数
18:00 ユーロ圏6月ZEW景気期待指数

6月13日(水)
17:30 英国5月CPI・PPI
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見

6月14日(木)
15:00 ドイツ5月CPI確報値
17:30 英国5月小売売上高
20:45 ECB理事会
21:30 ドラギECB総裁会見

6月15日(金)
17:00 オーストリア中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏5月CPI確報値
18:00 ユーロ圏4月貿易収支

前週のユーロレンジ

        始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.1667 1.1840 1.1653 1.1771
ユーロ円  127.88 130.28 127.79 128.93

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

6月4日(月)
 ユーロドルは、イタリアとスペインの政局不安を脱したことから底堅い週初のスタートを切り、NY市場の朝方には1.1745レベルの高値をつけました。しかし、米株高によるドル買いと、EUが米国の追加関税に対抗する形でセーフガードを検討しているとの話からユーロは1.17を割れての引けとなりました。

6月5日(火)
 ユーロドルは、東京市場では動きは見られなかったものの欧州市場に入り上値が重くなったところにイタリアのコンテ首相がEUからの離脱は考えていないとした上で急進的な政策を進めると述べたことからイタリア債が下げユーロ売りとなりました。NY市場に入るとECB関係者が翌週の理事会でQE終了について討議するとの発言に一転ユーロ買いに動き、1.1732レベルと一日の高値を更新し、底堅い地合いで引けました。

6月6日(水)
ユーロドルは前日に続いてECB理事のタカ派発言が出たことで一段高、リスクオンのユーロ円の買いも手伝って1.1796まで水準を切り上げ、やや押しての引けとなりました。ユーロ円は大幅上昇し129.83レベルと130円の大台目前まで買われた後にやや押してのクローズとなりました。

6月7日(木)
ユーロドルは、翌週のECB理事会における緩和縮小の思惑からNY市場前場までユーロ買いが継続し1.1840レベルまで上昇。しかし、ドル円とともにユーロ円も下げが目立ったことから、ユーロドルでは日計り組の利食いも出て、東京昼頃の水準まで押しての引けとなりました。

6月8日(金)
ユーロドルは、ユーロ円の売りがユーロドルの水準も下げる中、週末を前にECB思惑で買った向きのポジション調整も上値を抑えることとなりました。NY市場ではブレグジットに絡んでアイルランドの関税問題をきっかけとしたポンド売りもユーロ売りの要因となり、1.1727まで売られた後にやや戻してのクローズとなりました。

ディスクレーマー

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