今週の週間見通し
先週は東京市場がゴールデンウィークで2日しか営業日が無かったこともあり、東京勢は様子見モードでしたが、値動きとしては大台110円台乗せを雇用統計前に示現し、予想よりも弱い雇用統計で下げると、これでいったん大台が遠のくとすれば米国雇用統計前後でドル円は高値をつけるという雇用統計アノマリーを今回も繰り返したこととなります。
雇用統計は既に市場の方向性を動かすようなものでもありませんし、単月の数字に一喜一憂するような指標でもなくなりましたが、先週の目立った材料としてはFOMC、米国財務省による米国債増発、米中通商交渉の3つがありました。休み中で東京の市場参加者は素通りした感じもしますが、どれも今後の見通しにとっては重要な材料です。
まずFOMCですが、5月の現状維持は織り込み済みでしたが、6月に次の利上げを行うヒントがあるかどうかが注目となっていました。インフレ率が目標の2%に近づいていて達成の自信を示し、経済見通しも楽観的なものとなり、6月利上げの可能性は高まったと言えます。6月に利上げしておけば中間選挙前の9月をスキップすることも出来ますし、FRBとしては年後半のカードの切り方にバリエーションを持てます。現状の為替水準は6月利上げを完全に織り込んでいると言ってよい(シカゴのFF先物の織り込み度はほぼ100%)でしょう。
次に米国債増発です。これも昨年の税制改革が決まった時点でセットであったとはいえ、直近のところでは長期金利上昇はドル買い要因とされています。しかし、今年1〜3月は悪い長期金利上昇という面を伴う米国債売りで反応したことから、今後再び長期金利上昇とドル買いがデカップリングする可能性も高く注意が必要です。ポジション的にも米国10年債先物の売りポジションは前回の史上最高の売りからやや減ってはいるものの、いまだ高水準です。米国内ではこのまま長期金利上昇となるのか、ポジション調整が起こるのか、債券トレーダーはかなり気にしている様子で、いずれにしても積極的にドルを買う材料とは思えません。株式市場への影響も含め、6月FOMCまでは債券市場が気になります。
そして米中通商交渉ですが、米国側はかなり大きな要求を中国に突きつけました。2020年末までに2000億ドルの対米黒字削減を求めた上で、報復禁止の条項まであります。これまでの要求が倍増していることや、米国の一方的な要求に対して今後中国がどのような対応を見せるのか、米朝首脳会談を前にあまり過激な動きは無いとは思うものの、両国の溝は深くかつて日米貿易問題が10年近い時間を必要としたことを考えると、かなり長期的なテーマとなることは間違いありません。また、中国に次いで対米黒字が多い日本にも当然のように火の粉はふりかかるでしょうから、円高懸念は常につきまとうことにもなるでしょう。現状ではまさかとは思うものの80年代に最終的に為替調整という荒業を米国が使ったことは気にしておくべきことです。
こうして見ると、先週の材料はドルの上値を抑えやすいものが多く、110円という大台を見た達成感も重なり、今週は110円が当面の高値となった前提で動いていく可能性が高いと考えられます。チャートもご覧ください。
昨年11月高値114.73と今年の安値104.64との半値戻しが109.69(赤のターゲット)と比較的先週の高値に近い水準にあります。また3月安値から引いたサポートと同期間の高値を結んだラインとで構成される上昇チャンネル(ピンクのライン)の中での動きは続いているものの、サポートの水準がかなり上がってきていることを考えると、そろそろ息切れが起きやすい地合いであると言えそうです。
今年の安値と先週高値110.04とのリトレースメントを考えると、まだ距離はあるものの38.2%押しは107.97(青のターゲット)と、今回のドル高に繋がった反転パターンのちょうどネックラインの位置に重なります。大きくは108円と110円のレンジの中で、次にどちらに動くのか踊り場の局面にあると見ています。今週は108.00レベルをサポートに110.00レベルをレジスタンスと、109円を中心としたもみあいの一週間を予想します。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
5月7日(月)
**:** LDN市場休場
08:00 クオールズFRB副議長講演
08:50 日銀会合(3月9日)議事要旨公表
10:30 豪州4月NAB企業信頼感
15:00 ドイツ3月製造業受注
21:15 アトランタ連銀総裁講演
27:00 リッチモンド連銀総裁講演
28:30 (ダラス連銀総裁講演)、(シカゴ連銀総裁講演)
5月8日(火)
**:** 中国4月貿易収支
15:00 ドイツ3月鉱工業生産
16:15 パウエルFRB議長講演
23:00 フィンランド中銀総裁講演
5月9日(水)
21:30 米国4月PPI
23:00 米国3月卸売在庫・卸売売上高
23:30 米国週間原油在庫
26:15 アトランタ連銀総裁講演
5月10日(木)
06:00 NZ中銀政策金利公表
08:50 本邦3月国際収支(貿易収支)
08:50 日銀会合(4月27日)主な意見公表
10:30 中国4月CPI、PPI
17:30 英国3月鉱工業生産、貿易収支
20:00 英中銀MPC結果公表、英中銀総裁会見
20:00 南ア3月製造業生産
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国4月CPI
5月11日(金)
07:30 NZ4月企業景況感
21:30 米国4月輸入物価指数
23:00 米国5月ミシガン大消費者信頼感指数速報値
前週の主要レート(週間レンジ)
始値 高値 安値 終値
ドル円 109.10 110.04 108.65 109.06
ユーロ円 132.25 132.54 129.90 130.48
ユーロドル 1.2123 1.2140 1.1910 1.1962
日経平均 22453.42 22568.19 22426.55 22472.78
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
前週の概況
4月30日(月)
週明け月末は東京市場が休場となったこともあってドル円は小動きの一日となりました。アジア市場は中国市場も休場で動意薄、欧州市場に入りユーロが一段安となる動きからドル買いとはなったものの、NY市場に入りダウが売られる動きに沿ってアジア朝方の水準に押した後はやや買い戻されての引けとなりました。
5月1日(火)
東京時間はシンガポール、香港が、欧州時間もドイツ、フランスが休場ということもあって取引自体は細っていましたがドル高の流れが継続しました。NY市場に入り米金利上昇とともにドルが一段高、ドル円は109.89レベルまで上伸する動きとなりました。
5月2日(水)
東京市場は連休の狭間、また夜にはFOMCの結果発表を控えていることもあり動意薄でした。しかし、日経平均に売りが目立ったことや前日の上げに対するポジション調整も見られ前場は売りが先行。その後は方向感の無い展開が続きましたが、NY市場に入り米国財務省が米国債増発を発表、為替市場はドル買いで反応し、一時110.04レベルと大台乗せとなりました。FOMC後に下振れ場面もありましたが、6月利上げの可能性が高まったことで110円の大台間近での引けとなりました。
5月3日(木)
東京市場がゴールデンウィーク後半で参加者は少なかったものの、株価先物の下げとともに売りが先行しました。前日に110円台の大台を見て達成感も出ていたところに、訪中しているムニューシン財務長官からコメントが出なかったことで警戒感が強まりリスクオフの動きから株式市場、為替市場とも水準を下げながらのNY市場入り。トランプ大統領がイラン核合意からの離脱を表明したことも一段のリスクオフ材料となりダウが急落したことからドル円は109円割れ、上値が重たいままでの引けとなりました。
5月4日(金)
東京市場は連休中であるものの前日の下げの影響も残りNY市場までドル円は上値の重たい展開が続きました。雇用統計は失業率こそ3.9%へと下げたものの、注目の平均時給とNFPが予想よりも弱かったことから一時108.65レベルの安値をつけました。しかし、NYダウが大幅高となったことから日中高値を更新し、引けにかけては若干押しての週末クローズとなりました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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