今週の調整局面を経て再び円高へ(週報2月第三週)

先週のドル円は、円高の流れを継続し金曜には一時105.55レベルと、2016年11月トランプ大統領当選時以来の水準にまでドル安・円高が進みました。

今週の調整局面を経て再び円高へ(週報2月第三週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、円高の流れを継続し金曜には一時105.55レベルと、2016年11月トランプ大統領当選時以来の水準にまでドル安・円高が進みました。前週は株式市場の混乱によるリスクオフから円高となりましたが、先週は少なくとも株式市場は堅調で、これまでのリスクオフからドル安の動きへと転じる一週間だったと言えます。

ドル安の動きはドル円だけでなく主要通貨ではユーロでも見られ、ユーロドルも金曜に1.2555と年初来高値を更新する動きとなりました。材料的には引き続き株式市場の混乱が終わってはいないかもしれないという懸念に加え、米国長期債の動きが利回り上昇以上に債券が売られている面に市場参加者の視点が移りつつあることが主因です。

これは先週月曜に公表された米国の予算教書を見ても分かる通り、収支均衡をあきらめ景気浮揚のために大幅な財政赤字拡大が示されていたことが大きいと言えます。年度的には2019年度となりますが、2018年度に比べ財政赤字は9840億ドルへとほぼ2倍に膨らみ、その財源として国債の発行、国債の需給が緩む思惑から債券価格低下=長期金利上昇という流れです。

予算教書の内容がそのまま議会を通過するわけではないものの、今後の方針としては財政赤字拡大の方向へと舵を切ったことから、今後株式市場の下げが見られることとなった場合、株安、債券安、ドル安という米国のトリプル安、ミニクラッシュの懸念が頭に浮かび、それがドルの上値を抑えているというのが現在の構図と言えるでしょう。

また需給的にも依然として高水準な円売りポジション、そして3月末に向けて国内の輸出を中心とした実需筋も109円台後半から110円台に並べていたドル売りオーダーを下げてきています。昨年12月の日銀短観で下期(10〜3月)の想定為替レートは109.66であったことからも109円台後半で売りが並んでいたことは想像がつきますが、現状では110円の大台はおろか、109円台後半といった水準に戻ることは困難そうです。

米国のファンダメンタルな材料、主に国内の需給、そして後述するテクニカルな観点とどれをとっても中期的なドル安・円高トレンドに変化は無いと考えざるを得ません。

ただ、ドル円は既に2月に入ってから5円ほどの下げを見せていて、若干スピードが速いという印象があります。ドル円の場合、中期トレンドの一波が6〜7円であることが多いため、いまだ底を見たとは言えませんが、短期的には105円台半ばまで見たことでいったん踊り場を作りやすい水準です。105円台半ばから前半はトランプ大統領の当選が決まった前後の水準であり、為替に関してはちょうど振り出しに戻った水準です。

また日柄的には1月末の皆既月食と2月16日の部分日食はセットで考えることができ、他の現象と合わせて考えると、1月末から2月初めに起きた流れに対して、2月16・17日前後にいったんカウンターの動きが入りやすい時間帯となっていると考えることが可能です、であるとすれば、今週は円高・ドル安の流れの中でいったん小休止、多少の戻りを見る週となりそうです。

それではテクニカルな観点から日足チャートをご覧ください。

既に昨年安値107.32を下抜けたことで現状の戻しは107円台前半と言えますが、下値は大台105円がトランプ政権にとってニュートラルであることと同時に、テクニカルに近いターゲットとして105円台前半はいくつかのターゲットがあります。目立つところでは、1月初めの年始来高値から1月末への押し、その後の2月初めの高値への戻しを3点とする逆N波動のフィボナッチ・エクスパンションです。この100%エクスパンションは105.38(青のターゲット)となっています。

もうひとつ、昨年安値から11月高値への上げを見て、これまでフィボナッチ・リトレースメントの押しを計算しましたが、既に安値を抜けたことでこれを使う場合にはフィボナッチ・プロジェクションという100%を超えた水準を計算することも可能です。このプロジェクションの内、127.2%(161.8%の平方根)プロジェクションが105.30(赤のターゲット)とほぼ重なる水準にあることがわかります。

テクニカルには105円台前半がいったんターゲットとなっていて、先週の安値はかなり近い水準でもあります。もちろん、もう一度下げてきっちりとターゲットを達成してからの反発という可能性もあり得ますが、そろそろいった踊り場になるであろうという見方自体には変わりはありません。

先週は控えめな動きを想定して大きく動いた結果となりましたが、2週続けての大きな変動はやりすぎ感もありますし、材料的にも今週はそうした動きにまでは発展しないのではないかと見ています。今週は107.00レベルをレジスタンスに、105.50レベルをサポートと基本もみあいの一週間を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

2月19日(月)
**:** 香港、NY市場休場
**:** 中国市場休場(〜21日)
08:50 本邦1月貿易収支
18:00 ユーロ圏12月経常収支
30:45 NZ10〜12月期PPI

2月20日(火)
09:30 豪中銀理事会(6日)議事録公表
19:00 ドイツ2月ZEW景気期待指数
19:00 ユーロ圏2月ZEW景気期待指数
24:00 ユーロ圏2月消費者信頼感速報値

2月21日(水)
17:00 フランス2月製造業PMI速報値
17:00 南ア1月CPI
17:30 ドイツ2月製造業PMI速報値
18:00 ユーロ圏2月製造業PMI速報値
18:30 英国1月失業率
23:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
23:15 英中銀総裁講演
23:45 米国2月MarkIt製造業・サービス業PMI速報値
24:00 米国1月中古住宅販売件数
28:00 FOMC(1月31日)議事録公表

2月22日(木)
14:15 クオールズFRB副議長講演
16:45 フランス2月業況感指数
18:00 ドイツ2月ifo景況感指数
18:30 英国10〜12月期GDP改定値
21:30 ECB理事会(1月25日)議事要旨公表
22:30 米国新規失業保険申請件数
24:00 米国1月景気先行指数
24:00 NY連銀総裁講演
25:00 米国週間原油在庫
26:10 アトランタ連銀総裁講演
30:45 NZ10〜12月期小売売上高

2月23日(金)
08:30 本邦1月CPI、2月東京区部CPI
16:00 ドイツ10〜12月期GDP確報値
19:00 ユーロ圏1月CPI確報値
**:** EU首脳会談
27:30 クーレECB理事討論会参加
29:40 サンフランシスコ連銀総裁講演

前週の主要レート(週間レンジ)

     始値   高値   安値   終値

ドル円  108.80 108.81 105.55 106.30
ユーロ円  133.32 133.74 131.61 131.91
ユーロドル 1.2253 1.2555 1.2235 1.2409
日経平均 21633.34 21866.37 20950.15 21720.25

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

2月12日(月)
 週明けのドル円は東京市場が休場ということもあり動意薄の展開。株価指数先物が底堅かったことから、ドル円も底堅い動きとはなったものの海外市場に移ってからも目立った動きは見られず、一日のレンジも37銭と最近にしては狭い値幅のままで終わりました。

2月13日(火)
 東京前場こそ落ち着いた動きをしていたものの、後場に入り日経平均株価が大きく下げる動きとともにリスクオフの円買いが進みました。金曜安値を割り込むとストップオーダーも巻き込みながら107円台半ばへと下落、NY市場昼前には107.41レベルの安値をつけ昨年の安値107.32まで9銭と迫りましたが、後場には株価が底堅い動きとなったことから107円台後半へ戻しての引けとなりました。

2月14日(水)
 東京市場で株式が寄り付きから下げる動きに沿って円高が進みました。昼前に前日安値を割り込むとストップオーダーを巻き込み、後場にはあっさりと106円台へと入り込みました。その後は株価の上下とともにドル円も上下していましたが、NY市場で米株、日経平均先物ともに買われる中でもドル円の戻りは鈍く、ユーロドルの大幅高の動きとともに106.72レベルの安値をつけ、上値の重たいままでの引けとなりました。

2月15日(木)
東京市場では株式市場が底堅い動きとなる中、麻生財務相の介入を考えていないとの発言も重石となりじり安の展開となりました。海外市場では106円台半ばで上下を繰り返していましたが、NY引け間際に106.03レベルと106円割れギリギリまで下げ幅を広げ安値圏での引けとなりました。

2月16日(金)
前日からの円高の流れを継続し、東京市場後場には一時105.55レベルの安値をつけました。しかし、急速に進む円高にも関わらず株式市場は堅調な動きとなり、その後は為替市場もNY3連休の週末を前に買い戻しが進みました。その後ユーロドルが大きく値を崩す中でドル円もドル買いの流れとなり、NY市場では106.40レベルまで回復して一日の高値圏での引けとなりました。

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