ドル円 雇用統計アノマリーの高値に注意 (12月第一週)

先週のドル円は、ドル買い材料としてはイエレンFRB 議長による米国経済に対する強気な見通しと上院での税制改革法案可決

ドル円 雇用統計アノマリーの高値に注意 (12月第一週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、ドル買い材料としてはイエレンFRB 議長による米国経済に対する強気な見通しと上院での税制改革法案可決(実際の採決は週末にずれ込み)、いっぽうドル売り材料としては北朝鮮によるICBM級ミサイルの試射とロシアゲート事件に関するフリン前補佐官の発言です。

前者については12月13日のFOMCにおける利上げは既定路線、2018年の3回の利上げも同日の金利見通しで変化が無いと見られますので、来年の新体制になってからのFOMCまでは材料とはなりにくい材料です。また税制改革法案が上院で可決されたことから今後は下院との調整に入り、トランプ大統領は年内の成立を目指していますが、依然として両院の可決内容、特に実施時期については隔たりが大きく、今後どのような調整になっていくのかを見守る必要があります。

また、税制改革法案可決で週明けの市場はドル高のギャップ明けで始まりましたが、上記の通り調整はこれから、しかも調整され成立してようやく最初の公約実現です。来年には早くも中間選挙を控えていることを考えると、矢継ぎ早に他の公約実現へと動く必要があります。そうなると、次にテーブルに乗ってくるのが不均衡是正となる可能性が高く、先日の日米首脳会談、米中首脳会談において何らかの約束が水面下で行われた可能性もあり、今後は米国の対中赤字、対日赤字削減が目立ってくる展開も考えられます。市場の注目度を測るにも今週の米国貿易収支は、雇用統計と並んで注意してもよいでしょう。

次に、ドル売り材料ですが北朝鮮のミサイル試射は米国本土を射程距離に捉えたものの、今回の実験は大気圏再突入時に失敗したとの分析が行われていますので、今後北朝鮮はこの部分を改善すべく更なる実験をしてくる可能性が高いですし、誰が見ても成功という方向となれば今後の最大のリスクのひとつとなることは間違いありません。短期的な材料ではないものの、常に警戒すべき材料です。

そしてフリン前補佐官の発言は想定内だったのかもしれませんが、実際にトランプ大統領の指示でロシアとコンタクトしたということから、更に捜査が強まる可能性もあり、このことが米国政治を空転させるリスクがあり、これもまた注意が必要です。全体として目先の材料と言うよりも中長期の材料が多いものの、ややドルの上値を抑えやすい材料が目立つ印象です。

短期的には、今週は米国雇用統計の発表がありますが、雇用統計というと雇用統計アノマリー(雇用統計前後にドル円はドルの高値をつけやすい傾向がある)が気になります。先週の安値110円台後半は何度か試して上げてきていますが、雇用統計を前に113円台前半が同様に上値を抑えられ何度か試して下げるという動きになる可能性があります。また日柄的には今週は上下に振れやすい一週間となっているため、流れに乗ろうと買うと振り落とされ、下に突っ込むと買い戻しも入る荒っぽいもみあいの週になりやすいと言えます。

テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。

先週書いた通り直近の安値圏は9月安値107.33と11月高値114.73の半値押し(赤いライン)にあたる111.03前後が安値となりました。実際の安値は110.84となりましたので114.73から110.84までの下げに対する戻し(青いライン)を計算すると61.8%戻しが113.24となっていることがわかります。またピンクのラインで示したのは9月高値ですが、このレートも113.25と一致していることがわかります。

仮に113円台前半でドルが上値を抑えられして方向へと転換すると、チャート的にはヘッド&ショルダー型の反転パターンを形成することとなりますし、雇用統計アノマリーの日柄も合わせて考えると、今週から来週にかけて113円台前半で目先の高値をつけて下げに転じると日柄的にも価格的にも調和がとれるチャートを形成していくこととなります。あくまでも可能性には過ぎませんが、以上がテクニカルな見方となります。

材料的にもテクニカルにも今週は上がったところは上値が抑えられやすい展開を考え、111.50レベルをサポートに、113.25レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

12月4日(月)
13:00 黒田日銀総裁講演
13:00 フランス中銀総裁講演
16:00 トルコ11月CPI
**:** メイ英首相、欧州委員長と会談
18:30 英国11月建設業PMI
19:00 ユーロ圏10月PPI
19:00 ギリシャ7〜9月期GDP
24:00 米国10月製造業受注

12月5日(火)
09:30 豪州7〜9月期経常収支
10:45 中国11月MarkItサービス業PMI
12:30 豪中銀政策金利発表
17:50 フランス11月サービス業PMI確報値
17:55 ドイツ11月サービス業PMI確報値
18:00 ユーロ圏11月サービス業PMI確報値
18:30 英国11月サービス業PMI
18:30 南ア7〜9月期GDP
22:30 米国10月貿易収支
23:45 米国11月MarkItサービス業PMI確報値
24:00 米国11月ISM非製造業景況指数

12月6日(水)
09:30 豪州7〜9月期GDP
16:00 ドイツ10月製造業受注
19:30 メルシュECB理事講演
**:** 英国議会で党首討論
22:15 米国11月ADP全国雇用者数
22:30 米国7〜9月期単位労働コスト確報値
24:00 カナダ中銀政策金利発表
24:30 米国週間原油在庫

12月7日(木)
09:30 豪州10月貿易収支
16:00 ドイツ10月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP確報値
20:00 南ア10月製造業生産
21:30 米国11月チャレンジャー人員削減予定数
22:30 米国新規失業保険申請件数
25:00 ドラギECB総裁会見
30:45 NZ7〜9月期製造業売上高

12月8日(金)
08:50 本邦7〜9月期GDP改定値
**:** 中国11月貿易収支
16:00 ドイツ10月貿易収支
16:00 トルコ10月鉱工業生産
16:45 フランス10月鉱工業生産
18:30 英国10月鉱工業生産
18:30 英国10月貿易収支
22:30 米国11月雇用統計
24:00 米国12月ミシガン大消費者信頼感指数速報値
24:00 米国10月卸売在庫

12月9日(土)
 10:30 中国11月CPI、PPI

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値    高値    安値    終値

ドル円  111.65  112.87  110.84  112.18
ユーロ円 133.19  134.37  131.71   133.49
ユーロドル 1.1928 1.1961  1.1808  1.1894
日経平均 22657.08 22994.31 22363.94 22819.03

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

11月27日(月)
 週明けのドル円は寄付きから下げ足を速めた日経平均株価を横目で見ながら円高の動きとなりました。海外市場に移ってからもユーロ高の動きとともにドル売りの流れが継続、欧州市場で前週安値を下回ると一段と上値が重たい流れとなりました。NY市場ではいったん買い戻しも見られましたが、北朝鮮がミサイル発射の準備をしているとのニュースも出てリスクオフへと逆戻り、一時110.84レベルと9月15日以来の安値圏へと沈み込み、引けにかけてやや戻したものの上値の重たい地合いでの引けとなりました。

11月28日(火)
 ドル円は朝方に再び110円台に入り込んだものの、前日同様110円台では買いオーダーも入っている様子で底堅い展開でのスタートとなりました。また株価も前場は上下に振れる場面はあったものの後場以降はじり高の展開となったこともドル円の買い材料となっていました。NY市場では上院で税制改革案が承認されたことを好感し一段高、パウエル次期FRB議長の公聴会もサプライズも無く、また北朝鮮のミサイル発射も予想されていたとはいうもののほとんど材料とならずドル高値圏での引けとなりました。

11月29日(水)
 ドル円は方向感がはっきりせず111円台半ばでのもみあいのまま海外市場入り。海外市場に移ってからは株価が強含みとなったことから底堅い動きとなっていたところに、米国GDPの上方修正、イエレンFRB議長の米国経済に対する自信といった発言からドル円は112円台乗せとなりました。112円台で売買が交錯する中、日経平均先物が夜間取引で水準を下げたことに反応し、引けにかけては小緩んでのクローズとなりました。

11月30日(木)
ドル円は月末の目立った実需も無く東京前場は小動きとなっていましたが、後場に入り日経平均が大幅高となったことを受けリスクオンの円売り相場となりました。112円台半ばでNY市場に入り、米国務長官更迭の噂とロンドンフィキシングの月末のドル売りの動きから一時111.74レベルの安値を付けました。しかし更迭の噂は否定されマケイン上院議員が税制改革法案支持を示したことから一転上昇、NYダウが史上最高値更新となったことも支えとなり112.64レベルまで上伸後に高値圏での引けとなりました。

12月1日(金)
東京時間のドル円は小動き、その後もNY市場までは112円台半ばで狭い値幅のもみあいを続けました。NY市場に入り上院で税制改革法案可決期待から112.87レベルまで上昇したところに、フリン前補佐官がロシアとの接触を大統領の指示と発言したことで急落、111.40レベルの安値を付けました。引けにかけては週末の税制改革法案審議を前にポジション調整も入り、112円台に戻しての引けとなりました。

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