ユーロ週報 押し目買いが続く(17年12月第一週)

先週までドイツの政治イベントに振り回され、見通しもポジションも週替わりで苦労続きでしたが、先週も書いた通りCDU(*)+SPDという流れで今後は協議を続けていく

ユーロ週報 押し目買いが続く(17年12月第一週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週までドイツの政治イベントに振り回され、見通しもポジションも週替わりで苦労続きでしたが、先週も書いた通りCDU(*)+SPDという流れで今後は協議を続けていくこととなり、当面はこれまでの枠組み継続期待からユーロは底堅い動きになってくると考えられます。

*念の為、ここではCDU・CSUの2政党をまとめてCDUと書いています。どちらも似た政党でバイエルン州のみで活動するCSU(党首はゼーホーファー。バイエルン州にCDUは無い)と、その他の全ての州で活動するCDUとを合わせた表現です。今後も同様。

30日の党首会談ではこれといった話は出ず、連立協議を開始する程度の話であった様子しか伺えませんが、これはSPDのシュルツ党首自身が今回のドイツ総選挙後に下野を決断したこともあって、あまり立場を急転させたくないということが影響していると考えられます。会談後も連立が決まったかのような報道に不快感を示し、まだ何も決まっていないといった発言をしています。

しかし、今週末にはSPDの党大会がありますので、楽観論ではここで連立に消極的なシュルツ党首から連立に積極的な新党首へと交代し、SPD新党首とメルケル首相との協議へと移っていくこととなりそうです。また今回CDU+SPDの連立協議を提案した大統領自身もSPDの出身で、現在のドイツ国内の世論(大連立期待)を踏まえながら協議を仲介しているといった状況となっています。

問題としては、SPDが連立にあたってどの程度の要求をCDUにしてくるのか、またCDU側はある程度の妥協はやむを得ずとしているもののそれが妥協の範囲内なのか、不透明な部分も多いのですが、現状は連立の可能性と少数与党となりSPDの閣外協力を得る可能性と、どちらかに落ち着く可能性が高そうです。この場合、ユーロ圏の経済状況は良いこともあって、結果を見るまではユーロ買い材料となりやすく、その後実際の政治運営が始まってからどのようになるか、それはその時点で判断することになると見ています。

ニュースサイトも連立政権の行方で各社の報道が賑やかですが、ドイツのニュースサイトで有名どころというとシュピーゲルです。週末のシュピーゲル(ドイツ語は辞書が必要なので英語サイトをチェック)の記事では、CDU+SPDとなった場合、野党第1党が右派のAFDが最大野党となることもSPDは懸念しているといったことが書いてありました。

AFDは最近の欧州で勢力が強まっている右派政党で前回選挙の0議席から今回は94議席と大躍進していますが、それでもCDU+SPDの399議席から見ればかなり小さな数です。ただ今回の選挙で両党が失った105議席の受け皿となっていることに対する不安も大きいということなのでしょうか。このあたりは、もう少しドイツの政治情勢を研究しておきます。

先週すぐに結論が出ないこと、また大きな流れはSPD党大会以降という点まではコンセンサスだと思いますので、来年の両党の動きに向け当面は好材料としつつ、悪材料が出てきた場合には押し目を形成していくという流れで考えて行こうと思います。

チャートもご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

チャートも先週時点での見方から変化していません。時系列的に「ユーロ高上昇チャンネル(ピンクの平行線)、その後のヘッド&ショルダー(8〜10月)による反転、9月高値からの下降チャンネル(赤の平行線)、ヘッド&ショルダー失敗による下降チャンエルの上抜け、そして現在は11月安値を起点とする上昇トレンド(青の平行線)」と先週書いた最後の青の平行線の中での推移です。

週明けのドル高の動きからユーロドルでもユーロ売りとなり、現在はサポートラインぎりぎりのところに位置しています。ただ、ドイツの政局に対して今のところは期待の方が先行しやすいことを考えると、仮にこのサポートラインを下抜けるようなことがあっても方向性が変わるところまでは行かず、サポートラインの引き直し程度に収まる可能性が高いものと見ています。

今週は、このサポートラインのやや下に均衡表の雲も位置していますので、雲の中へと入り込むと横方向への動きとなりやすいのですが、1.1800レベルをサポートに、先週の高値圏1.1950レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週のコラム

今週はDAX(ドイツ株価指数)のチャートを見てみます。

NYの主要株価指数が軒並み史上最高値を更新する中、日経平均株価はどうも上値が重たいという印象がぬぐえませんが、それ以上に上値が重たいのがDAXです。先週金曜はNY株がフリン前補佐官の発言で下げたあたりで欧州株式市場が終了したということもありますが、日中安値で10月、11月の安値圏を割り込んでいます。

今週のコラム

比較できるよう、上段にDAX、下段に日経平均株価を並べました。こうして見るとよくわかりますが、DAXは11月第1週に高値をつけた後は15日に向けて下落、10月安値をわずかに更新し、11月後半はもみあい。そして12月1日、先週金曜日に今度は11月安値を更新する動きです。

ECBの緩和縮小の決定やドイツの政治状況などいくつか要因はあるものの、他市場の株式に比べると弱い動きとなっていて、ストラテジストは波乱材料とも言えず今後は業績相場といった見方をしているのですが、チャートの形がよくありません。

ユーロドル自体は上方向を見ているのですが、ひょっとすると株安によるユーロ安といった伏兵となる可能性も無視できず、しばらくの間ドイツの政治と併せてDAXの動きも気にしたいところです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

12月4日(月)
13:00 フランス中銀総裁講演
**:** メイ英首相、欧州委員長と会談
18:30 英国11月建設業PMI
19:00 ユーロ圏10月PPI
19:00 ギリシャ7〜9月期GDP

12月5日(火)
17:50 フランス11月サービス業PMI確報値
17:55 ドイツ11月サービス業PMI確報値
18:00 ユーロ圏11月サービス業PMI確報値
18:30 英国11月サービス業PMI

12月6日(水)
16:00 ドイツ10月製造業受注
19:30 メルシュECB理事講演
**:** 英国議会で党首討論

12月7日(木)
16:00 ドイツ10月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP確報値
25:00 ドラギECB総裁会見

12月8日(金)
16:00 ドイツ10月貿易収支
16:45 フランス10月鉱工業生産
18:30 英国10月鉱工業生産
18:30 英国10月貿易収支
22:30 米国11月雇用統計

前週のユーロレンジ

        始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.1928 1.1961 1.1808 1.1894
ユーロ円  133.19 134.37 131.71 133.49

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

11月27日(月)
 ドイツの新たな連立協議進展を好感したユーロ買いが継続し、ドル売りの動きとともにNY市場では一時1.1961レベルまで高値を切り上げました。しかしSPDのシュルツ党首が30日の会談はまだどうなるかわからないと述べたことや、CDU側も協議は年明けとの見通しを示したことで引けにかけては1.19を割り込む動きとなりました。

11月28日(火)
 東京市場では動きは無かったものの、欧州市場以降は前日のドイツ連立の話は30日の党首会談を待ちたいとの判断から利食いが広がったこと、また実際の連立には時間がかかるとの判断から買い手が引いた感じでした。その後もドル高の動きとともにじり安の展開を辿り、先週末に上げる前の水準へ押しての引けとなりました。

11月29日(水)
 東京市場では動意薄だったものの、欧州市場では英国と欧州との間の清算金合意が近いとのニュースからポンド、ユーロともに買いが先行しました。その後は全般的なドル買いの動きに引っ張られすぐに反転、NY市場が始まる頃には前日安値を割り込んでいましたが、引けにかけては上下に振れる前の水準へと戻し、ドイツの政治イベントを見守る動きとなりました。

11月30日(木)
東京後場のドル高の動きからじり安の動きとなり、予想より弱い経済指標も手伝って1.1809レベルと前日安値を割り込みました。しかしその後は、NY市場でのドル売りの動きから1.1932レベルへと大幅高となり、NY後場のドル買いの動きにもあまり影響を受けず、ユーロ円の買いも手伝って1.19台を維持しての引けとなりました。

12月1日(金)
 ドイツのCDU+SPDの連立期待もあり欧州市場序盤まではじり高の展開となりましたが、その後は協議開始にすぎないとの現実に目が向き東京前場の水準に押してのNY市場入り。NY市場ではフリン前補佐官の発言からドル売りの動きとなったため、ユーロは一段安の後に急反発、引けにかけては東京前場の水準に押してと方向感がはっきりしない週末クローズとなりました。

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