今週の週間見通し「戻りは弱く下値模索が続く」
*今週より「前週の主要レート」「前週の概況」を含む全文を掲載します
先週のドル円は日米両市場ともに23日木曜が休場となり、週末に挟まれる24日も動意薄となったことから実質的な動きは水曜までといった状態でした。週初はドイツの政局を懸念してユーロドルが大きく下げたことからドル円でもドル買いの動きが出たものの、月曜のみで終了。その後は概してドル安の印象が強い一週間でした。
火曜には米国が北朝鮮をテロ支援国家に再指定したことや、水曜にモラー特別捜査官によるトランプ大統領周辺への操作に言及、水曜NY後場のFOMC議事録で利上げに反対するメンバーがいたとの内容から、ドルが一段安となり翌日のアジア市場朝方に週間安値の111.06レベルまで水準を下げました。これは、それに先立つイエレン議長の講演でもハト派的な内容となっていましたが、12月利上げは既定路線であるものの、来年の利上げペースが減速する可能性によるものです。先週示した長期金利の利回りも来年の経済に対する不安やこうした利上げペースの鈍化を織り込んだ動きと言えます。
今週は、大きな材料としては28日のパウエルFRB議長の公聴会、ここで来年以降の金融政策について何らかの言及をするのかが注目されますが、既に現在の理事でもある同氏がサプライズの発言をするとは到底思えず、これは波乱が無い材料ではないかと見ています。そして、29日のイエレン議長の議会証言とベージュブック、こちらのほうが2018年に利上げに対する思惑が出やすい材料です。前回のFOMCでは2017年、2018年ともそれぞれ3回ずつの利上げが行われる金利見通しが提示されていましたが、それに対して鈍化する材料が見つけられるかどうかが注目です。
そして30日にはOPEC総会とメルケル首相とSPD党首の会談があります。前者は、最近の原油価格の強含みの要因のひとつですが、これまでの減産合意を継続することがコンセンサスです。直近の価格上昇から減産量を増やすことは考えにくいのですが、可能性はゼロではありません。その場合はサプライズでエネルギー価格の上昇によるインフレ期待が高まり再び金利上昇圧力に結びつく可能性もあります。
いっぽうで、減産量が減少するとか減産合意の期限決定など、将来的な原油価格下落に繋がるような話が出て来ると、インフレ期待も低下して米金利の動き次第ではドルが下げる可能性につながります。現状では現在の減産合意をそのまま継続することがコンセンサスですでに織り込まれていることを考えると材料出尽くしで、やや売りが出やすい流れになる可能性が本命であると言えそうです。
次にドイツの党首会談ですが、いままでの連立協議から枠組みを変えこれまで同様にSPDと組むという流れが急速に出ています。これはユーロ高への何度目の回帰になるか数えていませんが、これが決まれば改めてユーロ買いに動きやすくなり、この動きがドル売りへと繋がる可能性がありそうです。
これまでの材料に加え、まだわからないもののドル売りに繋がりやすい材料が出る可能性を考えると今週も基本はドルの上値が重たい週を考えることとなりますが、チャートも見てみましょう。
9月下旬以降の動き(フタコブラクダの様な高値形成)を見ると、先週の安値は9月安値107.33と11月高値114.73の半値押しにあたる111.03とほぼ同じレートで止められました。その後の勢いは弱いものの反発していますが、先週の下げで下抜けた38.2%押しの111.90はそれまでの安値圏とも重なり、戻しのターゲットとしては同水準となると同時に、上値も重たくなってくる水準と考えられます。
再び半値押しの水準を下抜け61.8%押しの110.16、大台を目指すにはまだ時間経過が足りないと思うものの、方向性はそちらというチャートと考えられます。今週は上値が重くどこか(上記さまざまなイベントがきっかけ)で下げる動きとなれば、先週安値を下抜け110円台後半へと下押しして来る展開が濃厚です。今週も基本はドル安と考え、110.50レベルをサポートに、112.00レベルをレジスタンスと、下方向に余裕のあるレンジを見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。
11月27日(月)
24:00 米国10月新築住宅販売件数
24:30 米国11月ダラス連銀製造業活動指数
11月28日(火)
09:00 NY連銀総裁講演
16:45 フランス11月消費者信頼感指数
19:00 南ア10〜12月期企業信頼感指数
21:00 ドイツ12月GFK消費者信頼感
23:00 米国9月住宅価格指数
23:00 米国9月ケースシラー住宅価格指数
24:00 米国11月消費者信頼感指数
24:00 上院パウエル次期FRB議長公聴会
24:15 フィラデルフィア連銀総裁講演
25:15 カナダ中銀総裁会見
11月29日(水)
15:00 南ア10月マネーサプライ
16:45 フランス7〜9月期GDP改定値
19:00 ユーロ圏11月消費者信頼感確報値
22:00 ドイツ11月CPI速報値
22:30 米国7〜9月期GDP改定値
22:30 NY連銀総裁講演
24:00 イエレンFRB議長議会証言
24:30 米国週間原油在庫
26:00 ドイツ連銀総裁講演
26:45 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
28:00 ベージュブック
30:45 NZ10月住宅建設許可
11月30日(木)
08:50 本邦10月鉱工業生産
09:00 NZ11月ANZ企業信頼感
09:01 英国11月GFK消費者信頼感
09:30 豪州10月住宅建設許可
10:00 中国11月製造業・非製造業PMI
15:45 スペイン7〜9月期GDP確報値
15:45 スイス7〜9月期GDP
16:00 トルコ10月貿易収支
16:45 フランス11月CPI速報値
**:** OPEC総会
**:** メルケル首相、SPD党首と会談
17:55 ドイツ11月失業率
18:30 南ア10月PPI
19:00 ユーロ圏11月CPI
19:00 ユーロ圏9月失業率
21:00 南ア10月貿易収支
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国10月個人所得・消費支出
23:45 米国11月シカゴ購買部協会景気指数
26:30 クオールズFRB副議長講演
27:00 ダラス連銀総裁講演
12月1日(金)
08:30 本邦10月CPI、11月東京区部CPI
08:30 本邦10月失業率・有効求人倍率
10:45 中国11月MarkIt製造業PMI
17:50 フランス11月製造業PMI確報値
17:55 ドイツ11月製造業PMI確報値
18:00 ユーロ圏11月製造業PMI確報値
18:30 英国11月製造業PMI
22:30 カナダ7〜9月期GDP
23:05 (セントルイス連銀総裁講演)
23:30 ダラス連銀総裁講演
24:00 米国11月ISM製造業景況指数
24:00 米国10月建設支出
24:15 フィラデルフィア連銀総裁講演
前週の主要レート(週間レンジ)
始値 高値 安値 終値
ドル円 112.03 112.72 111.06 111.53
ユーロ円 131.44 133.24 131.22 133.10
ユーロドル 1.1732 1.1944 1.1713 1.1931
日経平均 22279.98 22677.34 22215.07 22550.85
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
前週の概況
11月20日(月)
前週の英国、今週はドイツと欧州の政局が市場の混乱を招いての週明けとなりました。ドイツの3党連立協議が決裂したことでユーロ円も大きく下げる展開となり、株式市場も売りが先行、ドル円は上値の重たい展開が続きました。しかし海外市場に移ってからは主要株価指数先物に広く買いが入り、NY市場では株高によるリスクオンと米金利高からドル円は112円台半ばまで買われ高値圏での引けとなりました。
11月21日(火)
主要通貨は全般に動意薄の一日となりました。ドル円は強い株価動きをよそに112円台後半から半ばへと終日水準を切り下げる展開となりました。米国が北朝鮮をテロ支援国家に再指定したことやドイツの政局が不透明なことから消去法で円が買われやすいという判断に加え、目立った材料が無い中23日が日米両国とも休場となることで参加者の動き自体も鈍ってきている様子でした。
11月22日(水)
米国モラー捜査官の動きを警戒してドルは全般に上値が重たいスタートを切りました。その後、イエレンFRB議長の講演はサプライズは無かったものの金利先高観を鈍らせるような内容と取れ、これもドルの上値を抑える材料となりました。欧州市場に入るとドル円は111円台へと入り込み、NY市場では株安の動きにつられドルが一段安。FOMC議事録も利上げに反対するメンバーがいたとの内容から、ドルは111.14レベルをつけてドル安値圏での引けとなりました。
11月23日(木)
東京とNYが休場となりドル円はまったくの動意薄、アジア市場で111.06レベルとわずかに安値を更新した後はほとんど動かないままで一日を終えました。
11月24日(金)
ドル円はまったくの動意薄、東京、NY市場とも休みに挟まれた金曜ということもあって、仲値で実需のドル買いがやや見られた程度でその後は111円台半ばの狭いレンジでのもみあいに終始したままの動きとなりました。ユーロがドイツの政局が進展する思惑も浮上し、海外市場ではユーロ円の買いもややドル円に底堅さを与えていました。
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