アジアの地政学リスク再燃、円高傾向続くか(8/29夕)

29日の東京市場は、ドル安・円高。一時108.30円台まで値を下げ、直近安値を更新し、108.13円の年初来安値に迫る局面も観測されていた。

アジアの地政学リスク再燃、円高傾向続くか(8/29夕)

<< 東京市場の動き >>

29日の東京市場は、ドル安・円高。一時108.30円台まで値を下げ、直近安値を更新し、108.13円の年初来安値に迫る局面も観測されていた。

寄り付いた109.20-25円が、本日の日中高値に。オープン直後にドルは急落し、そのまま一気に日中安値を試す展開をたどっている。「北朝鮮がミサイルを発射し、北海道上空を通過した」−−などといった報道が材料視され、リスク回避の円買いが殺到したもようだ。なお、円は対ドル以外、ユーロやポンド、豪ドルなどクロスでも買い進まれると、一時全面高の様相に。
しかし、徐々に落ち着きを取り戻すと、ドル/円、クロスとも反発に転じる。ドル/円は109円前後まで値を戻すも上値は重く上げ渋り。16時時点では108.75-80円で推移し、欧米時間を迎えている。

一方、材料面として話題となっていたものは、なんといっても前述した北朝鮮情勢。ミサイル発射について、安倍首相から「これまでにない深刻かつ重大な脅威」、米国防総省からは「北米への脅威を与えるものではない」−−とのコメントが聞かれるなか、今回の件について安倍首相はトランプ米大統領と40分ほどの電話会談を実施している。
また、安倍首相などが開催を要請した国連安保理の緊急会合は、「日本時間30日朝の開催見込み」と報じられていた。

<< 欧米市場の見通し >>

先日、米韓両国の要人から、合同軍事演習中にもかかわらず行動を見送った、「北朝鮮の自制」を評価するコメントが発せられ、危機はいくぶん遠退いた感があったものの、舌の根も乾かぬ先週末26日そして本日と北朝鮮は立て続けのミサイル発射に動いており、マーケットの危機感が再燃してきた感を否めない。対話による解決余地も残していたトランプ米政権だが、結果、北朝鮮はこの仕打ち。メンツが丸潰れにされただけに、いったいどう反応するのか米国サイドの出方に注意を払いたい。
ただ、「北のミサイル発射」について、東京タイムは「円全面高」で反応したものの、今後も同様の展開をたどることに疑問を抱く向きは少なくない。米朝間の緊張に日本が巻き込まれ、実際にダメージを負うような事態となれば、「リスク回避の円買い」となる可能性は低い気もしている。

テクニカルに見た場合、直近1週間程度形成していたレンジだけでなく、「8月以降」形成していたボックス圏(108.60-111.05円)も本日の東京時間にしっかりと下抜けした。次のターゲットは4月に記録した年初来安値108.13円で、割り込むようだと明確なサポートはしばらく見当たらず、強いテクニカルポイントとなると106.30円レベルか。ドルがそのレベルまで一気に急落するとは予想していないが、サマーバカンスに入っている向きもまだ多く、流動性も乏しいだけに、思わぬ価格変動には注意を払いたい。

一方、材料面を見た場合、6月のS&Pケースシラー住宅価格指数や8月の消費者信頼感指数といった重要な米経済指標が発表されるほか、エバンズ・シカゴ連銀総裁が会合で挨拶、米財務省による7年債入札−−など注目要因が盛りだくさん。当然、それら要因にまずは要注意だが、やはり北朝鮮をめぐる様々な情勢、各国要人の発言や対応などに、より注意を払いたいところだ。

以上を踏まえた本日欧米時間のドル/円予想レンジは、108.10-109.30円。ドル高・円安方向は、本日の東京時間、安値記録後の戻り高値である109円が最初の抵抗で、抜ければ109.40円レベルがターゲットに。
対するドル安・円高方向は、本日東京時間の安値108.30-35円をめぐる攻防に注目。割り込めば年初来安値108.13円が名実ともに視界内に。(了)

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