ドル円 岐路は上げにただし115円は高値(7月第二週)

振り返れば円独歩安の週となりました。週初の段階では上下どちらに動きが出て来るか岐路の週と考え、材料的にはまだ円高リスクの方が大きいという見方をしていましたが、

ドル円 岐路は上げにただし115円は高値(7月第二週)

前週の主要レート(週間レンジ)

    始値   高値  安値  終値

ドル円 112.25 114.18 112.20 113.90
ユーロ円 128.23 130.12 128.00 129.87
ユーロドル 1.1424 1.1440 1.1313 1.1401
日経平均 20056.32 20197.16 19856.65 19929.09

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

7月3日(月)

ドル円は週末の流れを受けてリスクオンの円売りが続きました。東京市場では早朝に都議選で自民大敗のニュースに反応して円買いで動いた向きのストップによる買い戻し程度でしたが、海外市場に移り日経先物の夜間取引が株高の動きとなり、前週高値を抜けると仕掛けのストップ買いも加わって113円台乗せ。NY市場でも強い経済指標と高値を更新したNYダウの動きを見ながら113.47レベルまで円安が進みました。ユーロドルもドル円でのドル買いに引っ張られてユーロ売りの動きとなりましたが、ユーロ円は先週高値を超え128.95レベルの高値をつけました。

7月4日(火)

米国市場が休場ということもあり、動きとしては実質東京市場のみとなりましたが、朝方こそ前日NYの動きを受け高く始まったドル円は北朝鮮のミサイル発射のニュースとともに、利食い売りが先行しました。株価、為替ともにリスクオフの動きとなる中、北朝鮮が重大発表を行うとのニュースにリスクオフが進み、発表内容はICBMの実験に成功したとのことから、一時ドル円は112.74レベルの安値を付けました。その後は日計り組の買い戻しも出て113円台に戻しての引けとなりました。いっぽう、ユーロドルは北朝鮮の発表時にユーロ円での売りも入ったことから一時的に下げる場面も見られましたが、ほとんど動意の無いままECB関係者の発言にも反応が薄いままでの引けとなりました。

7月5日(水)

東京市場は北朝鮮に絡んだリスクオフの動きから株安、円高が先行する動きとなりましたが、日経平均とともに昼前には反転し、ドル円は112.83レベルが安値となりました。欧州市場に入るとロシアと中国が北朝鮮問題で協力するとの話から一転リスクオフの巻き返しとなり、113.69レベルの高値へと水準を切り上げました。既に欧州市場から売りが強まっていた原油がNY市場に入り大幅安となったこと、また弱い経済指標も手伝ってドル円は113円目前まで水準を下げ、FOMC議事録ではバランスシート縮小に関してFOMCメンバーの意見が分かれていたことから再び112円台へと入り、引けにかけては113円台前半へと戻すと忙しい値動きの一日となりました。いっぽうユーロドルは、欧州市場のクーレECB理事講演で金融政策変更の協議は無いとの発言に反応し1.1313レベルまで下落したものの、引けにかけては下げる前の水準へとじり高の動きとなりました。

7月6日(木)

東京前場のドル円は、FOMC議事録に株高に対する懸念が示されていたことが尾を引いて、株安円高の動きとなりました。後場以降も株安は継続したものの、ドル円はユーロ円を中心としたクロス円の買いに支えられ欧州市場序盤には113.47レベルまで切り返し。その後は動意薄の中でやや押しての引けとなりました。いっぽうユーロドルは、ECB理事会の議事録において緩和を見直す可能性とタカ派な内容に反応し、ユーロが全ての通貨に対して上昇、NY市場ではユーロドルが1.1425レベル、ユーロ円は129.42レベルまで上昇し、それぞれ高値圏での引けとなりました。

7月7日(金)

東京前場のドル円は、日銀が金利上昇抑制姿勢を示すため、5カ月ぶりに指値オペを実施するとのニュースに、ドル円、クロス円ともに円安に振れる動きとなりました。ドル円は週間高値を更新し底堅い地合いで米国雇用統計を迎えることとなりましたが、雇用統計は予想よりも強いNFPに反応し昼前には114.18レベルの高値をつけました。ユーロドルもドル買いの動きから上値は重たくなったものの値動きは限定的な物に留まり、結果としてユーロ円が130.12レベルまで上伸し、やや押しての引けとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

7月10日(月)
08:50 本邦5月貿易収支(国際収支)
09:30 黒田日銀総裁挨拶
10:30 中国6月CPI、PPI
23:00 米国6月労働市場情勢指数
**:** ユーロ圏財務相会合(〜11日)

7月11日(火)
10:30 豪州6月NAB企業景況感
12:05 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
20:00 南ア5月製造業生産
23:00 米国5月卸売在庫・卸売売上高
25:30 ブレイナードFRB理事講演

7月12日(水)
17:30 英国6月失業率
23:00 カナダ中銀生先金利発表
23:00 イエレンFRB議長下院議会証言
23:30 米国週間原油在庫
24:15 カナダ中銀総裁記者会見
27:00 ベージュブック
27:15 (カンザスシティ連銀総裁講演)

7月13日(木)
**:** 中国6月貿易収支
15:00 ドイツ6月CPI確報値
21:30 米国6月PPI
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 イエレンFRB議長上院議会証言
24:30 シカゴ連銀総裁講演
26:00 ブレイナードFRB理事講演

7月14日(金)
07:30 NZ6月企業景況感
17:00 オーストリア中銀金融安定報告書
18:00 ユーロ圏5月貿易収支
**:** 本日から米銀決算発表が続く
21:30 米国6月CPI
21:30 米国6月小売売上高
22:15 米国6月鉱工業生産、設備稼働率
22:30 ダラス連銀総裁講演
23:00 米国7月ミシガン大消費者信頼感指数速報値
23:00 米国5月企業在庫

今週の週間見通し

振り返れば円独歩安の週となりました。週初の段階では上下どちらに動きが出て来るか岐路の週と考え、材料的にはまだ円高リスクの方が大きいという見方をしていましたが、前週までのリスクオフの巻き返しが続く中、北朝鮮のICBM発射も一時的な押しに留まり、週末には日銀の指値オペ実施、強い米国雇用統計と円安が進んでの週末クローズとなりました。

テクニカルにも年初来高値や3月高値から延びるレジスタンスラインを週末終値でしっかりと上抜けてきたことで、いったん円高を見る流れは短期的には終了。長期的な円高トレンドに変調が出てきているのかどうかは今後の展開次第であるという流れになっています。

材料的には主要国の中で唯一金融緩和のスタンスを明確にしている日銀に対して、他の主要国は軒並み金融緩和後退から引き締めへの転換を探っており、古い材料ではあるもののドル円の下支えを継続しています。また、不安材料もある中、主要国の株価指数は堅調な地合いを続けていますし、原油価格も一時期の下値不安から完全に復活してきました。これらは間違いなく円売り材料となりますが、円買い材料が無いわけではありません。

ハンブルクサミットにおいて、日米首脳会談が行われましたが、トランプ大統領は日米首脳会談において対日貿易赤字の是正を要求しています。これも今まで同様と聞き流すことも出来ますが、対中国との100日計画も今週末に期限を迎える中、国内外で停滞する米国政治の打開策のひとつとして、日本の貿易黒字を目先のテーマにしてくる可能性があります。

また、最近は恒例行事と化している感はあるものの、北朝鮮のミサイル技術は短期間に着実な進歩を示していて、地政学的リスクとして常に考えなくてはならない問題です。中国とロシアによる対話策が功を奏するかどうかを見守っている段階ではありますが、米国にとって受け入れられないような方向に進みそうになってきた時は、朝鮮半島リスク第2幕が開幕となりかねません。

どちらも今すぐの話ではありませんが、短期的には円安の動きとなりやすい中で、おそらく115円の大台はかなり意識されやすい水準、そして年初来高値となっている118.60レベルはよほど材料が重ならない限りはトライしきれない水準であるというのが現状の見方です。

日足チャートもご覧ください。

レジスタンスラインは超えてきていることが明確ですが、現行水準よりも上(円安)のターゲットとして、114.37(5月高値)、114.64(昨年12月高値と今年安値の61.8%戻し)、115.05(4月安値を起点に5月高値、6月安値への押しからN波動の100%フィボナッチ・エクスパンション)、115.50(3月高値)と、かなり断続的に重要なターゲットが見られます。

今回の円安トレンドがいったん止まる水準としては114円台半ばから115円台半ば、ざっくりと115円水準と見ておけばよさそうです。今週は週初の水準を中心として、113円レベルをサポートに、115円レベルをレジスタンスとする一週間を見ておこうと思います。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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