<概況>
5月17日にトランプ大統領弾劾への動きを懸念してリスク回避的な円高となり、日足は前日比で2円以上の下落、5月18日には110.23円まで下落した。その後は6月2日の米雇用統計まで凡そ2円幅での持合いが続いていた。6月2日の米雇用統計では失業率が4.3%まで改善したものの非農業部門就業者増加数が予想を大幅に下回ったためにドル全面安となり、5月18日安値に迫った。
週明けの6月5日は110.50円を挟んだ小幅レンジ持合いだったが、6日午前からの下落で雇用統計後の安値を割り込み、さらに5月18日安値も割り込んで持合い下放れとなり、7日夜への続落で109.11円まで下げた。この段階では、5月11日の戻り高値からの下落が5月18日までを一段目とし、底割れにより二段目の下落に入った印象が強まった。
6月7日安値から8日にかけて戻した当初は109円割れからの一段安へ進むには時期尚早とし、8日夜のECB理事会、コミー前FBI長官の米上院公聴会証言、英国総選挙等の重要イベントを控えてのポジション調整的に戻したという印象だった。
8日のECB金融政策が金融緩和姿勢の継続となってユーロ安ドル高となった。コミー前長官の証言は真新しいものはなく、トランプ大統領弾劾への動きを加速させるほどではなかったとしてNYダウは楽観的に史上最高値を更新、ドル円も戻りを継続した。
9日は特に材料的なイベント、発表事はなく、アップル等IT関連株安で米ナスダック指数が下げたがNYダウは3日連続で史上最高値を更新、欧州株も軒並み上昇してリスクオン心理が優勢となったためにドル円も続伸、22時台には110.80円まで戻り高値を更新したが、深夜からは反落、110円台前半まで押して終了した。
【6月15日未明、FOMCでサプライズあるか?】
6月13日から14日に米連銀FOMC(連邦公開市場委員会、金融政策決定会合)が開催される。日本時間15日午前3時に声明発表、3時半から議長会見がある。
昨年12月に利上げされた段階で、FOMCメンバーによる2017年の利上げ回数予想は3回とされた。当初、市場は3月利上げはないだろうと見ていたが、2月末からのFOMCメンバーによる利上げ支持発言から利上げ確率が急上昇し、ドル円も3月10日には115.50円まで戻した。しかし、利上げ決定後は材料消化とし、またその時点からは6月のFOMCでも利上げされるであろうと予想されてきた。
現時点では9月の利上げはないだろうというのが市場のコンセンサスであり、15日未明のFOMC声明、議長会見で9月利上げ姿勢が示されなければ、一時的な利上げ決定によるドル高反応は合ってもその後は5月11日以降の流れ=ドル安へと変わるのではないかと思われる。市場はそうした流れを想定してドル安円高で推移してきた。
予想通りに利上げが決定され、9月利上げの可能性がより低下する場合、一時的なドル高反応を早々に消化して円高ドル安の再開とし、4月17日安値を試す下落、さらに底割れへ進む可能性が考えられる。
仮に利上げが見送られればサプライズ的なドル安円高の加速として一挙に4月17日安値割れとなり、まず3月10日から4月17日への下げ波動並の円高ドル安としてN波計算値=106.97円前後を目指す可能性が想定される。逆に9月利上げが示唆される場合はサプライズ的なドル高円安反応となる可能性もある。その場合は112円超え、113円台を目指す上昇が考えられる。
【日足揉み合いレンジへの突入には失敗、上値攻防継続】
5月18日から6月5日までの持合い相場の下値支持帯は110円台前半、上値抵抗帯は112円前後であった。6月9日夜への上昇では110.80円まで戻して支持帯を超えかけたが、深夜に反落したために前回支持帯突破による元の持合いレンジ抵抗帯への一段高は未達成となっている。
6月9日夜高値を上抜く場合、5月18日から6月5日にかけてのレンジへの回帰とし、レンジ上限の111.50円から112.00円のゾーンを試す可能性が出てくる。しかし、6月12日に失速して110円以下での推移が続き始める場合は元のレンジへの回帰失敗として6月7日安値試し、さらに安値更新による一段安へ進みやすくなると思われる。週末、5月11日と6月2日を結んだレジスタンスラインにワンタッチしているだけに、足許の下値変化が警戒される(5月11日高値からの下降ウェッジ上辺到達の可能性=下辺狙いに変化)。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では、6月8日の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜き、週末も両スパン好転を維持して終了している。このため、両スパン好転中はまだ戻り高値を試す可能性が維持されるが、110円割れしてくる場合は遅行スパンが悪化し、先行スパンへ潜り込むため、戻り一巡からの下げ再開となる可能性がある。
60分足の14本相対力指数は9日夜の段階で70ポイントに到達してから50ポイント割れまで下降した。6月7日からは指数の弱気逆行が見られていないため、12日へさらに高値を更新する場合は弱気逆行となる可能性に注意する。また高値更新せずに110円割れの状況が続く場合は弱気逆行を待たずに下落期入りと仮定して指数の30ポイント割れへの下降を想定する。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月2日高値から5日目の6月9日夜高値でサイクルのピークをつけた可能性がある。このため、110円割れから続落なら弱気サイクル入りと仮定して次の安値形成期となる12日夜から14日への下落へ進みやすくなると思われる。しかし、9日夜高値を上抜く場合は、連続的な上昇サイクル入りにより週後半へと戻り高値試しが続く可能性がある。
以上を踏まえ、FOMC前段階では、(1) 110円割れから続落なら6月7日安値109.10円前後試しへの下落を想定するが109.50円割れからは突っ込み警戒、反発注意とみる。(2) 9日夜高値110.80円超えからは111.50円から112円手前への上昇を想定するが、111.50円以上は戻り売りからの反落注意とし、110.50円前後へ押し返されるとみる。(了)<11日22:00執筆>
【今週の主な予定】
6月14日
(中) 11:00 中国5月小売売上高 前年比 (4月 +10.7%、予想 +10.7%)
(中) 11:006 中国5月鉱工業生産 前年比 (4月 +6.5%、予想 +6.4%)
(中) 11:00 中国5月固定資産投資
(日) 13:30 4月鉱工業生産・確報値
(米) 21:30 米5月消費者物価指数 前月比 (4月 +0.2%、予想 +0.0%)
(米) 21:30 米5月消費者物価指数・コア 前月比 (4月 +0.1%、予想 +0.2%)
(米) 21:30 米5月消費者物価指数 前年比 (4月 +2.2%、予想 +2.0%)
(米) 21:30 米5月消費者物価指数・コア 前年比 (4月 +1.9%、予想 +1.9%)
(米) 21:30 米5月小売売上高 前月比 (4月 +0.4%、予想 +0.1%)
(米) 21:30 米5月小売売上高 除自動車 (4月 +0.3%、予想 +0.2%)
(米) 23:00 米4月企業在庫
6月11日
フランス国民議会(下院)選挙1回目、イタリア地方選挙
6月12日
(豪) シドニー市場休場(女王誕生日)
(日) 8:50 4月機械受注(前月比 3月+1.4%、予想 +0.5%)
6月13日
(米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、14日まで
(米) 3:00 米5月財政収支
(日) 8:50 4-6月期景況判断BSI・大企業全産業、製造業
(米) 21:30 米5月生産者物価指数 前月比(4月 +0.5%、予想 +0.0%)
(米) 21:30 米5月生産者物価指数コア 前月比 (4月 +0.4%、予想 +0.2%)
(米) 21:30 米5月生産者物価指数 前年比(4月 +2.5%、予想 +2.3%)
(米) 21:30 米5月生産者物価指数コア 前年比 (4月 +1.9%、予想 +2.0%)
6月15日
(米) 3:00 米連邦公開市場委員会(FOMC)結果公表
(米) 3:30 イエレン米連銀議長会見
(日) 日銀金融政策決定会合(16日まで)
(英) 20:00 BOE金融政策委員会、政策金利発表
(米) 21:30 米6月NY連銀製造業景況指数 (5月 -1.0、 予想 4.0)
(米) 21:30 米新規失業保険申請件数 (前週 24.5万件、予想 24.2万件)
(米) 21:30 米6月フィラデルフィア連銀製造業指数 (5月 38.8、予想 24.5)
(米) 22:15 米5月鉱工業生産 (4月 +1.0%、予想 +0.2%)
(米) 22:15 米5月設備稼働率 (4月 76.7%、予想 76.8%)
(米) 23:00 米6月NAHB住宅市場指数 (5月 70、予想 70)
6月16日
南ア市場休場(青年の日)
(日) 日銀金融政策決定会合結果公表
(欧) EU、ユーロ圏財務相会合(ルクセンブルグ、15日から)
(日) 15:30 黒田日銀総裁、会見
(米) 21:30 米5月住宅着工件数 (4月 117.2万戸、予想 122.0万戸)
(米) 21:30 米5月建設許可件数 (4月 122.9万戸、予想 125.0万戸)
(米) 23:00 米6月ミシガン大学消費者信頼感指数速報 (5月 97.1、予想 97.1)
(米) 23:00 米5月労働市場情勢指数
6月17日
(米) 1:45 カプラン米ダラス連銀総裁、講演
6月18日
(仏) フランス国民議会(下院)選挙、決戦投票
オーダー/ポジション状況
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