ドル円見通し 第一次トランプ政権における円高の教訓(24/12/25)

ドル円は、157円割れを買われつつ25日未明に157.37円まで高値を若干切り上げて確りしている。

ドル円見通し 第一次トランプ政権における円高の教訓(24/12/25)

第一次トランプ政権における円高の教訓

〇ドル円、157円割れを買われつつ、12/25未明に157.37まで高値を若干切り上げて確り
〇本日の植田総裁講演、円安抑制の立場から市場けん制する発言がみられるか注目
〇米国の利下げペースダウン、日銀の利上げ急がない姿勢で年末から年明けにかけて円安継続しやすい
〇日銀の追加利上げ、米国の利下げ継続は変わらず、7/3高値161.94超えは難しい
〇円安けん制発言相次ぐ、160円到達では介入の可能性高まる
〇米10年債利回りは一時4.63%つけ上昇基調続く、米株式市場は10日続落後に4連騰
〇156.50以上で推移中は一段高余地あり、157.50超えから12/20午前高値157.92前後への上昇想定
〇156.50割れから続落の場合は12/21未明安値155.95試し

【概況】

ドル円は19日早朝のFOMC(0.25%利下げ決定の上で2025年の利下げ想定を2回に半減)と日銀追加利上げ見送りにより、154円近辺から20日午前高値157.92円へ急上昇し、当面の重要イベント通過によるポジション調整で21日未明に一時156円を割り込んだが、23日夜に157円台序盤へ戻した後は157円割れを買われつつ25日未明に157.37円まで高値を若干切り上げて確りしている。

24日はノルウェー、スイス、ドイツ、メキシコ、ブラジル、南ア等が休場で、米国市場は株式・債券が短縮取引だったが、25日は欧米等が総じてクリスマス休場となる。
25日12時50分から日銀の植田総裁が経団連で講演を行うが、19日に日銀が利上げを見送り、植田総裁が会見において利上げ判断に際してはトランプ政権発足後の状況や春闘を見たいとの姿勢を示したことがハト派的と受け止められてドル円の急伸を招いたため、円安抑制の立場から市場をけん制するような発言がみられるか注目される。特に円安への警戒感が薄いとされればドル円の一段高を招く可能性があり、タカ派的姿勢を強調すればドル円もいったん反落反応を見せても不思議ない。

【第一次トランプ政権期は終始円高】

ドル円の中勢トレンドは米長期金利指標の10年債利回り動向とほぼ正相関で推移しており、24日も米10年債利回りは9月17日以降の最高を更新している。米国の利下げペースダウンによるドル高圧力、日銀の利上げを急がない姿勢による円売り圧力がかかりやすい状況により年末から年明けにかけては円安が継続しやすいと思われるが、多少遅れても日銀が追加利上げに踏み切ること、米国もペースダウンはしても利下げ継続は変わらないことを踏まえれば、7月3日高値161.94円を超えるには無理がありそうだ。

トランプ政権発足後については、保護主義が全面化し、米国第一主義による高関税政策等がインフレを招くとの見方があるものの、その保護主義的な圧力が円高を招きやすい側面もある。第一次トランプ政権(2017年1月から2021年1月)時代にドル円は2016年12月15日高値118.65円から2021年1月6日安値102.56円(2020年3月のパンデミックショックによる一時的急落で101.23円を付けている)まで円高基調で推移している。
12月24日に加藤財務相は最近の円安について「これまでとスタンスは変わらない。行きすぎた動きには適切に対応をとりたい」、「投機的な動向を含め、市場動向を憂慮している。足元では一方的、急激な動きがみられる」とけん制的な発言を行った。20日には三村財務官が「行き過ぎた動きに対しては適切な対応を取りたい」「投機的な動きも含めて憂慮している」とけん制的な発言を行っている。今年4月29日に160.16円を付けた後、7月3日に161.94円を付けた後の7月11日に政府・日銀は大規模な市場介入を実施しており、160円到達では介入の可能性も高まると思われる。

【米10年債利回りは9月16日以降の最高を更新、NYダウは10日続落後に4連騰】

12月24日の米長期債利回りはクリスマス休場前の短縮取引だったためにまちまちだったが、長期金利指標の10年債利回りは前日比変わらずの4.59%で終了したものの一時4.63%をつけて12月6日の4.13%及び9月17日の3.60%以降の最高を更新しており、上昇基調はまだ続きそうだ。
30年債利回りは前日比0.02%低下の4.76%となったたが、一時4.82%をつけて12月6日の4.30%及び9月17日の3.90%以降の最高を更新した。
政策金利動向に過敏な2年債利回りは前日比0.01%低下の4.33%で終了した。FOMC後に4.37%へ急伸した後は高値更新へ進めずにいるものの、20日に4.25%まで一時低下してから再上昇している。
米財務省は23日に2年債入札(690億ドル)、24日に5年債入札(700億ドル)を実施、いずれも概ね堅調な需要がみられた。26日には7年債(440億ドル)入札が予定されている。

米国株式市場はFOMCを通過して上昇を再開している。NYダウは12月5日から18日まで50年振りとなる10営業日続落となり18日に前日比1123.03ドル安の大幅下落だったが、19日から反騰入りして24日も前日比390.08ドル高と上昇して4連騰とした。ナスダック総合指数も前日比266.24ポイント高と上昇して20日から3連騰とし、S&P500指数も前日比65.97ポイント高で20日から3連騰とした。
米国の利下げペースが大幅にダウンしたものの、金融緩和傾向はまだ続くこと、トランプ政権発足後の先行き不透明感はあるものの、米大統領選でトランプ氏勝利により急伸した経緯を踏まえれば、調整安を消化しながら米国株高基調はまだ続くとの楽観が優勢の印象だ。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は12月20日午前高値157.92円から反落したが、21日未明安値155.95円を目先の底として上昇再開に入った。20日午前高値を基準として目先の高値形成期は25日午前から27日午前にかけての間と想定されるが、23日夜以降は157円を挟んだ揉み合いにとどまっているため、156.50円割れからは弱気転換注意として21日早朝安値試しとし、底割れからは下落継続とみて26日未明から28日未明にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では23日夜以降を157円中心の揉み合いで推移しているため、遅行スパンは実線と交錯し、先行スパンを上回っているものの、持ち合いにより先行スパンの値幅が狭まり転落への余裕も乏しくなっている。先行スパンからの転落を回避する内は遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落してさらに続落する場合は下げ足が速まるとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は21日未明への下落で30ポイントに迫ってから反騰入りしたが、23日夜、24日未明、25日未明に60ポイントを超えたところで売られ、25日午前序盤は40ポイント台へ低下している。55ポイント超えからは上昇再開とするが、50ポイント以下での推移中は下向きとし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、156.50円を下値支持線、20日午前高値157.92円を上値抵抗線とする。
(2)156.50円を上回るか一時的に割り込んでも回復するうちは一段高余地ありとし、157.50円超えから12月20日午前高値157.92円前後への上昇を想定する。158円手前は売られやすいとみるが、高値更新からは158.50円前後へ上値目途を引き上げ、157円を上回っての推移なら26日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)156.50円割れから続落の場合は21日未明安値155.95円試しとする。156.50円割れからの反騰で157円台を回復する場合は上昇再開とするが、156.50円以下での推移が続く場合は26日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

12/25(水)
休場 米、英、仏、独、スイス、南ア、加、ノルウェー、メキシコ、豪、NZ、シンガポール、香港
12:50 (日) 植田日銀総裁、経団連審議員会で講演
14:00 (日) 10月 景気一致指数CI改定値 (速報 116.5)
14:00 (日) 10月 景気先行指数CI改定値 (速報 108.6)

12/26(木)
休場 ノルウェー、豪、NZ、香港、インドネシア
休場 英、スイス、仏、独、南ア、加
14:00 (日) 11月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (10月 -2.9%、予想 0.1%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.0万件予想、22.3万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.4万人、予想 188.0万人)

12/27(金)
08:30 (日) 11月 失業率 (10月 2.5%、予想 2.5%)
08:30 (日) 12月 東京区部CPI(生鮮食料品除く) 前年同月比 (11月 2.2%、予想 2.5%)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合12月18-19日分・主な意見
08:50 (日) 11月 鉱工業生産・速報値 前月比 (10月 2.8%、予想 -3.5%)
08:50 (日) 11月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (10月 1.4%、予想 -3.1%)
08:50 (日) 11月 小売業販売額 前年同月比 (10月 1.6%、予想 1.7%)
22:30 (米) 11月 卸売在庫 前月比 (10月  0.2%)



注:ポイント要約は編集部

本稿がFX羅針盤における最終投稿となります。これまでご覧いただきありがとうございました。
今後は「ウェーバーのドル円見通し-FXサイクル分析」( https://marketcycle.livedoor.blog/ )にて、これまでの分析手法による相場見通しを掲載する予定ですのでご利用ください。

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る