雇用統計高値をつけたか(週報2017年3月第二週)

先週初の段階でFOMCにおける利上げはほぼ織り込み済み、先週は利上げ既定路線に変化が無いかを再確認するという意味で、

雇用統計高値をつけたか(週報2017年3月第二週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値     高値     安値     終値

ドル円   113.82   115.51  113.56   114.81
ユーロ円  120.88   122.83   120.02  122.53
ユーロドル  1.0621  1.0699   1.0525  1.0674
日経平均  19409.18   19623.72  19198.78  19604.61

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

3月6日(月)

週明けの東京市場では、金曜NY後場のイエレンFRB議長講演で3月FOMCにおける利上げがほぼ固まったとの見方から、短期筋の利食いからドル売りが先行しました。北朝鮮のミサイル発射を材料にするコメントもあったようですが、現状では恒例行事といった感も強く影響はありませんでした。その後、欧州市場ではユーロドルがストップオーダーを引っ掛ける形で1.0640まで上伸する場面も見られましたが、滞空時間は短くすぐに元の水準に。NY市場では米長期金利に利回りを見ながらドルがやや買い戻されたものの方向感がはっきりしないまま一日を終えました。

3月7日(火)

動意薄、狭いレンジ内での取引を続ける一日となりました。既に来週のFOMCでの利上げは織り込み済み、今週相場に影響を与えそうなイベントは木曜ECB理事会後のドラギ総裁会見、金曜の米国雇用統計とまだ時間はあるものの、市場参加者は次のイベントまでは積極的には動かない様子見を決め込んでいる様子でした。

3月8日(水)

東京前場は弱い株価とともに円買いが先行し、昼過ぎにはドル円が113.61レベル、ユーロ円も120.02の安値を付けました。その後株価が底堅い推移となったことやドル円の113円台半ば、ユーロ円の120円に買いが見られたこともあって反発、前日終値の水準に戻してのNY市場入り。雇用統計を占うADP全国雇用者数は予想より大幅に強い298Kとなり、直後からドル円を中心にドル買いの動きとなり長期金利の上昇も手伝ってNYの昼前にはドル円が114.75レベル、ユーロ円も121.12レベルの高値を付けました。引けにかけてはダウが下落に転じたこともあって調整が入っての引け。いっぽう、ユーロドルも終日上値の重たいドル高の流れとなっていたものの、ECB理事会を前に積極的な取引は手控えられていました。

3月9日(木)

東京市場は動意薄で模様眺めの冴えない展開でしたが、欧州市場に入りユーロがECB理事会でテーパリング等の話が出るのではないかとの思惑から上昇、その後ドル円、ユーロ円とストップオーダーを巻き込みながら円売りが入る動きとなりました。注目のECB理事会ではドラギ総裁が「金利引き下げの可能性は低下」等、追加緩和は無いというスタンスを示したことでユーロが一段高、直近のユーロ圏の物価上昇等も重なり雇用統計を前にユーロ買い戻しが進みました。しかし、ユーロが週初の高値を超えられない中、NY市場ではFOMCに向けて改めてドル買いの動きとなり、ドル円は115円の大台間近の水準で引けました。

3月10日(金)

雇用統計を前に早朝から買いが強まり115円を付けるとストップオーダーも巻き込みながら一段高、日経平均も朝から強い動きとなっていたことも重なり、NY市場では115.50レベルの高値を付けて雇用統計待ちとなりました。雇用統計はNFPが予想よりは強かったものの、水曜に発表されたADP全国雇用者数が想定外に強かった影響もあり、インパクトが弱かった様子で、全体としてやや強めではあったものの、これで15日の利上げも確定、ほぼ材料は出尽くしたとの判断から、利食いの売りが出やすい地合いとなりました。その後、商務長官の貿易面での日本の優先度が高いとの発言から、ドル円は115円を割り込み、週末のポジション調整も入って114円台後半での引けとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月13日(月)
**:** NY市場夏時間で午前6時スタート
21:45 ラウテンシュレーガーECB理事講演
22:30 ドラギECB総裁講演
23:00 米国2月労働市場情勢指数

3月14日(火)

09:30 豪州2月NAB企業景況感
11:00 中国2月小売売上高、鉱工業生産
16:00 ドイツ2月CPI確報値
19:00 ドイツ3月ZEW景気期待指数
19:00 ユーロ圏1月鉱工業生産
21:30 米国2月PPI
**:** FOMC(〜15日)

3月15日(水)
**:** 日銀金融政策決定会合(〜16日)
**:** オランダ議会選挙
16:00 トルコ12月失業率
18:00 英国2月失業率
21:30 米国2月CPI
21:30 米国2月小売売上高
21:30 米国2月NY連銀製造業景況指数
24:30 米国週間原油在庫
27:00 FOMC結果公表
27:30 イエレンFRB議長会見

3月16日(木)
06:45 NZ10〜12月期GDP
09:30 豪州2月失業率
**:** 日銀金融政策結果公表
15:30 黒田日銀総裁会見
17:30 スイス中銀政策金利発表
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:00 英中銀MPC
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国2月住宅着工、許可件数
21:30 米国2月フィラデルフィア連銀製造業指数

3月17日(金)
 **:** G20@バーデン(〜18日)
06:30 NZ2月企業景況感
19:00 ユーロ圏1月貿易収支
22:15 米国2月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感指数速報値
23:00 米国2月景気先行指数

今週の週間見通し

先週初の段階でFOMCにおける利上げはほぼ織り込み済み、先週は利上げ既定路線に変化が無いかを再確認するという意味で、水曜のADP全国雇用者数から金曜の雇用統計までを見る週となりました。その結果、ADPがあまりに強い数字となったことで、雇用統計の数字も大きくコンセンサスを超えるのではないかといった思惑も増えましたが、結果は強い数字ではあったもののコンセンサスレンジの範囲内となり、ドル一段高にはつながりませんでした。

週末を前にポジション調整が入りやすく、また過去の雇用統計を見るとわかりますが、雇用統計前後にドルが短期的に高値をつけるという動きがかなりのケースで見受けられます。私もコラムで雇用統計アノマリーで、雇用統計発表前後にドル高に動いている時は注意が必要といったことを書いたりしますが、今回も雇用統計を前に115円台半ばに乗せるという動きがあり、アノマリーの再現には条件が整っていたと考えられました。

そこに出てきたのが商務長官の発言で「貿易面での日本の優先度が高い」というものです。素直に考えるならば、中国に次ぐ対日貿易赤字があり、これまでトランプ大統領もさんざん名指しで言ってきたことです。過去の米国のパターンを考えると、対日赤字の調整のひとつの案として為替調整があるのではという思惑が出てくる可能性があります。

以前も麻生財務相が「120円にもなっていないのに円安と言われる筋合いはない」と、あたかも120円は日米間で円安の上限として意識されているかのような発言をしたことで、市場参加者に為替の上限思惑を与えましたが、今回はその後にいったん111円台半ばをつけ、115円台半ばまで反発してきたところで出てきた発言ということもあり、ひょっとしたら120円を付けさせないため、ドル高地合いの局面でさりげなく円安牽制の発言をしたのではないかと勘繰りたくなるところです。

ここまでのドル円は昨年12月の118.66と今年1月の118.60とでダブルトップとなり、その後はほぼ112円と115円台半ばとで形成されるフラットチャンネルの中での動きとなっています。テクニカルな観点からすれは、チャンネル上限で出てきた発言でどこまで押すのかは疑問ですが、少なくとも115円台半ばのレジスタンスが強いことを認識させるには十分で、今週のイベント次第ではこのチャンネル内での動きを継続しやすいと考えてよさそうです。

今週は15日にFOMCがありますが、ここでの利上げは既に既定路線となっているため、大きな材料にはなりにくいでしょうし、翌16日の日銀会合でも現状で新たな政策が出てくる可能性は低く、金融緩和による通貨安を牽制しているトランプ大統領のことを考えると、追加緩和を示唆するような発言もしにくいのではないかと考えられます。

また、同じ16日には英中銀のMPCがありますが、こちらもポンドドル、ユーロポンドといった通貨ペアの一時的な動きに影響が出たとしてもそれほど大きな動きにはつながりにくいと考えています。今週は材料的には週前半の日米の金融政策、そして引き続き米国高官からの日本に関する発言には注意したいところです。それと、まさかとは思いますが15日にはオランダの議会選挙があります。いちおう、各派閥の得票状態には注意しつつ、ユーロドルへの影響に注視です。

今週のドル円は、FOMCを控えてやや材料出尽くし感があるため。113.60レベルをサポートに、115.50レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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