雇用統計まではもみあい(週報2017年3月第一週)

先週は3月FOMCで投票権のあるFRB高官のハト派も含めたメンバーが3月利上げに肯定的な見方を示し、その結果米金利が上昇しドル円も買われる流れとなりました。

雇用統計まではもみあい(週報2017年3月第一週)

前週の主要レート(週間レンジ)

     始値     高値   安値    終値

ドル円  112.18 114.75 111.69 114.04
ユーロ円  118.37 121.17 118.25 121.12
ユーロドル  1.0552 1.0631 1.0495 1.0623
日経平均  19130.51 19668.01 18995.55 19469.17

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

2月27日(月)

東京朝方こそ弱い株価とともにドル円、クロス円での円買いも見られましたが後が続かず、後場以降は底固めをする動きとなりました。欧州市場に入り新しいニュースでは無いものの、フランスの政治リスクやギリシャ債務問題の懸念が後退していることを蒸し返す形で、ユーロが対ポンド、ドル、円での買い戻しが強まり、NY市場ではストップオーダーも巻き込みながらユーロドルが1.0631レベル、ユーロ円も119.47レベルへと上昇。引けにかけてはトランプ大統領の議会演説を前に期待感からドルが全般に買われての引けとなりました。

2月28日(火)

東京市場では月末仲値の円転によってドル円、クロス円で円買いが入り、その後やや戻す場面も見られましたがNY後場まで円買いの動きが続きました。日経先物も夜間取引で値を下げたことも重なってドル円は111.69レベル、ユーロ円も118.67レベルまで水準を切り下げましたが、引け間際にNY連銀総裁とサンフランシスコ連銀総裁が揃って早期利上げに積極的と取れる発言を行い、トランプ大統領演説を前に大きな動きは無いとタカをくくっていたところ、ストップオーダーを巻き込みながら一気に円安の動きとなりました。

3月1日(水)

最も注目されていたはずのトランプ大統領議会演説にはサプライズも無く、これまで発言してきた内容の焼き直し程度の内容となりました。それ以上に影響が大きかったのは、前日NY引け間際にNY連銀総裁とサンフランシスコ連銀総裁が揃って早期利上げに積極的と取れる発言を行ったこと。両氏の発言を受け既にドルが大幅高となっていましたが、演説も利食いのきっかけとならず、その後も米金利の上昇とともにNY市場でドル円は114円台に乗せる動きとなりました。また米国株は軒並み大幅高となったことでリスクオンの動きも強まりクロス円も上昇、ユーロ円は120円台に乗せ、円安地合いでの引けとなりました。

3月2日(木)

前日に続きドル高の一日、早朝のブレイナードFRB理事の発言がきっかけとなり、ドル円を中心にドルが一段高となりました。米長期金利が2.5%を超えると、ドル円はNY市場で114.59レベル、ユーロドルも1.0495レベルをつけ、NYダウの高値圏からの反落や司法長官の虚偽証言問題には全く反応の無いまま、ドル高値圏での引けとなりました。

3月3日(金)

東京市場では久しぶりの114円台半ばを見たことからドル売りが先行したものの、NY市場後場のイエレンFRB議長講演を前にして積極的な取引は手控えられました。欧州市場に入るとフランス大統領選でマクロン氏優勢との世論調査を受け、ユーロが対ドル、対円で上昇しユーロ円は120円台半ばまで水準を切り上げました。注目のイエレン議長講演では3月利上げを示唆したことからドルが買われ、一時ドル円が114.75レベルの高値を付けたもののその後は材料出尽くしから反落、113.82レベルへと日中安値を更新し114円台に戻しての引けとなりました。ユーロドルもドル売りの動きが強まり1.0624レベルへと上昇、ユーロ円は121円台に乗せ高値圏で引けました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月6日(月)
**:** 中国全人代
09:30 豪州1月小売売上高
19:00 ギリシャ10〜12月期GDP確報値
24:00 米国1月製造業受注指数
29:00 ミネアポリス連銀総裁講演

3月7日(火)
12:30 豪中銀政策金利発表
16:00 ドイツ1月製造業受注
18:30 南ア10〜12月期GDP
19:00 OECD経済見通し
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
22:30 米国1月貿易収支

3月8日(水)
08:50 本邦10〜12月期GDP改定値
08:50 本邦1月貿易収支
**:** 中国2月貿易収支
22:15 米国2月ADP全国雇用者数
22:30 米国10〜12月期単位労働コスト確報値
24:00 米国1月卸売売上高・在庫
24:30 米国週間原油在庫

3月9日(木)
10:30 中国2月CPI、PPI
17:30 ドイツ連銀総裁講演
21:30 米国2月チャレンジャー人員削減予定数
21:45 ECB理事会結果公表
22:30 ドラギECB総裁会見
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国2月輸入物価指数

3月10日(金)
18:30 英国1月貿易収支
22:30 米国2月雇用統計

3月12日(日)
 **:** 米国夏時間に移行

今週の週間見通し

先週は3月FOMCで投票権のあるFRB高官のハト派も含めたメンバーが3月利上げに肯定的な見方を示し、その結果米金利が上昇しドル円も買われる流れとなりました。

米金利上昇にも関わらず強い米株の動きを反映し、日経平均も強い推移となったことから下支えにはなりましたが、すでに株価は米国が水曜時点、日経も木曜時点でいったん高値を付けていますし、3月FOMC(結果発表は15日)での利上げもほぼ織り込んでいることを考えると、ここからのドル円の上昇には注意が必要です。テクニカルにも2月高値114.95レベルをトライしきれずに反落していますので、雇用統計まではもみあいの流れを継続しやすいと言えるでしょう。

今週のもみあいは113円台後半を中心としたものとなりそうですが、中期的なチャートには依然変化はありません。日足チャートを見ていただくとわかりますが、トランプ相場が始まった昨年11月9日安値101.20と12月高値118.66レベルの上げに対する38.2%押しである111.99レベルを下限に、同じく12月高値(118.66)から今年2月安値111.60までの下げに対する半値戻し115.13レベルを上限にしています。

中期的には112〜115円レンジの中で更にその中央値113.50レベルをニュートラルな水準にしながらも週によって取引の水準を多少上下にずらしているという見方でよさそうです。今週のドル円は、FOMCを控えてやや押し目買いが出やすい前提で、112.80レベルをサポートに、114.80レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

さて、今週はユーロドルに目を向けてみましょう。

これまでのユーロドルは、ドル円のミラー相場(ドルとして同様の動き)となる中で、値幅自体はドル円に比べて狭く結果としてユーロ円はドル円に左右される展開を続けてきましたが、金曜の欧州市場以降は最近にしては珍しくユーロドルが主導しての相場展開となりました。

きっかけとなったのは、フランス大統領選における第1回投票の世論調査結果です。世論調査では中道のマクロン全経済相が、極右のルペン党首に1.5ポイントとわずかな差ではありますが優位に立ち、ルペン大統領懸念が一段と後退したことがきっかけです。

フランスの大統領選では第1回投票で過半数を取る候補がいなかった場合、上位2者で決選投票が行われることになっていますが、5年前の前回に限らず全ての原稿大統領選制度において決選投票が行われています。今回の世論調査では、もっともリードしたマクロン氏が27.5%、続くルペン氏が25.0%、中道のフィヨン元首相が19.0%となっていましたが、仮にこのまま上位2者となったとしても敗退した中道派がマクロン氏を支持するであろうこと、またフィヨン元首相の代わりに穏健派のジュペ元首相が出てきた場合でも同様の結果が予想され、結果としてルペン氏に勝ち目は無いであろうというのが金曜段階での見通しとなります。

ただ、最近の世論調査はおよそあてにならないというのが、昨年さんざん見てきた学習効果でもあり、引き続き警戒感をもって見守りたいところです。

チャートも見てみましょう。

              ユーロドル日足

              ユーロドル日足

ドル円のチャートと同じものですが、大きくは1月安値の1.0341レベルから2月高値1.0829レベルのレンジの中で、この上げに対する61.8%押しにあたる1.05台前半が最近のサポート水準となっています。いっぽうで2月高値(1.0829)から2月安値1.0494までの押しに対する半値戻しが1.0661、そしてその手前に先週高値1.0631があり、仮に先週高値を抜けたとしても1.06台半ばが現状の戻しの限界と考えられます。

ユーロドルもFOMCを前に大統領選の世論調査だけでユーロ買い・ドル売りを続けることは困難と思われ、1.0550〜1.0650レベルをコアレンジとしつつも戻り売りが出やすい流れに転じる可能性は高いと言えるでしょう。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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