大統領選はトリプルレッドを織り込みドル高地合い継続か
〇先週のドル円、衆院選の与党大敗受けギャップアップして始まり、153.88レベルの週間高値つける
〇米雇用統計が弱い結果で152円割れとなるも、米金利が4.38%台まで上昇し153円台まで買い戻される
〇米大統領選はトランプ氏優位、米金利上昇、株高、ドル高の地合い継続見込まれる
〇4日時点の見通しは共和党がホワイトハウス、上院、下院の3つを押さえるトリプル・レッド
〇160円の大台では介入実施が濃厚、急速にドル高に傾くより押しが入れば確実に買いが出てくるイメージ
〇今週は151.50レベルをサポート、154.50レベルをレジスタンスとする流れを見る
今週の週間見通し
先週のドル円は週初は衆院選での与党大敗を受けギャップアップして始まり153.88レベルの週間高値をつけました。しかし長続きせずにすぐに反落、日銀会合と米国雇用統計という材料もあったことで、その後は153円台前半で横方向のもみあいが続きました。日銀会合は予想通りの現状維持であったものの同時に公表された展望レポートにおいて物価の上振れリスクへの言及があったことを材料に円買い、植田総裁会見もハト派的な色は見られず、152円割れを見ることとなりました。
そして米国雇用統計に向けては152円割れでは必ずカウンターで買いが出てくることから徐々にドル買い戻しが強まっていましたが、雇用統計は想定外の弱い結果となり改めて152円割れ。しかし、ハリケーンの影響が大きいと考えられること、米金利が4.38%台まで上昇したことで153円台まで買い戻され、引けは152円台後半と若干押したものの、振り返るとドルは強いという印象の一週間となりました。
そして今週最大の注目材料は米国大統領選です。10月後半以降トランプ大統領が支持率を上げるいっぽうでハリス副大統領は失速、世論調査の支持率でもトランプ前大統領が優位な状況となっていましたが、スイングステートにおいてもトランプ前大統領が確実に選挙人を押さえる動きとなり、ほぼトランプ大統領2期目の流れが確定的となってきました。
このことから公約として上げていた、関税強化と法人減税の実施が濃厚となり、米金利上昇、株高、ドル高の地合い継続が見込まれる状況となっています。改めてポイントのみ書いておくと、関税強化の主要なターゲットは中国であり、中国からの輸入物価上昇がインフレ再燃の懸念となり、米国の金融緩和の早期停止が見込まれるというものです。実際に10年債利回りは7月以来の4.38%台へと乗せてきました。
また法人減税が実施されると米企業にとっては収益が向上し、それが株高の思惑へとつながっています。米国株高を見込んだ海外の投資家からは自国通貨売りドル買いの動きが出て、米国株式市場に資金が流入したことが主要株価指数の史上最高値更新の要因のひとつであったと言えます。
大統領選では上院と下院の選挙も同時に行われますが、この議会選挙でも共和党優位の状況となっています。上院は当初から共和党過半数確保が確実視されていましたが、下院でも大統領選同様に共和党が追い上げ、共和党が過半数を取る勢いとなっています。こうなると共和党がホワイトハウス、上院、下院の3つを押さえるトリプル・レッドとなりトランプ前大統領が大統領就任後に思うように政策を進めて行く可能性が高いというのが前日4日時点の見通しです。
投開票が5日ですから、早ければ6日東京の後場には大勢が判明することとなります。既にトリプル・レッドを見込んでいることから利食いも出てくるでしょうが、中期的には10月に見てきた米金利上昇とドル高の動きが強まるという地合いに変化は無いと思われます。ただ、160円の大台では介入警戒感が強いというよりも、介入実施は濃厚と思われますので、急速にドル高に傾くというよりも押しが入れば確実に買いが出てくるというイメージです。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
年初来高値とその後の安値の61.8%戻しが153.40となっていて、153円台半ばはいったん動きが止まりやすい水準であることはこれまでも見てきた通りですが、先週高値153.88レベルはチャート上では誤差の範囲と思えます。大統領選の結果次第で改めて上抜けしていく可能性は高いのですが、9月から続いている上昇チャンネル内での動きもいったん勢いを失っていることを考えると、年初来高値とその後の安値の半値戻しの水準150.76あたりまでの押しはあってもおかしくありません。
いっぽうで上値は先週高値を上抜けると次は155円の大台となりますので、中期的には150〜155円というレンジの中で、今週は151.50レベルをサポートに154.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておこうと思います。いずれにしても大統領選後にどのような動きが出て来てもおかしくないという点にだけは注意が必要です。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。
また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定
(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
11月4日(月)
**:** 東京市場休場、米国冬時間 ☆
17:50 フランス10月製造業PMI
17:55 ドイツ10月製造業PMI
18:00 ユーロ圏10月製造業PMI
19:00 ドイツ連銀総裁講演 ☆
22:00 オーストリア中銀総裁講演
24:00 米国9月製造業新規受注
11月5日(火)
**:** 東証立会時間15:30に延長 ☆
09:01 英国10月小売売上高
10:45 中国10月MarkItサービス業PMI
12:30 豪中銀政策金利発表
16:45 フランス9月鉱工業生産
18:30 英国10月サービス業PMI
22:30 米国9月貿易収支
24:00 米国10月ISM非製造業指数 ☆
27:30 シュナーベルECB理事講演
**:** 米国大統領選投開票 ☆
11月6日(水)
08:50 日銀9月会合議事要旨公表
16:00 ドイツ9月製造業新規受注
17:50 フランス10月サービス業PMI
17:55 ドイツ10月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏10月サービス業PMI
18:30 英国10月建設業PMI
19:00 ユーロ圏9月PPI ☆
20:00 スペイン中銀総裁講演
23:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
23:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
23:45 米国10月サービス業PMI
24:30 週間原油在庫統計
11月7日(木)
16:00 ドイツ9月鉱工業生産、貿易収支
17:10 シュナーベルECB理事講演
19:00 ユーロ圏小売売上高
19:45 エルダーソンECB理事講演
21:00 英中銀MPC ☆
21:00 スペイン中銀総裁講演
21:30 英中銀総裁会見 ☆
22:30 レーンECB理事講演 ☆
22:30 米国7〜9月期単位労働コスト速報値
22:30 米国新規失業保険申請数
24:00 米国9月卸売売上高
28:00 FOMC結果発表 ☆
28:30 パウエルFRB議長会見 ☆
11月8日(金)
16:45 フランス9月貿易収支
24:00 米国11月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
25:00 ボウマンFRB理事講演 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
10月28日(月)
明けのドル円は週末の衆院選で与党が大敗したことを受けギャップを開けて始まり円安+株安が進行、仲値過ぎには153.88レベルまで水準を上げました。しかし、株式市場では寄り付き以降急速に買いが入り、金曜高値をあっさりと超える展開が見られました。株高の要因としては日銀利上げが遠のいたこと、早期石破退陣で高市総裁に変わるという思惑も一役買っていた様子でした。その後は短期筋の利食いも入りNY市場朝方には152.40レベルまで下押ししましたが、米金利が4.3%まで上昇したことから153円台前半へと戻して引けました。
10月29日(火)
東京市場のドル円は米金利(10年債利回り)がNY後場以降下げていたこともあり、153円台前半で利食いが出て売りが先行しましたが152.75レベルで底打ち。欧州市場以降は米金利が上昇に転じたことからドル買いが強まり、NY朝方には米金利が4.33%台に乗せ、ドル円も153.86レベルまで水準を切り上げました。しかし前日高値に並んで抜けられなかったこと、一連の雇用関連の指標第一弾のJOLTSが予想よりもかなり悪かったことをきっかけに米金利低下、ドル円も153円台前半へと押して引けました。
10月30日(水)
東京市場のドル円は小動き、欧州市場に入りユーロ買いの動きとともにドル売りとなったものの、NY市場では強いADPに反応してドル買い戻し。しかし予想は現状維持ではあるものの本日の日銀会合を控えて方向感の無い一日でした。
10月31日(木)
東京前場のドル円は日銀会合を控えて小動き、仲値前に月末のドル買いが若干入った程度でした。日銀会合の結果は予想通り現状維持であったものの展望レポートで物価の上振れリスクに言及があったこと、また日銀総裁会見もハト派的では無かったことから円買い戻しが強まり、欧州市場序盤には151円台へと入り込みました。欧州市場では米金利上昇の動きとともにドル買いとなりNY前場には153円台を回復しましたが、引けにかけては米金利が行って来い、ドル円も151.83レベルの安値をつけた後、若干戻して引けました。
11月1日(金)
ドル円は前日から152円割れでのドル買いが強く金曜早朝には前日安値を若干割り込んだものの後が続かず、米国雇用統計を前に買い戻しが目立つ展開となりました。雇用統計直前には152円台後半まで戻していましたが、予想を大きく下回るNFPの数字を見て151円台後半へと下げたものの、やはり152円割れでの買いが根強く、また米金利が上昇したことから3連休を前に153円台まで買われ、若干押しての引けとなりました。
注:ポイント要約は編集部
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オーダー/ポジション状況
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