政権交代の有無を見極めるまで円安地合い継続
〇先週のドル円、日本の総選挙と米国の大統領選挙を前に政治相場が続く
〇総選挙の与党過半数割れ思惑による円売りとトランプ氏優勢報道によるドル買いで円安進行
〇与野党間の動向が見極められるまで政局は流動的、円が売られやすい流れ続く可能性高い
〇株式市場、石破退陣、高市新総裁を軸とする連立予想した向きによる買いが入り、急速に値を戻す
〇今週の日銀会合、現状維持予想されるが、会合後の総裁会見には要注意
〇年初来高値とその後の安値61.8%戻しが153.40、153円台半ばは動きが止まりやすい水準
〇一方的な円安進行より、利食いの下げ挟みながら着実に押し目買いが出てくる展開が最もありそうな流れ
〇今週は152.40レベルをサポート、154.60レベルをレジスタンスとする週を見る
今週の週間見通し
先週のドル円は週初から日本の総選挙と米国の大統領選挙を前に政治相場が続いた一週間となりました。日本の総選挙では与党の過半数割れの思惑による円売り、米国大統領選ではトランプ前大統領がリードを広げていることから関税強化によるインフレ懸念と法人減税による米株高期待によるドル買いの動きが週を通してドル高・円売りの動きを強めたと言えます。
大統領選については次回の週報でもう一度振り返りますので今週は簡単に書いておきますが、トランプ前大統領の公約のうち関税強化は中国を中心とした国からの輸入物価上昇がインフレ再燃につながり、米国の金融緩和が早期に終了するとの思惑、法人減税は米国企業にとって増益要因となり米国株への資金流入が全般的なドル買いにつながるというものです。これらのドル買い材料に加えて、円については総選挙を前にした円売りが重なったことで、週を通して円安が進行したこととなります。
総選挙は当初自公連立では過半数は確保するだろうとの見方でしたし、石破総裁もそう思って解散総選挙に賭けたということになりますが、投票日が近付くにつれ雲行きが怪しくなり、先週の金曜時点では与党過半数割れの可能性が高いという見方に変わりつつありました。一部のサイトでも与党の過半数割れの確率は99%といった見通しが出ていましたが、裏金問題が予想以上に自民離れを起こしていること、またその影響が連立与党の公明にも波及していました。
開票後の出口調査でも与党大敗の予想が出され、早い段階で与党の過半数割れはほぼ確実というヘッドラインが流れ、最終的な議席数は与党215議席、野党・その他が250議席と与党は過半数233議席を大きく下回る結果となりました。政権を維持するには18人を連立与党に加える必要がありますが、無所属の追加公認では足りませんし、可能性を探るとなると立憲以外で維新か国民と組む可能性はあるかもしれません。
しかし、立憲の野田代表が選挙前に言っていた通りで野党が揃って不信任を出したことに対して、選挙後に連立に加わるのは筋が通らないというのもその通りで、来年の参院選での悪影響を考えると簡単には連立に加わることはできないでしょう。しかし、野党と言ってもそれぞれに掲げる目標が異なっていて果たして連立が組めるのかとなると、立憲148を軸とすると更に85必要となりますので、ほぼ全野党が協力しないと政権交代は起き得ません。
現状可能性が高そうなのは少数与党に、政策ごとに維新(38議席)か国民(28議席)の協力を得て、綱渡りで政権を運営していくという線でしょうか。ただ、その場合は自民内で総裁交代の声が上がってくるであろうことを考えると、今後30日間(選挙後の国会召集タイムリミット、首相が決まる)でどのような動きが与野党間で出てくるのか、そのあたりが見極められるまでは政局が流動的となり、円が売られやすい流れが続く可能性が高いでしょう。
また為替市場では素直に円売りとなっていますが、株式市場では売られた直後に急速に値を戻し金曜の高値を超えてきました。これは石破退陣、高市新総裁を軸にした連立を予想した向きによる買いが入っている動きのようですが、どの国のどのような選挙でも証券会社は常に都合よく楽観的なシナリオを示すことで株安を阻止するという、これもまた典型的な動きで8年前のトランプ大統領誕生の時の米国の証券会社の動き(トランプ大統領誕生は株価暴落見通しが、当選が決まった途端にポジティブな面だけをレポートにまとめて投資家に配った)を思い出しました。
さて、為替市場特に円相場がどうなるかですが、既に金曜高値から1円50銭ほど円安が進行しています。今週の日銀会合は現状維持でしょうが、会合後の総裁会見には注意が必要でしょうし、週末には米国雇用統計もあります。一方的な円安が進むと考えるよりは適宜利食いの下げも挟みながら着実に押し目買いが出てくる展開が最もありそうな流れかと思います。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
年初来高値とその後の安値の61.8%戻しが153.40となっていて、153円台半ばはいったん動きが止まりやすい水準です。上値が重くなり始めると利食いが出て下げる動きとなるでしょうが、先週金曜の高値圏がサポートとなってくると見られ下値は152.40レベルがサポートとなりやすいでしょう。
また上値に関してはテクニカルなターゲット78.6%戻しは157円台と遠く、その手前の大台155円がしばらくはターゲット兼レジスタンスとなりますが、その手前154円台半ばではいったん上値を抑えられやすいと見ています。今週は152.40レベルをサポートに、154.60レベルをレジスタンスとする週を見ておきますが、今後の与野党間の動向次第では大きく振れる可能性がある点には注意しておきましょう。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。
また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定
(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
10月28日(月)
**:** 欧州・英国冬時間 ☆
18:00 ベルギー中銀総裁講演
10月29日(火)
08:30 本邦9月失業率・有効求人倍率
16:00 ドイツ11月消費者信頼感
21:30 米国9月卸売在庫 ☆
22:00 米国9月住宅価格、ケースシラー住宅価格 ☆
23:00 米国9月JOLTS求人件数 ☆
23:00 米国10月消費者信頼感
10月30日(水)
15:30 フランス7〜9月期GDP速報値 ☆
17:55 ドイツ10月失業率
18:00 ドイツ7〜9月期GDP速報値 ☆
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP速報値 ☆
19:00 ユーロ圏10月消費者信頼感
21:15 米国10月ADP全国雇用者数 ☆
21:30 米国7〜9月期GDP速報値 ☆
22:00 ドイツ10月CPI速報値 ☆
23:00 米国9月住宅販売保留件数
23:30 週間原油在庫統計
24:00 シュナーベルECB理事講演 ☆
27:00 ナーゲルドイツ連銀総裁講演 ☆
10月31日(木)
10:30 中国10月製造業PMI
12:00頃 日銀会合結果発表 ☆
15:30 植田日銀総裁会見 ☆
16:00 ドイツ9月小売売上高
16:45 フランス10月CPI速報値 ☆
18:00 イタリア中銀総裁講演
19:00 ユーロ圏10月CPI速報値 ☆
19:00 ユーロ圏9月失業率
20:30 米国10月チャレンジャー人員削減数
21:30 米国9月個人所得・消費支出 ☆
21:30 米国7〜9月期単位労働コスト速報値 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数 ☆
22:45 米国10月シカゴ購買部協会景況指数 ☆
11月1日(金)
10:45 中国10月MarkIt製造業PMI
16:00 英国10月住宅価格
18:30 英国10月製造業PMI
21:30 米国10月雇用統計 ☆
22:45 米国10月製造業PMI
23:00 米国10月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国9月建設支出
11月3日(日)
**:** 米国冬時間に移行 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
10月21日(月)
週明けのドル円は東京前場は株価の下げとともにドル売りが先行したものの149.08レベルまでで、その後は終日米金利上昇とともにドル全面高、クロス円の買いも入りドル円は特に買いが強まる一日となりました。NY市場では前週高値を上抜け150.88レベルの高値をつけ高値引けとなりました。
10月22日(火)
ドル円は緩やかなドル高+円安の流れが続きました。ドル高は米金利上昇が続いていることが要因ですが、既に織り込み済みと思われた大統領選でのトランプ前大統領優勢の動きがきっかけです。また円売りの材料は週末の衆院選で連立与党過半数の雲行きが怪しいという見方によるものです。ドル全面高の中で円売り要因も加わってクロス円も弱いという地合いが続きました。
10月23日(水)
政治主導相場の一日でした。日本の総選挙では連立与党の過半数維持の雲行きが怪しくなってきたとの見方による円安、また米国大統領選ではトランプ前大統領がリードを広げ当選する可能性が高まったことによる米金利上昇(関税強化でインフレ再燃)と米国への資金流入(法人減税は米企業にメリットで株高)を材料に終日ドル買い+円売りの流れが続きました。NY市場では153円台前半まで水準を上げ152円台後半に押して引けました。
10月24日(木)
ドル円は前日に153円台前半とテクニカルなターゲットをほぼ達成したこと、週末の衆院選を前に短期筋が利食いのタイミングを計っていたところに、米金利も低下に転じたことから朝方からドル売りが目立っていました。またG20で加藤財務相が為替の過度な変動に注意していると発言したことも上値を抑え、NY昼過ぎには151円台半ばまで水準を下げ、やや戻して引けました。
10月25日(金)
ドル円は週末を控えてNY市場まで151円台後半で横方向のもみあいを続けましたが、衆院選で連立与党が過半数を割るとの見通しが強まり底堅い流れが続きました。NY市場では強い経済指標をきっかけに米金利が上昇、ドルも連れ高となり152.38レベルまで水準を上げ高値圏で引けました。
注:ポイント要約は編集部
ディスクレーマー
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