ドルの下値リスクが再燃、米指標に注意
〇先週のドル円、自民総裁選で「拙速な利上げ反対」の高市氏勝利思惑で1ヵ月ぶりの146円台つける
〇石破氏勝利の結果受け、短時間で3円超える急落、142.07まで続落
〇週末の米8月PCEデフレーター、予想下回りFRBによる大幅追加利下げ観測強まる
〇今週、9月ISM製造業景況指数や雇用統計など重要な米指標発表相次ぎ、ドル売り進行する危険性も
〇ドル高円安方向、143.30レベルの21日線巡る攻防に注目、しっかり抜ければ144円程度までの戻りも
〇ドル安円高方向、先週末に示現した安値142.07が最初のサポート、下回ると141.74、140.44など意識
〇今週のドル円予想レンジ:140.50-145.00
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドル弱含み。週末にかけ順調なドル高進行をたどったが、最後の最後に見事な「ちゃぶ台返し」が待っていた。
前週末は、訪米した岸田首相がバイデン米大統領と最後の首脳会談を実施。また豪印を加えたクワッド首脳会談も開催されている。一方、延び延びになっていたフランスの新内閣がようやく発足。全体的に右派色の強い顔触れで、思惑を呼んでいたようだ。
そうした状況下、ドル/円は143.80-90円で寄り付いたのち、ドルは強保ち合い。下値も堅く142.89円を底値に、週末にはむしろ上値を試す展開となり、およそ1ヵ月ぶりとなる146円台を示現した。しかし、注目されていた自民党総裁選を受け、そんなドル高の流れが一変。結果を受けドルは短時間で3円を超える急落。また、その後も持ち直せず、前述した安値を下回る142.07円まで続落する局面も観測されていた。週末NYはそのままドル安値圏、142.20円前後で推移し越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「自民党総裁選」と「日米金融政策」について。
前者は、週末に結果が判明する自民党総裁選をめぐり、週初から思惑が交錯。「積極財政派」であり、日銀の金融政策についても「拙速な利上げは反対」などとする考えを示していた高市早苗氏の支持が拡大していることが、週末に掛けてのドル高・円安を支援していた主因であったことは間違いない。直前には産経新聞が「自民・麻生副総裁、総裁選で高市氏支持へ」と報道し、次期総裁になるとの期待も高まりつつあった。しかし、最後の決戦投票で石破氏に敗れ、次の自民党総裁は石破茂氏に決定。これを受け、先でも指摘したように、ドル/円は短時間で一時3円を超える急落。大幅なドル安・円高が進行している。
対して後者は、週間を通して発表された米経済指標は好悪混在ながらも、9月の消費者信頼感指数など主要指標が悪化。そうしたなか、ミネアポリス連銀総裁から「年内さらに0.5ポイントの大幅利下げを支持」、またバイデン米大統領からも金融当局がさらに利下げするとの見通しが改めて示されていた。全体的にドル売り要因が目に付くなか、最後は週末に決定的な一撃が。発表された8月の米PCEデフレーターが予想を下回ったことで、FRBによる大幅追加利下げ観測が強まり、ドル/円が142円割れをうかがうレベルまで下落した原動力になっていたようだ。一方、日本サイドは24日に植田日銀総裁が出席した懇談会で挨拶、「政策判断にあたり時間的な余裕ある」や「2%の物価安定目標の維持が適切」などとハト派なコメントを発していたという。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円相場は、注目されていた自民党総裁選における「高市早苗氏勝利」、「高市氏が次期首相に就任」−−といった思惑を織り込む格好で1ヵ月ぶりの146円台をつけたものの、最後の最後に「ハシゴ」を外された。そののち、週末のNYでは142円台前半まで下落している。いずれにしても、ドルの戻り高歩調に強烈な冷や水を浴びせられたことで、上方向トライといった芽は完全に潰えたか。日本サイドの要因だけでなく、前述した年内の米利下げ観測などもドル売り要因として、引き続き寄与しそうだ。
先週末の「日報」でも簡単に触れたが、自民党総裁選で勝利した石破氏は「緊縮財政派」とみられている。また7月27日の講演会で、為替市場についても当時の円安を『円弱』だと指摘して是正を訴えたほか、金利を上げる必要性があると主張していた。それらの考えが変化しているか否か、今後見極める必要はあるものの、上記からすると為替市場は中長期スパンでも円高有利である気がしないでもない。一方、それとは別に引き続き関心の高い日米金融政策を背景にして、今週は雇用統計など重要な米指標発表が相次ぐことから、内容如何ではさらにドル売りが進行する危険性も取り沙汰されていた。
テクニカルに見た場合、ドル/円相場は本稿執筆時143.30円レベルに位置する移動平均の21日線をめぐり右往左往するも、結果的に週末NYクローズでは下回って大引けた。ドルの下値リスクが再び顕在化するなか、果たして21日線が抵抗として寄与することになるか否かにも注目だ。ちなみに、同線は週末にかけ142円台へと低下すると予想されるだけに、実勢相場のドルは上値を抑えられる格好で、緩やかな右肩下がりをたどる可能性も否定できない。
今週は、9月のISM製造業景況指数や同雇用統計など、多くの重要な米経済指標が発表される予定となっている。先で取り上げたように、先週発表された米指標は悪化したものが多かったが今週は果たして。ちなみに米指標が悪化すれば、相場は素直にドル売りで反応しそうだ。
そんな今週のドル/円予想レンジは、140.50-145.00円。ドル高・円安については、先でも触れた移動平均の21日線をめぐる攻防にまずは注目。しっかり抜ければ144円程度までの戻りは予想できるが、それ以上はなかなか難しいかもしれない。
対してドル安・円高方向は、先週末に示現した安値142.07円が最初のサポート。下回ると時間足などで見たサポート141.74円、140.44円などが意識されそうだ。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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