ドル円週間見通し 石破ショック後の円高継続性と米連続大幅利下げの可能性を見定める(24/09/30)

石破氏が予想外に勝利したことに対するサプライズと悲観により143円割れへ急落、米8月PCEデフレーター鈍化と米長期債利回り低下により28日早朝安値142.06円へ下落した。

ドル円週間見通し 石破ショック後の円高継続性と米連続大幅利下げの可能性を見定める(24/09/30)

石破ショック後の円高継続性と米連続大幅利下げの可能性を見定める

〇先週のドル円、総裁選での高市氏優勢報道に146.47へ急伸後石破氏の予想外の勝利に143円割れ
〇週末海外時間は米8月PCEデフレーター鈍化と米長期金地低下に142.06に下落
〇ドル円、2週間かけた上昇幅の6割強を半日で削る、石破ショックが一時的なものか見極め必要
〇142.50から143.00にかけては戻り売り有利、142円割れから続落する場合141.50、141.00を順次試す
〇143.50超えからは急落に対する揺れ返しとして144円前後への上昇を想定するが、144円以上は反落警戒

【概況】

ドル円は9月27日の自民党総裁選で利上げに否定的で財政拡大姿勢の高市氏優勢との報道により直前の145円序盤から146.47円へ急伸したが、決選投票で石破氏が予想外に勝利したことに対するサプライズと悲観により143円割れへ急落し、その後もショックが抜けずに続落に入り、米8月PCEデフレーター鈍化と米長期債利回り低下により28日早朝安値142.06円へ下落した。
石破氏は財政規律を遵守する緊縮派であり、金融所得課税や法人税引き上げに言及し、日銀については独立性を尊重するとして利上げ云々については関与しない姿勢を示してきたため、高市氏勝利を先取りして大上昇していた日経平均が引け後の先物市場で急落に転じ、ドル円も円安継続期待の梯子が外されたことによる狼狽で急落したといえるが、28日早朝へ続落したために一時的サプライズにとどまらず円高再開のトリガーとなった可能性も懸念される。

8月の米個人消費支出(PCE)デフレーター上昇率はコア指数の前年同月比が2.7%となり7月の2.6%を上回ったものの全体の前年同月比が2.2%となり7月の2.5%から鈍化して2021年2月以来凡そ3年半ぶりの低水準となったため、米国の連続大幅利下げに寄与するとしてドル安反応がみられた。
米ミシガン大による9月消費者信頼感指数確報値は70.1となり速報の69.0から上方修正されて8月の67.9から改善したため、PCE統計後のドル安に若干ブレーキを掛けた。

【7月11日の急落時に近い大陰線】

9月16日安値139.57円を起点として27日午後高値まで上昇幅6.90円の円安ドル高だったが、28日早朝安値まで4.41円の急落幅となり、2週間かけた上昇幅の6割強を半日で削った。日足は当日の高安で4.41円、終値ベースで前日比2.62円の下落幅となる上ヒゲ大陰線であり、急落規模は市場介入時に匹敵するものとなった。
自民党総裁選結果で日本の金融政策姿勢が激変するものではなく、石破ショックは一時的なものに留まる可能性もあるが、10月4日の米9月雇用統計へ向けて米国の重要指標発表が相次ぐ中で景況感と労働市場の悪化が顕著となれば、11月FOMCでの2会合連続0.50%大幅利下げへ向かう可能性が高まり、ドルストレートでのドル安基調の継続でドル円も石破ショックをきっかけとしてドル安円高基調へ進んでも不思議ない。

ユーロドルは9月25日に2023年10月以降の最高値を更新、豪ドル米ドルも27日に2023年10月以降の高値を更新、ポンドドルは26日に2022年9月以降の最高値を更新しており、メジャー通貨におけるドル安基調は続いている。クロス円全般は27日午後まではドル安よりも円安が勝って上昇していたが、27日午後から一斉に急落して円高がユーロ高やポンド高に勝り始めた。

【米長期債利回りはまちまち、米国株は上昇】

9月27日の米長期債利回りは総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%低下の3.75%で終了した。9月17日に3.60%へ低下して2023年10月に付けた5.02%以降の最低としてから26日の3.82%まで戻してきたが、戻り一巡で失速した印象だ。30年債利回りも9月17日に3.90%へ低下して2023年10月に付けた5.18%以降の最低としてから26日の4.17%まで反騰してきたが27日は前日比0.03%低下の4.10%に終わった。
政策金利に敏感な2年債利回りは前日の上昇幅を解消して0.07%低下の3.56%に終わった。25日に3.51%へ低下して2023年10月のピークである5.26%以降の最低を更新した後も下げ渋り程度で最低更新への余裕が乏しい。

9月27日の米国市場はまちまちだったが、騰勢は継続している印象だ。
NYダウは連続大幅利下げ期待により一時42628.32ドルを付けて取引時間中の史上最高値を更新してから上げ幅を削ったものの終値42313.00ドルで終値ベースの史上最高値も更新して3週連続上昇とした。ナスダック総合指数は前日比70.70ポイント安に終わったものの3週連続の上昇、S&P500指数も26日に史上最高値を更新してから伸びずに27日は前日比7.20ポイント安に終わったが3週連続の上昇とした。
ドル円にとっては米国の株高基調が続いて日経平均が石破ショックから立ち直れば円安要因となるが、週末にかけての米経済指標が総じて弱く景気後退懸念が高まって米国株安となる場合にはドル安株安により円高が加速しやすくなると思われる。

【一目均衡表の26日基準線を超えてから再び割り込む】

ドル円の日足は中勢トレンド判断目安となる26日移動平均や一目均衡表の26日基準線を超えたところから大陰線で両線を割り込んでいるが、7月3日高値161.94円からの下落期入りを鮮明とした7月11日の市場介入による急落時(前日比2.85円の下落幅、当日高安レンジ4.33円)に近い印象であり、9月3日高値を超えずに急落したために8月15日以降の戻り高値を切り下げて一段安へ進む右肩下がりの展開を継続する懸念を増している。しかし、4月29日に160.16円へ急伸してから5月3日安値151.85円へ下落した際は下げ幅8.31円から持ち直しに入って7月3日高値へ一段高した経緯もある。
当面は先週末の急落が落ち着いて過剰反応に対するリバウンドに入れるか、円高再開感が優勢となり多少の戻りを入れても下落基調を続けるのかを見ながら、週末の米雇用統計へ向かうことになると思われる。9月16日安値139.57円割れを回避して9月27日高値からの下落幅に対する半値以上を戻せばやや深い押し目形成ないしダブル底形成から円安再開へ向かうケースとするが、ドルストレートでのドル安継続により9月16日安値を割り込む場合には当面の下値目途が135円前後へ切り下がることも懸念される。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)当初、141円を下値支持線、143.50円を上値抵抗線とする。
(2)142.50円から143円前後にかけては戻り売り有利とし、142円割れから続落する場合は141.50円、141.00円前後を順次試す下落を想定する。141円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、米経済指標等により円高継続感が強まる場合は9月16日安値139.57円試しへ下値目途を引き下げる。急落後のリバウンドでは直前安値から1円ないし1.50円近い反発も入りやすいが、戻り幅の半値を削るところからは下落再開と一段安へ進みやすいと考える。

(3)143.50円超えからは週末の急落が過剰反応だったことに対する揺れ返しとして144円前後への上昇を想定するが、144円以上は反落警戒とする。対ドルでユーロ、豪ドル、ポンド等の上昇が継続している場合は乱高下型の戻り一巡で下落再開に入りやすい状況が続くと考える。

注:ポイント要約は編集部

【当面の予定】

9/30(月)
08:50 (日) 8月 鉱工業生産・速報値 前月比 (7月 3.1%、予想 -0.5%)
08:50 (日) 8月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (7月 2.9%、予想 -1.3%)
08:50 (日) 8月 小売業販売額 前年同月比 (7月 2.6%、予想 2.6%)
09:00 (NZ) 9月 ANZ企業信頼感 (8月 50.6)
10:30 (中) 9月 国家統計局製造業PMI (8月 49.1)
10:45 (中) 9月 財新製造業PMI (8月 50.4)
10:45 (中) 9月 財新サービス業PMI (8月 51.6)

14:00 (日) 8月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (7月 -0.2%、予想 -3.5%)
15:00 (英) 4-6月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
15:00 (英) 4-6月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.9%)
15:00 (英) 4-6月期 経常収支 (1-3月 -210億ポンド)
21:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前月比 (8月 -0.1%)
21:00 (独) 9月 CPI(消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (8月 1.9%)
22:00 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、EU議会証言
22:45 (米) 9月 シカゴ購買部協会景況指数 (8月 46.1、予想 46.8)
26:55 (米) パウエル米FRB議長、講演

10/1(火)
休場 中国、香港、メキシコ
06:45 (NZ) 8月 住宅建設許可件数 前月比 (7月 26.2%)
08:30 (日) 8月 失業率 (7月 2.7%、予想 2.6%)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (4-6月 13、予想 13)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業製造業先行き (4‐6月 14、予想 12)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (4‐6月 33、予想 32)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (4‐6月 27、予想 30)
08:50 (日) 7-9月期 日銀短観・大企業全産業設備投資 前年度比 (4‐6月 11.1%、予想 11.9%)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合・主な意見(9月19-20日分)

10:30 (豪) 8月 住宅建設許可件数 前月比 (7月 10.4%、予想 -4.8%)
10:30 (豪) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.0%、予想 0.4%)
16:55 (独) 9月 HOCB製造業PMI・改定値 (速報 40.3)
17:00 (欧) 9月 HOCB製造業PMI・改定値 (速報 44.8)
17:30 (英) 9月 S&PG製造業PMI・改定値 (速報 51.5)
18:00 (欧) 9月 HICP(調和消費者物価指数)・速報値 前年同月比 (8月 2.2%)
18:00 (欧) 9月 コアHICP(食品エネルギー除く)・速報値 前年同月比 (8月 2.8%)
22:45 (米) 9月 S&PG製造業PMI・改定値 (8月 47.0、予想 47.0)
23:00 (米) 9月 ISM製造業景況指数 (8月 47.2、予想 47.7)
23:00 (米) 8月 建設支出 前月比 (7月 -0.3%、予想 0.1%)
23:00 (米) 8月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (7月 767.3万件)
24:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、会合挨拶
24:10 (米) クックFRB理事、アトランタ連銀総裁と対談

10/2(水)
休場 中国、インド
07:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁、コリンズ・ボストン連銀総裁、討論会
08:50 (日) 9月 マネタリーベース 前年同月比 (8月 0.6%)
14:00 (日) 9月 消費者態度指数・一般世帯 (8月 36.7、予想 37.0)
18:00 (欧) 8月 失業率 (7月 6.4%)
21:15 (米) 9月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (8月 9.9万人、予想 12.5万人)
23:05 (米) ムサレム・セントルイス連銀総裁、会合挨拶
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
25:15 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演

10/3(木)
休場 中国、韓国
10:30 (豪) 8月 貿易収支 (7月 60.09億豪ドル)
10:30 (日) 野口日銀審議委員、懇談会出席、14:30〜記者会見
16:55 (独) 9月 HOCBサービス業PMI・改定値 (速報 50.6)
17:00 (欧) 9月 HOCBサービス業PMI・改定値 (速報 50.5)
17:30 (英) 9月 S&PGサービス業PMI・改定値 (速報 52.8)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (7月 0.8%)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月 -2.1%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.4万人)
22:45 (米) 9月 S&PGサービス業PMI・改定値 (速報 55.4)
23:00 (米) 9月 ISMサービス業景況指数 (8月 51.5、予想 51.6)
23:00 (米) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 5.0%、予想 0.3%)
23:40 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁とボスティック・アトランタ連銀総裁が対談

10/4(金)
休場 中国
21:30 (米) 9月 非農業部門就業者数 前月比 (8月 14.2万人、予想 14.0万人)
21:30 (米) 9月 失業率 (8月 4.2%、予想 4.2%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前月比 (8月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前年同月比 (8月 3.8%、予想 3.7%)

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