米PCE統計後のドル高で8月16日早朝からの下落基調を抜け出す
〇ドル円、31日未明に146.24へ高値を伸ばし146円台を維持して週を終える
〇週末7月の米個人消費支出(PCE)デフレーター、全体、コア指数とも予想下回る
〇米ミシガン大消費者信頼感指数、シカゴ購買部協会景況指数は改善
〇9月FOMCでの大幅利下げはないとしてやや過剰なドル売りひとまず落ち着く
〇日米金融政策スタンスの差による中期的な円高ドル安バイアスがかかりやすい状況は継続か
〇145.50を上回るうちは上昇余地あり、146.50超えからは147円前後への上昇を想定
〇145.50割れから続落する場合は145円前後への下落を想定
【概況】
ドル円は日銀利上げや世界連鎖株安による8月5日安値141.69円への急落一巡による反騰で付けた8月16日早朝高値149.38円から下落再開に入り8月26日午前安値143.45円へ下落して戻り幅の過半を解消したが、当面のドル売り一巡により買い戻し優勢の流れへ風向きを変えた。
8月29日夜の米4-6月期GDP改定値が予想を上回る上方修正だったことで145.54円へ上昇し、いったん145円を割り込んだところも買われて30日夜の米経済指標をきっかけとした米長期債利回り上昇により31日未明に146.24円へ高値を伸ばし146円台を維持して週を終えた。
7月の米個人消費支出(PCE)デフレーターは全体の前年同月比が2.5%となり6月と変わらなかったが市場予想の2.6%を下回り、コア指数は3か月連続の2.6%だったが予想の2.7%を下回った。7月個人消費支出は前月比0.5%増で6月の0.3%増から拡大した。
米ミシガン大消費者信頼感指数の8月確報値は67.9となり速報の67.8から上方修正されて7月確報値の66.4から改善した。消費者調査における期待インフレ率は1年先で7月の2.9%から2.8%へ低下し、5年先は7月と同じ3.0%だった。シカゴ購買部協会景況指数の8月は46.1となり7月の45.3から改善して市場予想の45.5を上回った。
これらは9月FOMCからの利下げ再開判断に寄与するものの0.50%の大幅利下げを要求するほどのものではないとして0.50%利下げへの期待度は発表後に若干低下した。
【米長期債利回りは連騰、ダウは最高値更新続く】
8月30日の米長期債利回りは9月の大幅利下げ無しとの見方から総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%上昇の3.91%となり8月26日から小幅ずつ5連騰とし、30年債利回りも0.05%上昇の4.20%となり10年債と同様に5連騰した。政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.02%上昇と小幅ながら29日の0.03%上昇から2連騰としたが、28日に3.849%をつけて8月2日につけた3.845%に迫ってから戻しているものの4月30日の5.05%以降の最低近くに留まっている。
一方で大幅利下げはないとしても9月利下げ開始見通しは変わらず景気も底固いとしてNYダウは228.03ドル高と上昇して2日連続で史上最高値を更新し、ナスダック総合指数も197.19ポイント高と上昇、S&P500指数も56.44ポイント高と上昇した。
米国株高により日経平均も8月5日以降の最高値を更新しており、米10年債利回りの小幅ずつの連騰と株高が8月26日以降のドル高円安に寄与している。
【やや過剰だったドル安反応への修正、9月6日の米雇用統計でどうなるか】
8月16日早朝高値149.38円から8月26日午前安値143.45円までの下げ幅5.93円に対して31日未明高値146.24円までの上昇幅が2.79円高となり半値戻しには届いていないものの凡そ47%を戻し、8月16日以降の主要な高値を結んだ下降トレンドの抵抗線を8月29日夜の上昇で突破し、27日夕から29日夜、31日未明へと徐々に底上げをしてから高値を切り上げて右肩上がりの展開に入っている。
8月26日からユーロドルが下落し、ポンドドルも28日から3日連続陰線で下落しており、9月FOMCでの大幅利下げはないとしてやや過剰なドル売りがひとまず落ち着いて修正的なドル高を招いていると思われるが、9月6日の米雇用統計へ向けた重要指標で景況感や労働市場の弱さが顕著になる場合は米国の大幅利下げへの期待とドル売りが再燃する可能性もあると注意したい。
7月31日の日銀追加利上げをきっかけとした円の独歩高も落ち着いており、米国の9月利下げ開始見通しと日銀が年末から年明けにかけて利上げ追及姿勢としていることのスタンスの差による中期的な円高ドル安バイアスがかかりやすい状況は続いていると思われる。
9月2日は米国市場休場で手掛かりに欠けるが、9月3日のISM製造業景況指数、9月4日のJOLTS(雇用動態調査)求人件数、9月5日のADP民間雇用報告とISMサービス業景況指数、6日の米労働省雇用統計と重要指標発表が続く。
【8月26日安値をダメ押しとできるか試される】
8月26日への下落では8月5日の日足大陰線で付けた長い下ヒゲ部分をほとんど潰さずに持ち直して28日から30日にかけて3日連続陽線=赤三兵で上昇した。
昨年6月30日高値145.06円から7月14日安値137.24円へ下落したところから出直って一段高へ進んだ時には7月21日高値141.94円まで戻してから7月28日安値138.06円へ反落し、7月14日安値割れを回避する形でダメ押しとなる底を付けてからの上昇で一目均衡表の26日基準線を超えて上昇再開としてその後に大上昇へ発展している。
今回も今のところは8月26日安値でダメ押しとして切り返しつつあり、26日基準線(148.45円)超えへ進めば7月3日高値161.94円からの下落一巡による新たな上昇期入りが期待される。しかし、26日基準線超えへ進めないうちは三角持ち合いに過ぎず、8月26日安値143.45円割れからは三角持ち合い下放れにより8月5日安値割れへ進む可能性が高まると注意したい。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、145.50円を下値支持線、146.50円を上値抵抗線とする。
(2)145.50円を上回るうちは上昇余地ありとし、146.50円超えからは147円前後への上昇を想定する。147円到達では売られやすいとみるが、勢い付く場合は8月16日早朝から26日午前への下げ幅に対する3分の2戻しに当たる147.40円超えを試す可能性もあるとみる。ただし、週央にかけて上昇を継続している場合は週末の米雇用統計前にいったん調整安を入れやすいこと、米雇用統計次第では急落もあり得ると注意する。
(3)145.50円割れから続落する場合は145.00円前後への下落を想定する。145円前後は買われやすいとみるが、145円割れから続落する場合は8月26日午前からの戻り一巡による下落期入りを疑い、週央から後半にかけての米経済指標を見て下げ足が速まる場合は144円前後を試す流れへ進みやすくなるとみる。
【当面の予定】
9/2(月)
休場 米国、カナダ、ベトナム
08:50 (日) 4-6月期 全産業設備投資額 前年同期比 (1-3月 6.8%)
10:30 (豪) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -6.5%、予想 2.0%)
10:45 (中) 8月 財新製造業PMI (7月 49.8)
16:55 (独) 8月 HOCB製造業PMI改定値 (速報 42.1、予想 42.1)
17:00 (欧) 8月 HOCB製造業PMI改定値 (速報 45.6、予想 45.6)
17:30 (英) 8月 S&PG製造業PMI改定値 (速報 52.5、予想 52.5)
9/3(火)
東方経済フォーラム(9月6日まで、ロシア・ウラジオストク)
休場 ベトナム
08:50 (日) 8月 マネタリーベース 前年同月比 (7月 1.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 経常収支 (1-3月 -49億豪ドル、予想 -55億豪ドル)
22:45 (米) 8月 S&PG製造業PMI改定値 (7月 48.0、予想 48.1)
23:00 (米) 8月 ISM製造業景況指数 (7月 46.8、予想 47.5)
23:00 (米) 7月 建設支出 前月比 (6月 -0.3%、予想 0.1%)
9/4(水)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 0.1%、予想 0.2%)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 1.1%、予想 0.9%)
10:45 (中) 8月 財新サービス業PMI (7月 52.1)
16:55 (独) 8月 HOCBサービス業PMI改定値 (速報 51.4、予想 51.4)
17:00 (欧) 8月 HOCBサービス業PMI改定値 (速報 53.3、予想 53.3)
17:30 (英) 8月 S&PGサービス業PMI改定値 (速報 53.3、予想 53.3)
18:00 (欧) 7月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (6月 0.5%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 7月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (6月 -3.2%、予想 -2.5%)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -731億ドル、予想 -768億ドル)
22:45 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.25%)
23:00 (米) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 -3.3%、予想 4.7%)
23:00 (米) 7月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (6月 818.4万件)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
9/5(木)
08:30 (日) 7月 現金給与総額 前年同月比 (6月 4.5%、予想 3.5%)
10:30 (豪) 7月 貿易収支 (6月 55.89億豪ドル)
10:30 (日) 高田日銀審議委員、金融経済懇談会挨拶、14時半から記者会見
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 3.9%、予想 -2.0%)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前年同月比 (6月 -11.8%、予想 -2.4%)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前月比 (6月 -0.3%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -0.3%、予想 0.1%)
21:15 (米) 8月 ADP非農業部門民間雇用者増加数 前月比 (7月 12.2万人、予想 14.8万人)
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 2.3%、予想 2.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.1万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 186.8万人)
22:45 (米) 8月 S&PGサービス業PMI改定値 (速報 55.2)
23:00 (米) 8月 ISMサービス業景況指数 (7月 51.4、予想 51.0)
24:00 (米) エネルギー省EIA週間石油在庫統計
9/6(金)
08:30 (日) 7月 全世帯消費支出 前年同月比 (6月 -1.4%、予想 1.2%)
14:00 (日) 7月 景気先行指数CI速報値 (6月 109.0)
14:00 (日) 7月 景気一致指数CI速報値 (6月 113.2)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 1.4%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -4.1%、予想 -3.8%)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 204億ユーロ、予想 220億ユーロ)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前期比 (改定値 0.3%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 0.6%、予想 0.6&)
21:30 (米) 8月 非農業部門就業者増加数 前月比 (7月 11.4万人、予想 16.5万人)
21:30 (米) 8月 失業率 (7月 4.3%、予想 4.2%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前月比 (7月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前年同月比 (7月 3.6%、予想 3.7%)
21:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、基調講演
24:00 (米) ウォラーFRB理事、経済見通しについて講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.12.25
東京市場のドルは157円台で推移、植田日銀総裁の余波は弱く一段の円安は回避か(24/12/25)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、植田日銀総裁の発言を受けて、やや円安ドル高に振れ一時157円50銭台まで上昇した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.12.25
ドル円157円台前半、主要市場のクリスマス休暇入りで市場閑散 (12/25午前)
25日午前の東京市場でドル円は小動きに終始。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.12.25
ドル円見通し 第一次トランプ政権における円高の教訓(24/12/25)
ドル円は、157円割れを買われつつ25日未明に157.37円まで高値を若干切り上げて確りしている。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.09.02
ドル円 今週も米重要指標の発表多い、予断許さず(週報9月第1週)
先週のドル/円相場はドルが小高い。週末には1週間ぶりとなる146円台を回復し、そのまま高値圏で引けている。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.08.31
来週の為替相場見通し『ドル高・円安トレンドの再開に期待。来週は米雇用統計がメインイベント』(8/31朝)
来週の為替相場見通し:『ドル高・円安トレンドの再開に期待。来週は米雇用統計がメインイベント』(8/31朝)
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。