ドル円 下値余地拡大、米指標次第でドル続落も(週報8月第4週)

先週のドル/円相場はドルが弱含み。一時持ち直す局面も見られたが、週末にかけドルは大きく値を下げた。

ドル円 下値余地拡大、米指標次第でドル続落も(週報8月第4週)

下値余地拡大、米指標次第でドル続落も

〇先週のドル円、週間高値148.05示現後は下値を徐々に切り下げる展開
〇144円半ばを割り込み、週末は144.05まで値を下げ越週
〇米雇用統計の年次改定推定値下方修正、J会合でのFRB議長のハト派発言でドル売られる
〇植田総裁の利上げに積極的な姿勢、ドル売り・円買いを促進
〇テクニカルポイントの144円半ばをしっかり割り込み、ドルの下値余地が拡大
〇今週は米2QGDP改定値、7月PCE等に要注目
〇ドル高・円安方向、145円台などにそれほど強い抵抗はない
〇ドル安・円高方向、先週末安値の144.05が最初のサポート
〇ドル円予想レンジ:142.00-146.00

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが弱含み。一時持ち直す局面も見られたが、週末にかけドルは大きく値を下げた。

前週末は、ロシアが実効支配するザポロジエ原発近くにおける攻撃が確認され、IAEAがドローン攻撃に懸念を表明していた。一方、ガザの停戦交渉は近くカイロで高官による再協議が実施される見込みなどと伝えられており、進展如何が注視されていたようだ。
そうした状況下、ドル/円は147.60-65円で寄り付いたのち、早い段階で週間高値の148.05円を示現。しかし、以降は緩やかな下降で下値を徐々に切り下げる展開をたどっていた。テクニカルポイントにも当たる144円半ばで一時下げ止まったように見えたが、週末にドルは再下落。同レベルを割り込み週間安値の144.05円まで値を下げ、週末NYはそのままドル安値圏で取引を終えている。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「米金融政策」と「日本の金融政策」について。
前者は、21日に実施された米労働省による「労働統計基準改定」が物議を醸す結果に。予想の大勢を示していた年間あたり40万人減といった内容を大きく下回る、「1ヵ月当たりで約6.8万人減、1年間で81.8万人の下方修正」となり、市場にとってはネガティブサプライズとなった。「労働市場が当初の想定よりはるかに早い段階から減速していた可能性を示唆している」などといった解説も聞かれるなか、週間を通してもっとも関心を集めていたジャクソンホール会合でパウエルFRB議長が「主要政策金利を引き下げる時がきた」と述べるなど、予想以上にハト派な内容を示す。9月の利下げを事実上明言したことが材料視され、為替市場ではドルがさらに売り込まれる結果に。

対して後者は、23日開催された衆参両院の閉会中審査で、植田日銀総裁と鈴木財務相の聴取が行われたが、そのなかにおける発言が金融市場で思惑を呼んでいた。鈴木財務相から「デフレから完全に脱していない、後戻りする可能性も」などといった少し抑え目のトーンが聞かれた反面、植田総裁の発言は全体的にタカ派。予想されていた以上に、利上げに積極的な印象だった。実際、「金融市場は引き続き不安定な状況にある」と認識しつつも、「これまでの政策調整を適切だったと考えている」と行動を正当化したうえで、「見通し実現なら緩和調整という基本姿勢は変わらない」などと述べ追加利上げにも含みを持たせている。為替市場においてはドル売り・円買いを促進する一因となっていたことは間違いない。

<< 今週の見通し >>

ドル/円相場は、15日の149.40円を目先高値に下値機運が再び高まりつつあるようだ。21日に下げ止まった144円半ばは、161.96円を起点とした下げ幅のフィボナッチ61.8%戻しにほぼ合致するテクニカルポイントだったが、それを週末にしっかりと割り込んできた。次のターゲットは76.4%戻しの143円半ば、そしてそれも下回ると100%戻しも否定はできない。今週といったことではないにせよ、ドルの下値余地は拡大しており、時間を掛けつつ140.80円という年初来安値を更新する可能性も取り沙汰されている。

先週は日銀総裁のタカ派発言に加え、FRB議長のハト派発言を受け、日米金利差が一段と縮小するのではとの見方が広がり、為替市場も大きくドル安が進行している。今週はなかなか重要な米経済指標が発表されるだけに、その内容如何ではさらなるドル売りが進行するといった見方も指摘されていた。個人的には実際の米利下げと激しいドルの下落が、いまひとつ釣り合っていない気もしているけれど、相場に逆らっても良いことはないので、そこは流れに準じたい。なお、それとは別に日米政治情勢、日本の自民党総裁選の行方などにも一応要注意。

テクニカルに見た場合、ドル/円相場は145円あるいは144円半ばと考えていた目先のレンジ下限を下回っており、ドルの下値余地が再び広がったと言えそうだ。次のターゲットである143円半ばを割り込むと、5日安値の141.68円が再び視界内に。
それに対する抵抗は、まず146円半ばか。チャートを見ると15日以降、ドルの上値は連日少しずつ切り下がっており、それからすると先週末高値の146円半ばを超えられるか否か。しっかり抜けると現在急下降中で、週末にかけて146円台へと達しそうな移動平均の21日線の攻防に注目だ。

そうしたなか今週は、4-6月期GDP改定値や7月のPCE価格指数などの米経済指標の発表が予定されている。先で指摘したように、9月の米利下げ実施はほぼ確定となるなか、以降年末に掛けては果たしてどうなのか。動静を占ううえでも米指標に対する注目度は極めて高いものがありそうだ。

そんな今週のドル/円予想レンジは、142.00-146.00円。ドル高・円安については、145円台などにそれほど強い抵抗がない。よって戻り始めたら早い気もするが、需給的に見てドルの上値は重そうだ。
対してドル安・円高方向は、先週末安値の144.05円が最初のサポート。下回れば当然144円割れから143円半ばを目指す。さらには141.68円も視界内に。

下値余地拡大、米指標次第でドル続落も

ドル円日足


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