ドル円週間見通し 日銀の利上げ姿勢と米国の9月利下げ開始見通しで8月5日安値試しへ

23日夜のジャクソンホール会合でパウエルFRB議長が9月会合からの利下げ姿勢を明言したために24日早朝安値144.05円へ続落した。

ドル円週間見通し 日銀の利上げ姿勢と米国の9月利下げ開始見通しで8月5日安値試しへ

日銀の利上げ姿勢と米国の9月利下げ開始見通しで8月5日安値試しへ

〇ドル円、週末にかけ144.05まで続落
〇植田日銀総裁の利上げ姿勢堅持、ジャクソンホールでのパウエル議長の利下げ姿勢明言等が背景
〇パウエル議長、「インフレと労働市場の鈍化を踏まえ金融緩和へ政策を転換する時機が到来した」と発言
〇発言後、米長期債利回りは低下してドル全面安、米国主要株価指数は上昇
〇145円台前半は戻り売り有利、145.50超えからは146円手前への上昇を想定するも、戻り売り注意
〇143.50割れからは142円、8/5安値141.69を試して行く下落を想定、割れると140円前後への下落想定

【概況】

ドル円は7月31日の日銀利上げや8月1日早朝のFOMCで9月利下げ想定が示されたことと8月2日の米雇用統計悪化による世界連鎖株安で8月5日安値141.69円へ大幅下落し、7月30日高値155.21円から13.52円の大幅下落に見舞われたが、世界連鎖株安が落ち着いて日米主要株価指数がV字反騰に入り8月7日に内田日銀副総裁が当面の利上げ無しと明言したことから持ち直しを続けて16日早朝に149.38円まで戻し8月5日からの上昇幅を7.69円とした。
しかしその後は戻り一巡で下落再開に入り、21日夜の米労働省による雇用統計年次改定での就業者数大幅下方修正と22日早朝のFOMC議事要旨の利下げ支持姿勢、23日の午前と午後に植田日銀総裁が衆参閉会中審査での国会答弁で利上げ継続姿勢を示したこと、23日夜のジャクソンホール会合でパウエルFRB議長が9月会合からの利下げ姿勢を明言したために24日早朝安値144.05円へ続落した。

【日銀は追加利上げを模索、米FRBは9月から利下げ開始】

日銀の植田総裁は8月23日の衆参両院閉会中審査において、「当面は市場の安定を見極める」としたものの「経済・物価のこれまでの見通しが概ね実現していけば金融緩和の度合いをだんだん調整(利上げ)していく基本的な姿勢に変わりはない」と述べた。
植田総裁は7月末に追加利上げをした際に0.50%が政策金利の壁ではないとし、断続的な利上げを排除しないとして年内追加利上げ姿勢を示していたが、8月2日から5日にかけての世界連鎖株安により内田副総裁が「当面現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要がある」として当面の追加利上げを否定していた。植田総裁は「内田副総裁発言は適切だった」とした上で7月末の利上げ姿勢を継続するとしたため、市場は秋の利上げはないとしても年末から年明けの追加利上げはあり得ると受け止めた。

FRBのパウエル議長は23日のジャクソンホール会合講演で「インフレと労働市場の鈍化を踏まえ金融緩和へ政策を転換する時機が到来した」、利下げペースは「経済指標や見通しとリスク次第」とし、インフレ上振れリスクが後退する一方で雇用悪化リスクが増大したため「強い労働市場を支えるためできることは何でもする」と述べた。市場は9月17-18日の次回FOMCでは利下げ開始が確実になり、今後の経済指標悪化度合いによっては0.50%の大幅利上げもあり得ると受け止めた。

パウエル議長発言から米長期債利回りは低下してドル全面安となり、ユーロドルは1.120ドル台に到達して昨年10月以降の高値を更新、ポンドドルは1.3230ドルに迫り2022年9月以降の最高値を更新している。
米長期債利回りは総じて低下し、長期金利指標の10年債利回りは前日比0.06%低下の3.80%となり週間では8月16日終値3.88%から0.08%低下した。30年債利回りは前日比0.04%低下の4.09%、8月16日終値4.14%から0.05%低下し、政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.09%低下の3.92%となり週間では8月16日終値4.05%から0.13%低下した。
利下げ開始が濃厚となったことで米国主要株価指数は上昇し、NYダウは前日比462.30ドル高、ナスダック総合指数は前日比258.44ポイント高と上昇した。

【週足の先行スパンから転落するか試される】

【週足の先行スパンから転落するか試される】

8月16日早朝高値149.38円から24日早朝安値144.05円まで5.33円の下落幅となり、8月5日からの上昇幅7.69円に対して凡そ7割を削った。週間足では8月16日終値147.59円から3.26円の下落幅となり、8月5日安値週に付けた長い下ヒゲの凡そ半分を潰している。
7月3日高値161.94円から8月5日安値まで20.25円高、その後の戻りが凡そ38%戻しで150円に届かず陰線で下ヒゲを潰し始めたことで8月5日安値を当面の大底とすることができたのか、もう一段安へ向かうのか試される状況だ。昨年1月16日にかけての大幅下落時は週足の一目均衡表で先行スパンへ潜り込んだものの転落を回避して持ち直し、昨年末にかけての下落時は先行スパン上限手前に留まって切り返している。現状も8月5日安値週では先行スパンからの転落を回避しているものの再び陰線で下げたことにより先行スパンからの転落が試され、転落する場合は昨年1月への下落時よりも下落規模がスケールアップすることも警戒される。

週間足の14週相対力指数は30ポイントに迫ってから戻しかけていたが再び低下しており、ここ数年回避してきた30ポイント割れを試しそうな流れだ。
昨年3月24日安値からの反騰時と7月14日安値からの反騰時では日足の26日基準線まで戻してから戻り幅の大半を削ったものの底割れを回避して26日基準線超えから一段高に入っている。今回も8月5日安値割れを回避して「ダメ押し」として8月16日早朝の15日付け高値149.38円を超えれば本格的な円安期に入るというシナリオも描けるが、8月5日安値割れの場合は凡そ8年から10年周期による大天井を付けての円高期という声も強まりかねないところだ。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、143.50円を下値支持線、145.50円を上値抵抗線とする。
(2)145円台前半は戻り売り有利とし、145.50円超えからは146円手前への上昇を想定するがその後の反落と下落再開に注意する。
(3)143.50円割れからは142.00円、8月5日安値141.69円を順次試して行く下落を想定する。141.69円割れからは140円前後への下落を想定し、140円前後からはいったん大きめの反発も入りやすいとみるが円高が長期化してゆく兆候と考える。

【当面の予定】

8/26(月)
休場 英国
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI・改定値 (速報 113.7)
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI・改定値 (速報 108.6)
17:00 (独) 8月 IFO企業景況感指数 (7月 87.0)
21:30 (米) 7月 耐久財受注 前月比 (6月 -6.6%、予想 3.9%)
21:30 (米) 7月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (6月 0.5%、予想 -0.1%)

8/27(火)
08:50 (日) 7月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (6月 3.0%)
15:00 (独) 4-6月期 GDP・改定値 前期比 (速報 -0.1%)
15:00 (独) 4-6月期 GDP季調済・改定値 前年同期比 (速報 -0.1%)
15:00 (独) 4-6月期 GDP季調前・改定値 前年同期比 (速報 0.3%)
22:00 (米) 6月 FHFA住宅価格指数 前月比 (5月 0.0%)
22:00 (米) 6月 ケース・シラー住宅価格指数 前年同月比 (5月 6.8%)
23:00 (米) 8月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (7月 100.3、予想 100.0)
23:00 (米) 8月 リッチモンド連銀製造業指数 (7月 -17)

8/28(水)
05:30 (米) API(米石油協会)週間石油在庫統計
10:30 (豪) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 3.8%、予想 3.6%)
15:00 (独) 9月 GFK消費者信頼感 (8月 -18.4)
23:30 (米) エネルギー省EIA週間石油在庫統計

8/29(木)
07:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
10:00 (NZ) 8月 ANZ企業信頼感 (7月 27.1)
10:30 (豪) 4-6月期 民間設備投資 前期比 (1-3月 1.0%、予想 1.0%)
14:00 (日) 8月 消費者態度指数・一般世帯 (7月 36.7)
18:00 (欧) 8月 消費者信頼感・確定値 (速報 -13.4)
18:00 (欧) 8月 経済信頼感 (7月 95.8)
21:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)速報値 前月比 (7月 0.3%)
21:00 (独) 8月 CPI(消費者物価指数)速報値 前年同月比 (7月 2.3%)

21:30 (米) 4-6月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 2.8%、予想 2.8%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費改定値 前期比年率 (速報 2.3%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCEデフレーター改定値 前期比年率 (速報 2.9%)
21:30 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 0.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 186.3万人)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前月比 (6月 4.8%)
23:00 (米) 7月 住宅販売保留指数 前年同月比 (6月 -7.8%)
28:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

8/30(金)
休場 トルコ
07:45 (NZ) 7月 住宅建設許可件数 前月比 (6月 -13.8%)
08:30 (日) 7月 失業率 (6月 2.5%、予想 2.5%)
08:30 (日) 8月 東京区部CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (7月 2.2%、予想 2.3%)
08:50 (日) 7月 鉱工業生産速報値 前月比 (6月 -4.2%、予想 4.0%)
08:50 (日) 7月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (6月 -7.9%、予想 0.4%)
08:50 (日) 7月 小売業販売額 前年同月比 (6月 3.7%、予想 3.0%)
10:30 (豪) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.5%、予想 0.4%)
14:00 (日) 7月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (6月 -6.7%、予想 -2.3%)

16:55 (独) 8月 失業率 (7月 6.0%)
18:00 (欧) 8月 HICP(調和消費者物価指数)速報値 前年同月比 (7月 2.6%)
18:00 (欧) 8月 コアHICP(食品エネルギー除く)速報値 前年同月比 (7月 2.9%)
18:00 (欧) 7月 失業率 (6月 6.5%)
21:30 (米) 7月 個人所得 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 PCE(個人消費支出) 前月比 (6月 0.3%、予想 0.5%)
21:30 (米) 7月 PCEデフレーター 前年同月比 (6月 2.5%、予想 2.6%)
21:30 (米) 7月 コアPCEデフレーター(食品・エネルギー除く) 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 コアPCEデフレーター(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (6月 2.6%、予想 2.7%)
22:45 (米) 8月 シカゴ購買部協会景況指数 (7月 45.3)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 67.8、予想 67.8)

注:ポイント要約は編集部

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