『ドル円は冴えない動き継続するも下値余地は限定的か』
〇今週のドル円、週末にかけ週間安値144.05まで急落
〇植田日銀総裁の衆院閉会中審査での「状況に応じ金融緩和の度合いを調整していく」とのタカ派発言、
〇パウエルFRB議長のジャクソンホール会議での「政策調整する時が来た」とのハト派発言等が背景
〇ユーロドル、米金利低下に伴うドル売り圧力に、週末にかけ約1年1カ月ぶり高値1.1200まで急伸
〇ドル円、日足が主要テクニカルポイントの下で推移、強い売りシグナルも成立、地合い弱い
〇ファンダメンタルズは日米金利差縮小観測後退がドル円をサポート
〇引き続き、ドル円相場の一巡後の反発をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):142.50ー147.00、(EURUSD):1.1000−1.1300
今週のレビュー(8/19−8/23)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初147.66で寄り付いた後、早々に週間高値148.06まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売りや、(2)カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタール社によるセブン&アイ・ホールディングスに対する買収提案報道(カナダ売り・円買い観測)、(3)ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「9月利下げの可能性についての議論を行うことは適切」「インフレは進展を見せており労働市場はいくつかの懸念すべき兆候が出ている」とのハト派的な発言、(4)サンフランシスコ連銀デーリー総裁による「インフレは制御されており政策金利の調整を検討する時期に来ているとの確信を深めた」とのハト派的な発言、(5)米労働省による雇用統計の年次ベンチマーク改定値(▲81.8万人)の大幅下方修正(2009年以来で最大の下方修正幅)、(6)米FOMC議事要旨のハト派的な内容(大多数の当局者が次回9月会合での利下げ実施を支持していることが明らかとなった他、一部の参加者については7月会合での利下げ実施についても前向きだったことが判明)、
(7)植田日銀総裁による衆院財務金融委員会閉会中審査での「見通しの確度が高まっていくことが確認できたら金融緩和の度合いを調整していくという基本的な姿勢に変わりはない」とのタカ派的な発言、(8)パウエルFRB議長によるジャクソンホール会議での「政策調整する時が来た」「労働市場の冷え込みは間違いない」とのハト派的な発言、(9)米金利低下に伴うドル売り圧力が重石となり、週末にかけて、週間安値144.13まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間8/23午前4時00分現在)では、144.34前後で推移しております。(編集部注:4:30頃144.05まで安値更新)
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1024で寄り付いた後、早々に週間安値1.1023まで軟化しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)欧州株の堅調推移や、(2)年初来高値突破に伴う仕掛け的なユーロ買い・ドル売り、(3)ユーロ圏6月経常収支(結果505億ユーロ黒字、前回376億ユーロ黒字)の黒字幅拡大、(4)ドイツ第2四半期全国妥結賃金(賞与やインフレ手当てなど一時金を除くベース)の伸び率加速(結果+4.2%、前回+3.0%)、(5)米労働省による雇用統計の年次ベンチマーク改定値の大幅下方修正、(6)米FOMC議事要旨のハト派的な内容、(7)パウエルFRB議長によるジャクソンホール会議での「政策を調整する時が来た」「労働市場の冷え込みは間違いない」とのハト派的な発言、
(8)米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、週末にかけて、昨年7/20以来、約1年1カ月ぶり高値となる1.1200まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間8/24午前4時00分現在)では、1.1187前後で推移しております。尚、今週発表されたドイツ8月製造業PMI速報値(結果42.1、予想43.3)、ドイツ8月非製造業PMI速報値(結果51.4、予想52.3)、ユーロ圏8月消費者信頼感速報値(結果▲13.4、予想▲12.6)はいずれも市場予想を下回る冴えない結果となりましたが、ユーロ売りでの反応は限定的となりました。
来週の見通し(8/26−8/30)
<ドル円相場>
ドル円は8/15に記録した戻り高値149.40をトップに反落に転じると、週末にかけて一時144.13まで急落しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)の下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「短期線と中長期線のデッドクロス」「一目均衡表三役逆転」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)日銀による追加利上げ観測が後退していること(植田日銀総裁は8/23に「見通しの確度が高まっていくことが確認できたら金融緩和の度合いを調整していくという基本的な姿勢に変わりはない」と発言しつつも、8/7の内田日銀副総裁の「金融市場が不安定な状況で利上げをすることはない」との発言に対して、「私と内田副総裁の考え方に違いはない」と同調発言→追加利上げは金融市場の不安定化を招くため、年内追加利上げは事実上難しいとの見方が市場コンセンサス)や、(2)米FRBによる大幅利下げ観測の後退(今週はパウエルFRB議長よりハト派的な発言が見られたものの、米経済のハードランディング懸念が後退する中、米FRBが9月FOMCで50bpの大幅利下げの追い込まれる可能性は低い→CME Fed Wathによると、9月FOMCでの50bp利下げの織り込み度合は8/5時点の85.0%から足元36.5%程度まで低下傾向)、
(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(一巡後に日米金利差に着目したドル買い・円売りが再開するとの期待感大。IMM通貨先物市場の非商業部門の取組高が2021年3月以来、約3年5カ月ぶりに円の買い越しに転換していることも、円キャリートレード再開の好機と捉え易い)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の一巡後の反発をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は日米経済指標(米7月耐久財受注、米8月コンファレンスボード消費者信頼感指数、本邦8月東京CPI、米8月受託着工件数、米7月コアPCE価格指数、米8月ミシガン大消費者信頼感指数など)が複数予定されているものの、重要度の高いイベントは少ないと見られるため、9月1週目の米国重要経済イベント週に向けて、様子見ムードが高まり易い1週間となりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):142.50ー147.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は年初来高値を更新するなど、力強い動きが続いています。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上下限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み上抜けしていることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること、来週中に90日線と200日線のゴールデンクロス成立を経て、「強気のパーフェクトオーダー」点灯が見込まれていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)欧州経済の先行き不透明感(先週発表されたドイツ8月ZEW景況感指数が直近2年間で最大の落ち込みを記録した他、今週発表されたドイツ8月製造業PMI速報値、ドイツ8月非製造業PMI速報値、ユーロ圏8月消費者信頼感速報値も軒並み悪化)や、(2)欧州域内を巡る根強い財政悪化懸念、(3)ECBによる追加利下げ観測(今週発表されたユーロ圏第2四半期妥結賃金が前期の+4.74%から+3.55%まで鈍化したことで、次回9月ECB理事会での25bp利下げの織り込み度合が上昇)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
今週のユーロドル相場上昇の主因は「米ドル売り」に起因しており、「ユーロ買い」では無い点に留意が必要でしょう。米ドル側の要因が剥落するに連れて、本質的なユーロの実力を見定めるフェーズに入ってくると考えられるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の一巡後の反落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は8/26に予定されているドイツ8月IFO景況感指数と、8/30のユーロ圏HICP速報値、欧州当局者発言(オランダ中銀クノット総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、シュナーベルECB専務理事、フィンランド中銀レーン総裁など)に注目が集まります。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1000−1.1300
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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