ドル円 緩やかな円安の流れは止まらず(週報7月第1週)

先週のドル円は水曜には年初来高値を更新、1990年高値を上抜けたことで当面の円安地合いを確定させた日になったと言えます。

ドル円 緩やかな円安の流れは止まらず(週報7月第1週)

緩やかな円安の流れは止まらず

〇先週のドル円、週前半は底固め、6/26に1990年高値を上抜けたことで当面の円安地合いを確定
〇6/28には神田財務官退任のヘッドラインも影響し、161.28レベルまで週間高値を伸ばす
〇じりじりと進む動きの場合、円安は簡単には止まらなさそう
〇短期的な円安のピークとして162円台半ばは考えておくべき水準
〇今週の米国雇用統計と週末の仏決戦投票を前に、金曜の振れに要注意
〇今週は160.00レベルをサポートに、162.50レベルをレジスタンスとする週を見る

今週の週間見通し

先週のドル円は、月曜欧州市場で一時的にストップを巻き込んで下げた動きを除いては週前半は底固め。水曜には年初来高値を更新、1990年高値を上抜けたことで当面の円安地合いを確定させた日になったと言えます。その後金曜には神田財務官退任のヘッドラインも影響し、161.28レベルまで週間高値を伸ばし、160円台後半での週末クローズとなりました。

ドル円は日米金利差と為替の動きが全く逆方向に動く流れを続けている中で、テクニカルに重要なポイントであった1990年高値160.35レベルを上抜けさせたことで、現在は160.35レベルが短期的なサポート水準になってしまいました。動きによっては介入が出る可能性もあったのでしょうが、介入は特定の水準を考えているわけでは無く、ボラティリティを見ているということであれば、介入が出なかったのは当然だったのかもしれません。

円安が進んできたことで7月末の日銀会合では利上げも検討される可能性は高まったと見られますが、まだ1か月あることを考えると、それまでにどこまで円安が進む可能性があるのかを考えた方がよさそうですし、米国FRBの現状維持は確定的な中で、利上げが無いという見方が広がると更なる円安を止めることは難しくなりそうです。7月末には神田財務官から三村財務官(現国際局長、順当な昇進)へと引き継いでも戦略に変更は無いでしょうから、今のようなじりじりと円安が進む動きだと簡単には止まらないと見ていたほうが良いでしょう。

今回はまず360円固定相場時代からの四半期足チャートをご覧ください。

緩やかな円安の流れは止まらず

1990年高値を超え現在は1986年以来38年ぶりとは言っているものの、1986年には目立った節目も無く1985年2月高値の263.84レベルが次の高値となってしまいます。他には1ドル360円と変動相場制移行後の最円高値75.32との38.2%戻し184.068が比較的近い水準です。また変動相場制移行後最初の円高値となった177.30レベルもひとつの目安となるでしょう。ただ、いずれにしても180円前後ということで、中長期的には考えておくべき円安の水準が180円ということになるのではないかと考えています。

短期的にはいつもの日足チャートをご覧ください。

多少の上抜けはあるものの、引き続き介入後安値と6月安値を結んだサポートラインとそれに平行に引いたラインとで構成される平行上昇チャンネル(青)の中でドル高の流れを続けています。今回の161円台も上ヒゲで若干抜けている程度で、まだこのチャンネル内での動きになっていると見てよいでしょう。また3月安値からの上昇N波動(ピンク)を考えると、61.8%エクスパンションが160.31とほぼ1990年高値と一致していましたが、同水準を上抜けたことで、次のターゲットは78.6%エクスパンションの162.61となってきます。

今週か来週か、短期的な円安のピークとして162円台半ばは考えておくべき水準ですが、今週は米国雇用統計もあり、また週末にはフランスで決戦投票を控えていることから金曜の振れには注意したいところです。今週は、大台160.00レベルをサポートに、上記水準に近い162.50レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

緩やかな円安の流れは止まらず 2枚目の画像

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

7月1日(月)
**:** 香港市場休場
08:50 日銀短観 ☆
10:30 豪州5月小売売上高
10:45 中国6月MarkIt製造業PMI
15:00 英国6月住宅価格
16:50 フランス6月製造業PMI
16:55 ドイツ6月製造業PMI
17:00 ユーロ圏6月製造業PMI
17:30 英国6月製造業PMI
21:00 ドイツ6月CPI速報値 ☆
22:45 米国6月製造業PMI
23:00 米国6月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国5月建設支出
**:** ECBフォーラム(〜3日)

7月2日(火)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
16:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
17:30 エルダーソンECB理事講演
18:00 ユーロ圏6月CPI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏5月失業率
19:30 シュナーベルECB理事講演
22:30 パウエルFRB議長 ☆、ラガルドECB総裁講演 ☆
23:00 米国5月JOLTS求人件数 ☆

7月3日(水)
10:30 豪州5月住宅建設許可
10:45 中国6月MarkItサービス業PMI
16:50 フランス6月サービス業PMI
16:55 ドイツ6月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏6月サービス業PMI
17:30 英国6月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏5月PPI ☆
18:00 チポローネECB理事講演
19:30 レーンECB理事講演 ☆
20:00 NY連銀総裁講演 ☆
20:30 米国6月チャレンジャー人員削減数
21:15 米国6月ADP全国雇用者数 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数 ☆
21:30 米国5月貿易収支
22:45 米国6月サービス業PMI
23:00 米国6月ISM非製造業景況指数 ☆
23:00 米国5月製造業新規受注
23:15 ラガルドECB総裁講演
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC議事要旨公表 ☆
**:** 米国取引所短縮取引

7月4日(木)
**:** NY市場休場
10:30 豪州5月貿易収支
15:00 ドイツ5月製造業新規受注
20:30 ECB理事会議事要旨公表 ☆
**:** 英国総選挙

7月5日(金)
15:00 ドイツ5月鉱工業生産
15:45 フランス5月鉱工業生産、貿易収支
18:00 ユーロ圏5月小売売上高
21:30 米国6月雇用統計 ☆
26:15 ラガルドECB総裁講演

7月7日(日)
**:** フランス総選挙決選投票 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時−NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月24日(月)
週明けのドル円は前週末に159円台後半へと円安が進行して引けた動きを受け仲値前に159.93レベルまで高値を切り上げたもののそこまで。神田財務官が米財務省による為替報告書の影響は全く受けず、介入の準備はしていることに言及したこともあり、160円の大台手前で反転することとなりました。欧州市場序盤には既にドル売りが先行していたユーロドルの影響もあり、ストップオーダーも巻き込み158.74レベルへと急反落、その後はすぐに買い戻しが入り急落前の水準でもみあってのクローズとなりました。

6月25日(火)
ドル円は160円の大台に近いことから介入警戒感があるいっぽうで下がったところは買いという考えも根強く159円台後半の売りと159円台前半の買いとで綱引き状態が続きました。NY後場には159.76レベルの高値を見ましたが積極的に買い仕掛ける動きにもなりませんでした。

6月26日(水)
ドル円は160円の大台に乗せ1990年高値160.35を上抜けました。1986年以来と38年ぶりの円安水準となりましたが、160.35はテクニカルには最後の砦だったともいえ、長期的な円安ターゲットは変動相場制以降後の最初の底をつけた1978年安値177円台を視野に入れる展開となってきました。

6月27日(木)
ドル円は東京前場は株安の動きから円買い戻しの動きが先行しましたが160.30レベルでは既にドル買いオーダーも入っていて下げ止まり、NY市場までは底固めの動きとなりました。NY市場では米金利低下の動きはあったもののユーロドルでのユーロ買いの動きがユーロ円にも波及、東京朝方の水準へと買い戻されて引けました。ただ一日の値幅は狭く54銭にとどまりました。

6月28日(金)
ドル円は朝方に神田財務官退任のニュースに反応し一時161円台乗せも見られたものの、後任人事がはっきりしていることや米大統領候補のTV討論会もあり、あとは続かず。その後は高値圏でのもみあいの後に欧州市場では全般的にドル売りとなり、NY市場でも上値が重く160.26レベルまで下押ししたものの、四半期末実需で円売りが見られ、160円台後半へと戻して引けました。

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