ドル円 底堅いものの短期高値圏は近い(週報6月第4週)

先週のドル円は米国財務省による為替報告書において日本が監視リストに加えられたというニュースに反応し、159円台後半へと円安が加速しての週末クローズとなりました。

ドル円 底堅いものの短期高値圏は近い(週報6月第4週)

底堅いものの短期高値圏は近い

〇先週のドル円、米財務省為替報告書の監視リストに日本が加わったこと受け159円台後半へ一段高
〇米財務省、監視リスト入り要因は2023年対米貿易黒字と経常黒字GDP比率が高水準だった為と説明
〇神田財務官、為替介入を制限するとの懸念や観測について「影響は全くないと断言できる」と発言
〇160円大台超えはいつ介入が出てもおかしくなく、1990年高値160.35超えは阻止する可能性高い
〇前回介入後安値と6月安値結ぶサポートラインと平行ラインの、平行上昇チャンネルでドル高の流れ続く
〇実弾介入ではなく、レートチェックが入っても大きめの調整入る可能性も
〇今週は157.80レベルをサポート、160.20レベルをレジスタンスとする週を見る

今週の週間見通し

先週のドル円は、前週に日米の金融政策が現状維持で決まったこと、また日銀による国債購入減額が7月31日の会合以降と、まだ1か月以上あることから改めて絶対的な日米金利差を背景としたドルの押し目買いが出てきました。そこに米国財務省による為替報告書において日本が監視リストに加えられたというニュースに反応し、159円台後半へと円安が加速しての週末クローズとなりました。

為替報告書は半期に一度米国財務省が公表する物ですが、最初の反応はゴールデンウィークに行った円買い介入が影響しているのではという思惑で、そこから今後の介入がしにくくなったという見方でした。実際には米国財務省は「監視リストに日本が加えられた要因は2023年の日本の対米貿易黒字が624億ドルと高水準だったことと、経常黒字のGDP比率が3.5%だったこと」と説明しています。

監視リストに入っている国は、現在、日本以外にも中国、ベトナム、台湾、マレーシア、シンガポール、ドイツが指定されていて、以下の3つの要件が決められています。
(1)年間150億ドル以上の対米黒字
(2)GDP比3%以上の経常黒字
(3)過去12か月のうち8か月以上、かつGDP比2%以上の為替介入

つまり、日本はこの(1)と(2)に該当し、(3)には該当していません。本邦財務省の神田財務官も為替介入を制限するとの懸念や観測について「影響は全くないと断言できる」と発言しています。為替介入の方向も円高方向での介入であれば対米黒字を減らす方向ともいえ、今後も急激な値動きが見られれば介入はあると見てよさそうです。

ただ、米財務省は「財務省の期待としては、自由に取引される大規模な外為市場において、介入は適切な事前協議のもと、極めて例外的な場合にのみ行われなくてはならない」とも述べていることから、必ずしも全く問題視していないとも言えません。神田財務官が以前から言っているように、水準では無くボラティリティであるとすれば、今後もボラティリティが拡大する可能性がある、1990年高値160.35超えはいったん阻止する可能性が高いと考えていても良いように思います。

ただ、ごく緩やかに円安が進行した場合はどうか、という点が市場参加者の関心事ですが、1日1円程度ならば安全なのかとなると、以前も一定期間における値幅という点にも言及していたため、介入後安値の151円台後半からの値幅と2月安値146円台半ばからの値幅は考えておいた方がよさそうです。仮に151円台後半から10円となると161円台後半と1990年高値を抜けてしまうのですが、特定の水準は考えないとするならば、こうした考え方の方が良いかもしれません。

いずれにしても160円の大台超えはいつ介入が出てもおかしくないという認識でいたほうがよいでしょう。短期のテクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。

現在は介入後安値と6月安値を結んだサポートラインとそれに平行に引いたラインとで構成される平行上昇チャンネル(青)の中でドル高の流れを続けています。先週時点はサポートラインへの下押しが先行するかと見ていましたが、週後半の上げで上側のラインにかなり近づいています。上側のラインは介入前の高値とほぼ一致しているため、テクニカルに介入前高値をぬけるかどうかもかなり重要なポイントになってくるでしょう。

実弾介入でなくともレートチェックが入れば大きめの調整が入る可能性もありますので、今週はレジスタンス側はこの上昇チャンネルをベースに、サポート側は5月下旬高値を参考にします。今週は157.80レベルをサポートに、160.20レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

底堅いものの短期高値圏は近い

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。
また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

6月24日(月)
08:50 日銀会合主な意見公表 ☆
16:00 ウォラーFRB理事講演 ☆
17:00 ドイツ6月企業景況感
19:10 ドイツ連銀総裁講演 ☆
21:30 フランス中銀総裁講演 ☆
24:30 シュナーベルECB理事講演 ☆
26:30 カナダ中銀総裁講演
27:00 サンフランシスコ連銀総裁講演 ☆

6月25日(火)
09:30 豪州6月消費者信頼感
18:00 ギリシャ中銀総裁講演
22:00 米国4月住宅価格、ケースシラー住宅価格 ☆
23:00 米国6月消費者信頼感、リッチモンド連銀製造業景況指数 ☆
25:00 クックFRB理事講演 ☆
27:15 ボウマンFRB理事講演 ☆

6月26日(水)
10:30 豪州5月CPI
15:00 ドイツ7月消費者信頼感
15:45 フランス6月消費者信頼感
19:00 パネッタECB理事講演 ☆
19:40 レーンECB理事講演 ☆
23:00 米国5月新築住宅販売
23:30 週間原油在庫統計

6月27日(木)
18:00 ユーロ圏6月消費者信頼感
18:00 ユーロ圏5月PPI ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国1〜3月期GDP確報値
21:30 米国5月耐久財受注、卸売在庫
23:00 米国5月住宅販売保留件数
**:** EUサミット(〜28日)
**:** 米大統領候補討論会 ☆

6月28日(金)
08:30 本邦6月東京区部CPI ☆
08:30 本邦5月失業率・有効求人倍率
15:00 英国1〜3月期GDP改定値
15:45 フランス6月CPI速報値 ☆
15:45 フランス5月PPI ☆
16:55 ドイツ6月失業率
19:00 リッチモンド連銀総裁講演 ☆
19:00 フランス中銀総裁講演
19:00 介入実績公表
21:30 米国5月個人所得・個人消費支出 ☆
22:45 米国6月シカゴ購買部協会景況指数 ☆
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月17日(月)
週明けのドル円は東京市場では157円台前半で小動き、欧州市場に入りユーロが対円で買い戻される動きとともにドル円にも買いが入りました。NY市場では予想よりやや強い経済指標よって米金利上昇、ドル買いとなりましたが158円はトライできず引けにかけてはやや押して引けました。

6月18日(火)
ドル円は東京前場は動かず、後場以降は米金利がじり高になる動きとともにドル買いが先行しました。欧州市場序盤には158.23レベルの高値をつけたものの先週高値はトライしきれず、NY市場では予想よりも弱かった小売売上高に反応して米金利が反落、ドル円も157.63レベルまで下げた後、やや戻して引けました。

6月19日(水)
米国市場が休場となったことで終日取引は少なく、3主要通貨ペアともに前日レンジ内での小動きとなりました。それでもドル円は下がったところでの買いが出てじり高、158円台乗せで引けました。

6月20日(木)
東京市場ではドルが全般に底堅い動きとなりドル円は158円台前半をじり高の展開となっていました。海外市場に入ってからもドル買いの流れは続き、NY市場では弱い経済指標が続いたにもかかわらず米金利が上昇したことから一段高。さらに米財務省による為替報告書において日本が監視リストに加わったことを受け一段高、159円に近づく水準で引けました。

6月21日(金)
ドル円は仲値前後に159円台乗せを見たものの、その後は米金利低下の動きも重なって上値も重くNY市場までは158.90前後でのもみあいが続きました。NY市場に入りPMI速報値が強かったことをきっかけに米金利上昇、ドル買いの動きとなり東京時間の高値を上抜けると引け間際に159.83レベルの高値をつけ、そのまま高値引けとなりました。


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