日銀会合のポイント: 日銀声明内容よりも植田日銀総裁の記者会見に関心集まる(24/6/12)

注目は植田日銀総裁の記者会見となる。

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日銀会合のポイント: 日銀声明内容よりも植田日銀総裁の記者会見に関心集まる(24/6/12)

日銀声明内容よりも植田日銀総裁の記者会見に関心集まる

【今回のポイント】

〇 国債買入額の段階的な減額を発表
〇 追加の利上げスケジュールなどの詳細は明言せず
〇 植田総裁記者会見では円安を注視する姿勢を見せるか

【市場コンセンサスは何?】

6月12日0時時点の日銀会合のコンセンサスは下記の通りである。

・国債買入額の段階的な減額を発表
・追加の利上げに関する具体的な話は無し

既に様々なメディアで国債買入額の減額に関する報道が伝わっているほか、植田日銀総裁、安達日銀審議委員が「国債買入は減額することが適当である」と発言していることから、ほぼ決まりの話だろう。一方、追加の利上げに関する話は今会合ではないと考える。欧州中央銀行(ECB)理事会でもあった「データ次第」という内容に留まるだろう。

【何がサプライズになる?】

今回はサプライズに乏しい日銀会合になりそうだ。正直、日銀会合の結果は、ほぼ想定線となる公算が大きいことから市場の反応は限定的と考える。となれば、注目は植田日銀総裁の記者会見となる。

4月26日の植田日銀総裁の記者会見では、記者からの「為替市場で円安が進んでいることによる物価への影響は?」という問いに「基調的な物価上昇率に、円安が今のところ大きな影響を与えているということではない」と返答した後、記者から「為替市場で円安が進んでいることによる基調的な物価への影響は無視できる範囲か?」と再度質問がきた後、「はい」と回答したことで、記者から「聞き捨てならない」という言葉が出る熱いやり取りが見られた。

もっとも、熱くなっていたのは記者だけで、植田日銀総裁は淡々と回答していただけだった。結果として、記者会見の回答が、4月29日に160円台まで円安が加速するきっかけとなった。サプライズとは言えないが、今会合の最大の注目点は、植田日銀総裁の記者会見となる。

【では、円はどう動く?】

植田日銀総裁の記者会見のポイントは、円安に関する総裁の発言に尽きると考える。円安対応で追加の利上げ実施を匂わすことはあり得ないだろう。大衆迎合とまではいかないが、円安を是正するために日銀が対応策を講じることはないと考える。植田日銀総裁は、あくまで為替水準に関するマターは財務省という線引きを遵守するはずだ。

ただ、政府・日銀が為替介入を実施したと見られているGW明けの7日、植田日銀総裁は岸田首相と会談後、「会談では、物価・賃金情勢が大きなポイントの一つであるとともに、為替も議論した」と述べた。その上で、「(円安は)経済物価に潜在的に大きな影響を与え得るものであり、最近の円安について日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認した」と発言。今後は、「基調的物価上昇率にどういう影響が出てくるかについて注意深く見ていく」と語るなど、4月26日の記者会見よりも円安を注視する姿勢を明確に見せた。

こうした背景を考慮すると、今回の記者会見は、4月時点のややクレバーな円安進行に対する見解ではなく、根本的な筋は曲げないが、円安を注視する発言を行うと想定される。

為替市場は円高が加速する地合いとはなりにくくなっているが、植田日銀総裁が円安も注視するという姿勢を明確にした場合、円安も進みにくくなるだろう。ドルは156円から157円のもみ合いを想定する。

【最近の日銀会合関係者の発言は?】

ここ最近の政府・日銀関係者の発言を拾った。

6月7日、鈴木財務相
「金利がある世界へ移行する中で市場の信認を確保する必要がある」
「適切な経済財政運営に努めていくことが重要」
「外貨準備高には為替介入による減少が反映されている」
「為替介入は抑制的に行われるべきものと考えている」

6月6日、中村・日銀審議委員
「急速かつ一方的な円安は望ましくない」
「今のタイミングで利上げは早い」
「賃上げ率ほどには家計の可処分所得がのびないことを懸念」
「賃金から物価への波及はまだ遠い」
「実質賃金のプラス転換に加え、可処分所得の増加が必要」
「当面は現状の政策維持が妥当」

6月6日、植田日銀総裁
「国債買入は、減額することが適当であると考えている」
「2%物価目標実現するにはインフレ予想が2%付近で安定的に推移することが必要」
「現実のインフレ予想は、まだ2%に達するには少し距離がある」

6月4日、氷見野日銀副総裁
「我々が見ているいくつかの測定結果は、基本的なインフレ率はまだ2%には達していないが、徐々にその水準に向かって加速していることを示している」
「基調的インフレを測るには、物価データだけでなく、賃金や企業行動など様々な要因を見る必要がある」

6月4日、植田日銀総裁
「長期金利、金融市場で形成されることが基本」
「長期金利が急激に上昇する場合には機動的にオペを実施する」
「金融政策の目的、あくまで物価の安定」
「先行き見通しに沿って基調的物価上昇率が高まれば、緩和度合い調整する」

6月3日、加藤日銀理事
「ETFの処分、今すぐに行うことは考えていない」
「ETFの処分含めた今後の取り扱い、ある程度時間かけてしっかり検討」

5月31日、長澤仁志・日本経済団体連合会副会長
「1ドル=150円台半ばは過度な円安水準」
「現在の円安傾向を是正する必要がある」

5月29日、安達・日銀審議委員
「円安対応、長期の予想インフレ率上振れなど影響出てくれば考える」
「長期金利をより注意深くモニタリングしていく」
「(国債買入の減額について)政策意図を持って行ったわけではない」
「円安が長期化すれば当然物価に影響は出る」
「(為替について)現時点で影響あるなしの言及はできない」
「当面は緩和的な金融環境が継続」
「物価目標達成まで緩和的な金融環境維持が重要」
「物価目標実現確度高まっているが、確信持てる状況ではない」
「経済回復に水差す拙速な利上げは絶対に避けなければならない」
「国債買入は段階的に減額していくことが望ましい」
「下振れリスク配慮しすぎると、急激な引き締めを余儀なくされる」

【2023年以降の日銀会合終了時間一覧】

日銀会合はFOMCやECB理事会と違って、会合の終了時間が決まっていない。決まっているのは、日銀総裁の記者会見(15時30分)だけで、日銀会合の結果内容はおおよそ11時30分頃から13時頃に流れる。市場関係者はその間、ランチを取れないので、市場関係者泣かせの中央銀行といえる。

そして、結果発表が遅くなると「議論が紛糾している。何かサプライズがあるのでは?」と市場は勝手に解釈して、為替、株式、債券市場では思惑的な売買が活発となる傾向もあるので注意したい。

以下は、2023年以降の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから7分ほど経過してからだ。

【2023年】
1月18日(水)・・・11時33分終了、前回会合の方針を維持
3月10日(金)・・・11時23分終了、最後の黒田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持
4月28日(金)・・・12時53分終了、最初の植田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューを多角的に実施することを決定
6月16日(金)・・・11時40分終了、前回会合の方針を維持
7月28日(金)・・・12時21分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限を1.0%まで引き上げ)
9月22日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(火)・・・12時20分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限1.0%を1.0%メドに変更)
12月19日(火)・・・11時42分終了、前回会合の方針を維持

【2024年】
1月23日(火)・・・12時02分終了、前回会合の方針を維持
3月19日(火)・・・12時28分終了、マイナス金利の解除等金融政策の枠組みを見直し
4月26日(金)・・・12時15分終了、前回会合の方針を維持

【2024年スケジュール】

【2024年スケジュール】

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【2024年スケジュール】 2枚目の画像

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